農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 戦う君に、花束を 69

<<   作成日時 : 2017/03/17 01:10   >>

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「ま、窓……閉められないの……?」

 娘の質問に、母は頭を振る。
「無理よ……。あんな高いところにある窓を、閉められると思う………?」
「………………!」
 母の言葉に、娘は茫然と、天井近くにある、小さな窓を見つめる。
 鉄格子のはめられた窓からは、青白い月の光が、部屋に差し込んできていた。そして、波音も響いてきている。
「今までは、時間になれば、あの窓は閉められていた……。だから、私たちはこうして無事に、過ごすことができていたのだけれど………」
「母さん………!」
「あの窓が、閉められていない、と、言うことは…………」

 つまり、自分たち人質を『殺す』決定が、下されたということになる。ロアンヌはがっくりと、座り込んでしまっていた。
「そんな…………!」
 ミレイが、茫然とつぶやく。その場にはしばし、重い沈黙が垂れ込めた。
「…………………」
(仕方がない………)
 ロアンヌは、座っている間に、覚悟を決めた。
『人質』が殺される事態になる、と、言うことは、あの人が、私たちの命よりも、自分の命よりも─────自分の『信念』を貫いた、と、言うことになる。
 それに殉じたが故の『死』であるというのなら、誰を恨むことがあるだろう。

 ただ─────
 自分よりはるかに年若いミレイが─────

 母親が顔を上げると、ミレイが壁にとりついて、窓の方に向かおうとしている。しかし、垂直にそびえたつ壁は、ミレイに登られる事を、頑なに拒否していた。
「な、何をしているの? ミレイ……!」
 ずるずると滑り落ちてきた娘に、ロアンヌが声をかける。
「何って………窓を、閉められないかな、と、思って………」
「だ、駄目よ! 危ないわ!!」
 叫ぶ母親を、娘はちらりと見やると、その唇を尖らせていた。
「もうすぐ死ぬかもしれないって時に───『危ない』なんて言葉、意味がないわ母さん」
「………………!」
 娘の指摘に、ロアンヌははっと、息をのむ。
 確かに、そうかもしれないが────
「それよりも、どんなことをしてでもいいから、生き延びることを考えなくちゃ! 何もしないで、ただじっと死を待つなんて、私はいやよ。母さん」
「そ、そうかもしれないけれど……」
「協力して、母さん!」
 娘は、母親の手をぎゅっと握る。
「何とか、生き延びる努力をしましょう!」
 娘のまっすぐな眼差しを、ロアンヌは、ただ、見つめ返していた。


 暗闇の中、ハヤブサとナディール姫の、走る足音が地下通路に響く。
(もう4か所回ったけれど………ここにもいない………!)
 ナディール姫の顔には、焦燥の色が濃く浮かんでいた。ハヤブサに「焦るな」と忠告されるが、彼女はもう、気が気でなかった。あれから、どれだけ時間が過ぎたのだろう。海の水は、どれだけ満ちてきているのだろう。
「………………」
 じりじりとした気持ちに襲われているのは、ハヤブサも同じだ。さすがに年季の入った地下通路。その入り組んだ複雑さは、捜索を容易にはさせてはくれなかった。ナディール姫の案内なくば、とてもここまで探して回ることはできなかったであろう。

 焦るな。
 落ち着け。
 人質は、必ずこの近くにる。
 生きて────救助の手を、待っているはずなのだから。

「ナディール、次へ行こう。これ以上向こうへ行けば、城から離れすぎてしまう」

「はい」

 さんざん声を張り上げて、捜索した水路を後にする。ナディール姫は走りながら、必死に地下通路の構造を思い出していた。
(さっきの角から反対側に曲がったところの先にも、確か、下へ降りる階段が、あったはず………!)
「ハヤブサ様! こちらへ!」
「わかった!」
 ナディール姫の案内に従って、ハヤブサは素早く壁に印をつける。自分たちがどこをどう走ったか、どこを捜索してきたか─────その印を見れば、一目瞭然になるようになっていた。
 果たして、ナディール姫が指示した階段の先には、まだ何も印が付いていない。捜索がされていない通路だと確認してから、ハヤブサはその先に進んでいた。
 階段を駆け下りて、しばらく行くと、龍の忍者の足が止まる。
「どうしました?」
 問いかけてくるナディール姫に、ハヤブサは「シッ」と、唇の前に人差し指を立てて、(静かにしろ)と、合図を送る。
「……………!」
 ナディール姫が、はっと身を固くして、ハヤブサの後ろに控える。ハヤブサは周囲の安全を確認してから、そろそろと壁際から奥の空間に、視線を送った。

「………ナディール、ビンゴかもしれんぞ」

「えっ?」

「………向こう側の通路に、『灯り』が見える」
「─────!」
 ハヤブサの言葉の意味を悟り、息をのむ。
「ナディール………。このあたりに、城から通じる『地下室』があるのか?」
「いいえ」
 ハヤブサの問いに、ナディール姫は首を横に振った。
「確かに、城に『地下室』の類はありますが………こんな場所にはなかったはずです」
「ここに、別の何かの施設があったりするのか?」
「いえ、そんな話も聞いたことはなくて………」

「なら、知らないうちに、ここに誰かが勝手に灯りを設置した、と、言うことになるな」

「………………!」

 その言葉に、ナディール姫は、得体のしれない何かの『悪意』のようなものを感じて、身を固くする。ハヤブサは、そんな彼女の方に振り返ると、手を差し伸べた。
「この先へ行くが………ついてこれるか?」
「行きます」
 ナディール姫は即答していた。ここまで来て、「引き返す」という選択肢は、彼女の中には存在しなかった。

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