農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 65

<<   作成日時 : 2017/03/12 00:07   >>

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 それなのに、自分は何をやっていたのだろう。
 家族に迷惑をかけ
 姫様に、迷惑をかけ
 挙句─────

 シェフは、思う。
 もう自分には、『城のシェフ』として、料理を作る資格など、ありはしないのではないだろうかと────

(だが、明日の朝食は作らねばならないだろうな………)

 そう感じて、シェフは深いため息を吐く。
 今自分が身を引いたら、実際問題として、明日の王族の朝食に、大きな影響が出てしまう。ただでさえ、周りに迷惑をかけすぎている自分。これ以上、迷惑をかけるわけにはいかない、と、思った。
 進退を決めるにしても、朝食を作った後にしなければ、と、シェフが考えていた時、イガール隊長が、兵士たちに付き添われながら、厨房に入ってきた。
「隊長!」
「隊長!? 大丈夫ですか!?」
 食事をしていた兵士たちが、皆一斉に顔を上げ、彼の方を見る。イガールは、そんな兵士たちに、ふらふらと力なさげに手を上げて応えると、よろよろと、シェフの方に歩を進めていた。

「シェフ………すまないが…………」

「ど、どうしました?」

 イガールのあまりの顔色の悪さに、シェフは思わず息をのむ。案ずるように彼を見つめるシェフの前に、イガールがふらふらと、空になった器を差し出してきた。

「………さっきのスープの………お代わりを、もらえない、だろうか…………?」

「お代わりですか?」

 驚いたように問い返すシェフに、イガールは「ああ」と頷くと、その場でしくしくと泣き出した。

「実はさっきのスープを飲んだことで………昨日から、何も食べていないことに気が付いてしまって………!」

(ああ………)
(隊長………! それで………)

 イガールの言葉に、その場にいる皆が、体調の悪そうな彼の状態に納得する。
 それもそうだ。
 あれだけ激務をこなしているイガールが、何も食べていないのなら─────なるほど、倒れそうにもなるわけだ。

「分かりました。どうぞ」

 シェフは軽く苦笑しながらも、イガールにスープをよそう。
「ありがとう」
 イガールは、丁寧に頭を下げると、手近にあった椅子に座り、静かにスープを飲み始めた。

「ああ………人心地が付く………」

「………………」
 スープを飲みながら、心底ほっとしたような表情を浮かべるイガールを、シェフは黙って見つめていたが、やがて、また、調理場に向かっていた。
「………もう少し、何か食べられるのなら、食べたほうがいいかもしれませんね……。何か作りましょう。ありあわせの物ですから、簡単なものしか作れませんが………」
「いや、しかしそれは─────」
 遠慮しようとしたイガールを、シェフは手で制した。
「どうか遠慮なさらずに………。余っている食材です。それが、誰かの力になるのなら────食材たちも、本望でしょう」

「そうですよ! 隊長! 食べないと!」
「こんな大変な時に……倒れている場合ではないでしょう!?」

 シェフの言葉を受けて、兵士たちも、彼に食事を強く勧める。

「そうか………。そうだな………」

 兵士たちの言葉に、イガール隊長も納得したようにうなずくと、改めて椅子に腰を掛けなおしていた。

「………………」

 しばらく、シェフの調理する音が、厨房に響く。やがて、おいしそうな匂いが、厨房に満ち始めていた。その匂いに、食欲をそそられた兵士たちの腹が、ぐう、と、元気良く音を立てる。それを聞いたイガールが、軽く苦笑しながらも、シェフに声をかけていた。
「シェフ、申し訳ないが、ここにいる皆の分も、少しでいいから作ってやってくれないか? 皆、腹が減っているようだ」
「もちろんです。最初からそのつもりで、少し多めに作っています。皆さんの分もありますよ」

「ええっ!? 本当ですか!?」
「やった………!」

 喜ぶ兵士たちの顔を、見るともなしに見ていたイガールであるが、あることに気づいて、その顔色が変わった。

「怪我をしている者がいるな……。どうした? まさか………!」

「いや、これはその」
「ちょっと………」
「姫様を狙う刺客に、襲われまして………」

「ええっ!?」

 大声を出して、はじかれたように立ち上がったイガールであるが、またへにゃへにゃと、座り込んでしまっていた。

「た、隊長!? 大丈夫ですか!?」
「あ、あの……! そんなに心配しないでください! 我々は、大した怪我はしていませんので!」

 慌ててフォローしに来る兵士たちを、イガールはちらりと見やると、頭を抱えながら、深いため息を吐いていた。

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