農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 35

<<   作成日時 : 2017/02/07 00:42   >>

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 ふとよみがえる、懐かしい、記憶。

 幼いノゾムと、ピクニックに来ていた、あの時。

 皆で笑い合っていた、あの───

「……………!」

 ぼろ、と、大粒の涙がこぼれる。
 いけない、と、彼女がそれをこらえようとしても、まるで堰が決壊してしまったかのように、次から次へとあふれ出してきてしまっていた。
「ご………ごめんなさい! これは………っ!」
 あわてて涙をぬぐうナディール姫。ハヤブサもまた、少しあたふたと視線をそらしていた。
「べ、別に泣くことは、悪いことではない………」
「ハヤブサ様………」

「泣いてもいい。だが、それはちゃんと食べろよ」

 そう言って、龍の忍者は姫の前からフッと、姿を消す。
「あ…………!」
 驚いたナディール姫が、その姿を求めるように、2、3歩足を進ませると、すぐに、どこからともなく声が響いてきた。

「姿は消すが、常に俺は、お前の近くにいる」

「……………!」

「何かあったら呼べ」
 そういい置いて、その声の主の気配は、闇の中へと溶け込んでいった。
(ハヤブサ様………)
 再びナディール姫は、手にした非常食にかじりつく。
(おいしい………)
 おいしいから、食が進んだ。
 そして、涙が止まらなくなった。
 泣き止まなければ、と、彼女は思うが、それはどうにも無理な話であった。
 一度堰を切ってしまった感情は、あとからあとから、彼女に涙をあふれさせていた。

 泣くことは悪いことではない、と、あの人は言った。

 だからきっと、今だけは泣いていい。
 泣いていい。
 この涙を止める術を、自分は知らないのだから。

 ぐすぐす、と、大粒の涙を流し、嗚咽をしゃくりあげながら、彼女は寝るための身支度を整えていた。

 そのまま、ベッドへと入る。

 寝心地の良い、ベッドマットレス。
 ふかふかの羽毛布団。
 程よい高さの枕────

(いったい、何時ぶりだろう……?)

 彼女にとっては、本当に久しぶりに寝る、自分にとってのベッド。
 また、涙があふれてきた。
 優しい布団の感触が、彼女に温かい、優しい、そして、懐かしい記憶を思い出させる。

 また、あの頃の様になれるだろうか。

 やわらかい日差しの中、皆で穏やかに笑い合って────

 お父様

 お母様

 そして─────

 ──────姫様…………。

 まどろみの中、優しくも懐かしい声が、聞こえたような気がしていた。


(………眠ったか……)
 ナディール姫の嗚咽が、穏やかな寝息に変わったのを確認してから、ハヤブサは、やれやれ、と、ため息を吐いていた。

 過酷な環境の中、独り、いろいろなことを抱え込んで、頑張っていた姫。
 ある意味、何もかもがはちきれそうになっていた彼女を支えれば、多少は泣くかもしれない、とは、思っていたのだが。
 まさかあそこまで大粒の涙を流して、泣いてしまうとは。
(参ったな………)
 女性の涙を見るのは苦手だ。その涙を慰める術を、自分は持ってはいないから。できれば、これ以上彼女を泣かせるようなことは、したくはない、と、ハヤブサは思った。

 しかし、彼女を取り巻く事態は、思った以上に深刻だ。看過できない問題が、いくつもある。

 とりわけ、すぐにでも対処しなければならないのは、食事の問題だろう。食事に毒を入れられ続けているなど、悪質すぎる。それを実行している犯人を見つけて、早急にその根元を絶たねばならないだろうが─────
 実際問題、自分が四六時中、厨房に張り付くのはほぼ不可能に近い。自分は、姫の護衛に就かなければならないからだ。城内でも命を狙われている彼女。その傍を離れるのは、危険すぎた。

 独りでは無理だ。誰かに協力を仰がなくては。

(だが…………誰に頼る……?)
 場内に、彼女に対する明確な『悪意』が存在していることを、ひしひしと感じる。頼る相手を一つ間違えてしまったら、自分も彼女も、共倒れになってしまう可能性が否定できなかった。

 誰に頼ればいい?
 誰を信じればいい、というのだろう。

 
 

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