農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 51

<<   作成日時 : 2017/02/25 23:39   >>

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「厨房に、行きます」

 姫の言葉に、忍者二人は頷いていた。


「…………………」
 シェフは、厨房で煮込まれる食材を見ながら、陰鬱な気持ちをぬぐえずにいた。

 こんなこと続けるのは、絶対によくない。それは、分かっている。
 だが、今の自分に、何ができるというのだろう。

「シェフ、こちらの掃除、終わりました」
「食材の仕込み、終わりました!」
 見習いのコックたちの言葉に、シェフは頷く。
「よし、お前たち……………」
 もうそろそろ上がれ、と、シェフは二人に声をかけようとする。だが、それより先に、見習のコックたちが驚きの声を上げた。

「ひ、姫様!?」

「─────!」
 驚いて顔を上げるシェフの前に、ナディール姫が厨房に入ってきた。

「シェフに話があります。申し訳ありませんが、人払いをお願いしていいですか?」

 姫の顔色は蒼く、その表情は硬い。
(ああ、来る時が来たか)
 シェフはその瞬間、すべてを悟った。
 終わらせる時が、来たのだと。

「シェフ………」

 見習いのコックたちが、心配そうにシェフを見つめてくる。
「大丈夫だ。お前たちはもう、上がれ」
 シェフは多少苦笑しながら、彼らにそう、指示を出した。
「わかりました………」
 見習いのコックたちは頷いたが、何度もこちらを振り返りながら、厨房を後にしていた。後ろ髪をひかれているさまが、見て取れた。

(そんなに心配しなくてもいいのだが……)
 シェフは、複雑な想いで、その二人の後姿を見送っていた。

 彼等にそんな風に心配してもらえる『資格』など────自分はとっくの昔に、失ってしまっているのだから。


「シェフ………貴方に、確認したいことがあります」

 厨房に、完全に二人きりなったと確認してから、ナディール姫は口を開いた。

「ハヤブサ様、シュバルツ様………どうか、入ってきてください」
 姫に呼びかけられて、忍者二人が厨房に入ってくる。ハヤブサは縛り上げたイワンコフを、シェフの前に投げ出した。
「………………!」
 少し驚いた風に見える、シェフに向かって、ハヤブサがぶっきらぼうに口を開く。

「こいつが、姫の料理に『毒』を入れていた」

「………………」
 シェフは、沈黙したままであった。ハヤブサは言葉を続けた。

「こいつが言うには、シェフ、『お前に頼まれて、毒を盛った』と、言うのだが─────」

「………………!」
 シェフが、唇をぎり、と、嚙み締めたように見えた。

「本当のところ………どうなんだ?」

「………………」
 沈黙するシェフを、ナディール姫は食い入るように見つめる。
 彼は、姫が幼いころから厨房に勤め、父であるガエリアル王にその腕を認められて、料理長に上り詰めた、たたき上げの人だ。父からの信任も厚く、姫もまた、彼の料理を愛していた。
 だから
 だからこそ、だ。

(違う、と、言ってほしい)

 姫はそう祈りながら、シェフを見つめていた。

 違う、濡れ衣だ。
 そう言ってほしかった。
 彼がそう言ってくれるのなら、自分は────

 いくらでも彼の言葉を、信じられる、と、思った。

 だが。

 シェフの首は、縦に動いた。無情にも。

「ええ………。そうです………」

「シェフ…………!」
 姫は小さく悲鳴を上げる。それに対して、シェフは淡々と言葉を続けていた。

「私が………イワンコフに頼んで………姫の料理に、毒を………入れていました………」

「そんな………!」
 姫の周りの景色が、勝手にぐにゃり、と、ゆがむ。天地が分からなくなって、ひっくり返りそうになったのだが、誰かの力強い腕が、それを阻んだ。
「あ……………!」
 振り返ると、シュバルツが自分のすぐ後ろに立って、支えてくれていた。
「………………」
 彼の、ひどく哀しみを帯びた眼差しが、自分を見つめている。それを見たナディール姫は、瞬間我に返った。

(しっかり………! しっかりしなさい! ナディール………!)

 どのような事実を突きつけられても、『受け止める』
 そう、覚悟を決めたのではなかったのか。

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