農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 68

<<   作成日時 : 2017/03/15 13:44   >>

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「……………」
 
 牢の中でロアンヌは、寝苦しさを感じていた。
(なぜ、こんなに眠れないのかしら………)
 ロアンヌはそう感じて、寝台から身体を起こす。窓から差し込む月の光が、とてもきれいだと思った。

 この牢に監禁されてから、もう一週間近く経つ。
 いろいろと不自由もあるし、不安も尽きないが、唯一ここにきて、嬉しかったことは、『良人の料理が食べられる』と、言うことだった。
(あの人の料理をこんなに食べられるなんて……いったい何時ぶりだろう)
 月明りを見つめながら、ロアンヌは思い出に浸る。
 出会ったときは、あの人はまだ見習いだった。
 厨房の片隅で、黙々と皿を洗い、先輩について、懸命に料理の技術を磨いていた。
 城仕えのメイドの仕事で、遅くまで城に残っていた私に、よく賄いを食べさせてくれた。

「俺はいつか、料理を極めたい。食べた皆が、幸せな笑顔になってくれるような、そんな料理が作れる、シェフになりたいんだ」

 それがあの人の口癖。そしてほどなく、私は彼にプロポーズされていた。
 彼曰く、「君の料理を食べる顔が好きだから」という理由らしかった。私は、彼の料理を、よっぽど幸せそうな顔をして、食べていたのだろう。

 それから幸せな蜜月期を経て、一人の娘───ミレイにも恵まれた。

 そして、丁寧な料理を作り続けていた彼は、城の厨房で認められ、いつしかそこの最高責任者である『シェフ』の称号を、その肩に背負っていた。
 彼は城の厨房に詰めるようになり、家に帰ることが少なくなっていた。
 結果、私は、いつしか彼の手料理を、食べる機会も減ってしまっていた。

 だけど、彼は幸せそうであったし、自分も特に、その状態に不満があるわけでもなかった。

 一人娘のミレイも、気立ての良い、やさしい子に育ってくれていた。

 このまま、穏やかに年を取って、ともに死んでいくのだ─────と、なんとなく、思っていたけれども。

 まさか自分の人生に、こんな『人質』として監禁される、という事態が起こるだなんて。

 自分のことはいい。だけど、自分がここにこうして拘束されている事態は、彼に果てしなく迷惑をかけていることはもう、疑う余地もなかった。

 どうして、自分は監禁されたまま、おめおめと生きているのだろう。
 死んでしまった方が────

「駄目よ!! 母さん!!」

 そう思うたびに、一緒に監禁されている娘に、強く励まされてきた。
「どんなことになっても、簡単に死ぬのはよくない! 絶対に、父さんを悲しませてしまうわ!」
 娘の、強いまなざしが、自分をまっすぐに見つめてくる。
 年若い彼女はいつだって、生きることをあきらめようとはしなかった。
「きっと、父さんだって歯をくいしばって耐えているのよ! 『私たちを助けたい』って。その想いを、無駄にしてはいけないと思うの!」
「ミレイ………」
「頑張りましょう、母さん。きっと生きていれば、助かるチャンスもあるはずだから────」

 そう言って、前を向き続ける娘は、いったい誰に似たのだろう。
 娘がいなければ、自分はとっくに死を選んでいたかもしれない。それほどまでに、ロアンヌにとって、彼女の存在は、大きな支えとなっていた。
(どうしたのかしらね。こんな、今までのことを物思うだなんて………)
 まるで、走馬灯のような景色。まるで、自分が今から死ぬみたい、と、ロアンヌはそう感じて苦笑する。
 自分はどうなってもいい。
 だが、娘のミレイはまだ年も若く、先行きもある。何とか助かってほしい、と願っているが─────
(それにしても、やけに眠れないわね……。今宵は、本当にどうしたのかしら………)
 そう感じたロアンヌは、寝台の上で姿勢を変えながら、窓から差し込む月明りを見る。
 外から聞こえる波の音も、今宵はやけに近くに感じる。そのせいだからだろうか。
(本当にきれい………。今宵は、満月かしら………)
 そう思いながら、しばらくぼうっと、波音を聞きながらその景色を見ていたロアンヌであったが、やがて、あることに気づいた。

(なんてこと……! 窓が閉められていない………!)

 それが何を意味するのか。その恐ろしい事実に気づいたロアンヌは、思わず傍で寝ている娘のミレイをたたき起こしていた。
「ミレイ!! 起きてちょうだい!! ミレイ!!」
「う………ん…………。なぁに? 母さん…………」
 もぞ、と、娘が寝台から起き上がる。それを待ちかねたかのように、娘に縋り付いていた。

「ミレイ!! どうしましょう……! 窓が開いている………!」

「え……………?」
 母が何を言っているのか、咄嗟にをの意図をはかりかねる娘は、きょとん、と小首をかしげてしまう。母は、そんな娘に、懸命に訴え続けた。
「分からないの!? ミレイ!!」
「えっ? だから、何が?」
「あそこの窓が、開いているのよ!!」
「窓? 窓くらい開くでしょう?」
 何当たり前のことを言っているのだろう、と、言わんばかりの娘に、ロアンヌは頭を振ると、必死に言葉を続けた。
「違うのよ!! いい? ミレイ……! この牢は、海より低い場所にある! あの天井近くにある窓でさえ、満潮時には沈むようになっているの!!」
「え? う、うん………」
「もうすぐ、海の潮が満ち、満潮になってくるはず……! いつもなら、あそこの窓が閉められているのに、今日は、閉められていない!!」
 母の言う通り、確かに、あそこの窓が開いている。

「このままあそこの窓が閉められなければ、この部屋に海水が流れ込んできてしまう………! 私たちは、溺れ死んでしまうわ!!」

「──────ッ!」

 母の言葉の意味を、ようやく娘も『理解』する。あまりにも絶望的な事態に、彼女も思わず息を呑んでいた。

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