農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 52

<<   作成日時 : 2017/02/26 22:22   >>

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「あ………りがとう、ございます……。立てます」

 ナディール姫は、シュバルツの腕から、そっと離れた。
(独りで、ちゃんと立たなければ)
 歯を食いしばって、前を向く。
 ここで泣き崩れるわけにはいかない、と、思った。
 ここで倒れてしまったら─────
 自分は二度と、独りで立てない。
 そんな気がしてしまったから。

「では、シェフ………。もう一つ聞く」

 ハヤブサは深くため息を吐きながら、問いかける。
 ここまで来たのだ。
 もう、隠し事をしないでほしい、と、祈っていた。

「毒を入れるよう指示を出したのは……誰かに『そうしろ』と、命じられたから、か……?」

「……………!」
 ピクリ、と、シェフの頬の筋肉が動く。
「そこのところは、どうなんだ………?」

「それは…………!」

 ハヤブサの問いかけに、シェフは明らかに動揺していた。
 それは、間違いなく『黒幕』の存在を、伺わせるものであった。
「シェフ………!」
 ナディール姫は、祈るようにシェフを見つめていた。

「お願いです……! もう隠し事はしないでください………!」

「姫様………」
「シェフ……! どうか………!」
「……………っ!」

 姫は、必死だった。
 今まで彼が、自分たちのために料理で尽くしてくれたことを考えると、とても彼を恨む気にはなれなかった。たとえ、どんな理由があろうとも。
 唇をかみしめ、拳を握り締めているシェフ。
 彼は、明らかに苦しんでいるように、見えた。
 自分を毒殺したい、と、本心では願っていない可能性があるのだ。

 だから、話してほしかった。
 理由を。
 真実を。

 それを知ればこそ、自分がシェフの手助けをすることも、可能になるのではないだろうか。

「…………………………」

 しばらく下を向き、身体を小刻みに振るわせながら、沈黙を貫いていたシェフであったが、やがて、拳をぐっと握りしめ、その顔を上げた。

「…………分かりました」

「シェフ………!」

「真実を、話しましょう………」

「…………!」
 シェフの言葉に、ナディール姫の表情が、わずかに緩む。だが次の瞬間、その表情は凍り付くこととなった。
 何故なら。

「それは─────」
 そう言ったシェフが、いきなり立ち上がる。彼は厨房の奥に走りこむと、片づけてある一本の包丁を手に取り、それを己が喉に勢いよく突き立てようとしたからだ。

「─────!!」

 姫は、襲い来る悲劇を予見する。だが、どうすることもできずに、立ち尽くしか、もう出来なかった。
(ダメ!!)
 叫びたいのに、声さえ出ない。

 だがその時。

「いて───────ッ!!」

 誰かの、どことなく間抜けな叫び声の響きに、瞬間、皆の呪縛が解けた。
 ハッと、シェフの方を確認すると、シェフの前でシュバルツが、手を押さえながらのたうち回っている。
「いてっ!! いてててっ!! 止め方を間違えた!!」
「え……………」
 それを見ながら、茫然と立ち尽くしているシェフの手には、包丁は握られていない。よく見ると、それはシュバルツの手の方に、突き刺さっていた。

「シュバルツッ!!」

 ハヤブサが慌てて、シュバルツの方に駆け寄る。
「シュバルツ……! 大丈夫か!?」
「あはは、あは………大丈夫だよ………いてっ!」
 シュバルツが、また悲鳴を上げる。ハヤブサが、彼の手から包丁を引き抜いたからだ。
「馬鹿野郎……! 無茶をする………!」
「平気だよ………。しかし、その包丁よく切れるな……。さすがに、手入れが行き届いている厨房だ」
「そんなことを言っている場合か! この馬鹿!!」
 忍者二人がギャーギャーと言い合っている横で、シェフが茫然と立ち尽くしていた。

「あ…………………」

 シェフが、小さな声を上げる。それに、シュバルツが反応して、振り向いた。 

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