農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 32

<<   作成日時 : 2017/02/04 00:22   >>

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「そうですか……」
 姫は優しく微笑むと、そっと短剣を枕元に置き、薄い絹の上着を羽織る。『武器』を持って、義弟に近づくわけにはいかないから。
「わかりました。参りましょう」
「いつもいつも……申し訳ありません……」
「いいのよ」
 そのまま静かに、部屋の出入り口に歩んでいくナディール姫。ただ、部屋から出るとき、その長い廊下の暗さゆえに、少しの恐怖を感じた。

「ハヤブサ様………」

 小さな声で、頼るべき護衛の名を呼ぶ。すると。

「どうした?」

 姿は見えないが、声だけが返ってきた。
「い、いえあの………ノゾムの部屋に、参ります……」
「そうか」
 たったそれだけの短い返事。だがそれは、ナディール姫の心に、確かな安心感を与えていた。
(大丈夫……。傍にいてくださっている………)

 信じられる。
 不思議だった。
 今日、会ったばかりの人であるのに。

 ぎゅ、と、胸の前で手を握り締めて、彼女はまた、歩き出していた。


「お義姉様!!」

 ナディール姫がノゾムの部屋に着くと、泣きぬれた義弟の顔が、そこにあった。
「ノゾム……」
「お義姉様……!!」
 すがるように手を伸ばしてくる義弟の身体を、優しく抱きしめる。
 そのまま、わんわんと大声て泣き続ける彼の背中を、なだめるように撫で続けた。
「お義姉様……! お義姉様……ッ!」
「ノゾム………」
「怖い……! 怖いよ………っ! 独りで眠りたくない………!」
「大丈夫よ……。貴方もう8歳でしょう?」
 優しく言い含めながら、義弟の身体をベッドに寝かしつけ、自分もその横に入って添い寝をした。
「ほら………貴方が寝るまで、一緒にいてあげるから………」
「………うん……」
 甘えるように、自分の懐に潜ってくる義弟。そっと、その髪をなでてやると、ぎゅっと、服をつかんできた。

「お義姉様………」

「なぁに?」

「お義姉様は………ずっとそばに、いてくれるよね……? いなくなったり、しないよね……?」

「……………!」

「お義姉様………!」

「もちろんよ、ノゾム………!」
 心配そうに見つめてくる義弟を、姫は優しく見つめ返した。
「私はどこにもいかないから………大丈夫………」
「うん…………」
 懐で、しばらくもぞもぞとしていた義弟であるが、やがて、静かになり、穏やかな寝息を立て始めた。
(暖かい………)
 寝心地のいいベッドと、ふわふわの羽毛布団。そして、義弟のぬくもりに、ナディール姫も、つい、睡眠に引きずられそうになってしまう。ここのところ、寝不足な状態が続いていたから、余計に────まどろみへの欲求は、抗いがたいものがあった。
(でもだめだ)
 ナディール姫は、必死に己を叱咤する。
 朝まで自分たちが一緒に寝ていたと、義母にばれたら、自分だけでなく、ノゾムにまでその怒りが向いてしまう。それに、自分は命を狙われている身。自分を共にいない方が、ノゾムの安全は、守られるだろう。
「……………」
 ナディール姫はノゾムが完全に寝たのを確認してから、ベッドから抜け出していた。

「姫様………」

 部屋から出ようとすると、ノゾム付きの召使が声をかけてきた。
「ノゾムはもう寝たから………今宵は、大丈夫だと思う。後は、よろしくね」
「はい……。畏まりました……。でも、あの……姫様!」
「なぁに?」

「……また、以前のように……ノゾム様と一緒に寝ていただくわけには、いかないでしょうか………?」

「………………!」
「ノゾム様は、まだ8歳なんです……! ずっと、姫様とご一緒にお休みになっていたのに……! いきなり『一人で寝ろ』と、言われても────」

「でも、いつまでも子供でいられないのも、確かだわ」

 召使の言葉を、ナディール姫の静かな言葉が遮った。
「お義母様の言うことも、もっともなのよ。ノゾムもそろそろ、王族の一員としての自覚を、身に着けていかなくてはいけないと思う………」
「そうかもしれませんが………」
 まだ、納得していない様子の召使に、ナディール姫は、優しく微笑みかける。

 これは、試練なのだ。
 私にっても
 ノゾムにとっても
 そして、ノゾムを思いやる、この召使にとっても───

「ノゾムをよろしくね」

 ナディール姫はそう言い置くと、静かに部屋から出ていった。

「ハヤブサ様……」

 暗い廊下に出ると、ナディール姫は、すぐにその名を呼ぶ。
「どうした?」
 声は、すぐに帰ってきた。

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