農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 戦う君に、花束を 67

<<   作成日時 : 2017/03/13 23:36   >>

面白い ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

「いえ、平気です。大丈夫………」
 そう言いながら、彼女は周りを見渡す。
 もう何度も、シェフの奥さんと娘の名前を呼んだ。しかし、何の反応もない。
(この辺りには、いないのかもしれない………)
 そう考えた姫は、断を下した。水没する地下通路は、確か、ここだけではなかったはずだ。
「ハヤブサ様」
「ん?」
 答える龍の忍者に、姫は言葉をつづける。
「これだけ呼び掛けても反応がない、と、言うことは、この辺りにはいらっしゃらないかもしれません………」
「確かにな」
「ほかにも、水没する水路があります。そちらを回ってみましょう!」
「承知した」
 ハヤブサは、姫の提案に頷くと、彼女の手を引いた。
「では、行くぞ! 案内をしてくれ」
「はい!」
 ハヤブサは、来た道をUターンする。ロープがもつれて絡まるか、と、一瞬思ったが、すぐに、その心配は杞憂であることに気が付いた。ロープは、ハヤブサの動きを制限することなく、絡まることもなく、ハヤブサに忠実についてきてくれている。
(シュバルツ………!)
 彼の存在を、彼のサポートをロープ越しに感じて、ハヤブサは嬉しくなってしまっていた。
(このロープ………彼とつながっているんだよな………)
 いかん、いかんと思っていても、ついつい、幸せに浸ってしまう。その頬が緩むことを、抑えることができなかった。

 ああ………
 つながっているこのロープが
 俺とお前の『赤い糸』となって
 永遠に二人を、離さなければいいのに────

「ハヤブサ様!」

 あることに気づいたナディール姫が、大声で叫ぶ。

「危な─────!」

 ゴン!!

 派手な音を立てて、ハヤブサが前方の岩肌にぶつかっていた。

「だ、大丈夫、ですか………?」

 痛みにその場にうずくまってしまうハヤブサに、ナディール姫が恐る恐る声をかける。
「へ、平気だ……。大丈夫………」
 ハヤブサは必死にそう返すが、痛みで涙がにじむのを、抑えることができない。
(阿呆か、俺は……! 今は仕事中だ! こんなめでたい感慨に、ふけっている場合ではないというのに…………!)
 懸命に、痛みと格闘するハヤブサ。ナディール姫は、しばらくそんな彼をじっと見つめていたが、やがて、「クスッ」と、小さく笑っていた。
(笑った?)
 思わず顔を上げるハヤブサ。そんな彼と目が合ったナディール姫は、はっと、息をのんで口元に手を当てていた。

「あ…………! ごめんなさい……。こんな時に、不謹慎、ですよね………」

 慌てて謝るナディール姫に、ハヤブサも「いや………」と、返す。『不謹慎だ』というのなら、それは、お互い様だと思った。

 そう、不謹慎だ。
 人質の命が、かかっているのに。

 だが、『笑える』と、言うことは、彼女が精神的に安定しているということを表している。それは、悪いことではない、と、ハヤブサは思った。
「さあ、ナディール。次は、どっちへ進めばいい?」
「はい。もう一つ右の階段を下りてみましょう。あの先にも、少し拓けた空間があったはずです」
「よし」
 姫の案内に、ハヤブサは素直に従っていた。

「誰かいないか!?」

 行く道々で、ハヤブサは大声を出す。

「ロアンヌさん!! ミレイさん!! いたら返事をして!!」

 ナディール姫も懸命に呼びかけるが、相変わらずこちらの声に対する反応はない。ただ、残響音が、空しく闇に吸い込まれていくだけだった。
「ここにもいないのかしら………!」
 人質がなかなか見つからない事実に、ナディール姫は少し焦り始める。
「焦るな、ナディール」
 彼女の焦燥を感じ取った龍の忍者が、そう声をかけてきた。
「人質は、必ずこの近くにいる。探していけば、必ず見つかる」
「ハヤブサ様………!」
「今、一番やってはいけないことは、探すのをあきらめることだ。違うか?」
「あ……………!」
 その言葉に、ナディール姫は、はっと息をのむ。

 そうだ。
 ここで自分たちが手を引いてしまったら
 シェフの奥さんと娘さんは、永遠に助けられなくなってしまう───!

「大丈夫だ。満潮まであと2時間以上はある。落ち着いて────確実に一つ一つの場所を、探していくんだ」

 ハヤブサの言葉に、ナディール姫は「はい」と、返事をする。ハヤブサも「よし」と、頷いた。

「さあ、見つけるまで走るぞ! 必ず人質たちは近くに居る。声をかけ続けるんだ」
 そうして二人は、再び走り出す。必死に、声を張り上げながら。

「ロアンヌさん!! ミレイさん!! いたら返事をして!!」

 ナディール姫の声が、地下通路に響き渡っていた。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
面白い
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

戦う君に、花束を 67 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる