農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 戦う君に、花束を 71

<<   作成日時 : 2017/03/18 23:48   >>

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「ミレイ!!」
 ロアンヌが駆け寄って介抱する。ミレイは2、3回頭を振ると、がばっと起き上がっていた。
「あとちょっとだったのに………!」
 ミレイはそう言いながら、悔しそうに天井近くにある窓を見つめる。窓からは不吉な波の音が、ザブ、ザブ、と、部屋の中に入り込んできていた。
「もういいわ……! ミレイ………!」
 ロアンヌは思わず、ミレイに縋り付いていた。
「これ以上はもうやめて………! 怪我をしてしまう……!」

「だから母さん! 死ぬかもしれないって時に、ちょっとの怪我を心配するのは、意味がないんだってば!」

「ミレイ………!」
 呆然とするロアンヌを振り払うように、ミレイは立ち上がった。
「もうちょっとで手が届く……! あと少しだもの………!」
 壁際に寄せられたベッドの上に、テーブル、椅子、そのほか、台になりそうならば何でも積み上げて、ちょっとした小高い山を、ミレイは部屋の中に作り上げていた。それでも、そこから窓に手を届かせようとしたら、彼女はさらに垂直にそそり立つ壁を、手と足を使って登っていかねばならないのだが。
(痛…………!)
 何度も壁上りに挑戦した彼女の手足は、すでにあちこちがすりむけて、血がにじんでいた。
 それでも彼女は、あきらめずに壁に挑んでいく。
「……………………」
 ロアンヌは、そんな娘の姿を、複雑な面持ちで見守っていた。
 自分たちは今、『人質』として、捕らえられている。
 捕らえた者たちが、自分たちの『死』を決定したというのなら、そう簡単には覆らないだろう。万が一、ミレイが窓を閉めることに成功したところで、こちらに向かってくる明確な殺意は、必ず牙をむいてくるはずなのだ。
 それは、『水死』よりももっと惨たらしい方法で、自分たちを殺しに来るかもしれない。
 だから、いま払っているミレイの『努力』は、全くの徒労。無駄なあがきになる可能性が高い、ということを、すでにロアンヌは気づいてしまっていた。思い込みと努力だけで、すべてが切り抜けられるほど、現実は甘いものではないのだ。
 それなのに、必死にあがき続けるこの娘に対して、自分は、親としてどう接してやれば良い、というのだろう。
「く……………!」
 ロアンヌのそんな葛藤を知ってか知らずか、ミレイはひたむきに、壁に登り続けていた。


 金属と金属がぶつかって、弾ける音。
 獣の唸り声。
 雄たけび。
 断末魔の悲鳴─────

 物陰でナディール姫は、ただ、ハヤブサが戦う音を聞き続けていた。

 大丈夫。
 あの人は、強い。
 きっと、この戦いも、切り抜けてくれる。

 信じ続けること─────
 自分のできることは、これしかなかった。

 やがて─────

 シン、と、静まり返った戦場。

 パシャ、パシャ、と、水がたまった通路を、誰かがこちらに向かって歩いてくる音が聞こえてくる。
(……………!)
 ほんの少し、身を固くする。だがそれは、杞憂だったとすぐに悟ることになった。

「ナディール」

 龍の忍者が、こちらをのぞき込んでくる。姫は、少し表情を緩めながら、立ち上がった。
「ハヤブサ様………!」
「もうこの近くに敵はいない。もう少し奥へ進もう」
 ハヤブサの提案に、ナディール姫は「はい」と頷く。二人はそのまま、奥へ向かって走り出していた。


(ハヤブサが動いた………)
 シュバルツは手の内で、ハヤブサのロープの動きを感じ取っていた。静かにたたずんでいるように見えるが、彼の精神は極限まで研ぎ澄まされ、手の内のロープに、全神経を集中させている。その額からは、汗がしたたり落ち始めていた。
(きっと、釣りをしている人も、こんな感覚なのだろうな………)
 そう思ってしまって、シュバルツは少し、苦笑する。
 ハヤブサを、釣りをするための『餌』というのなら、これほど物騒な『餌』もないだろう。この餌は、相手に黙って食べられることは絶対にない。どちらかというと相手を捕食し、消化する側になってしまう方だ。

 そして、この獰猛な餌は、シェフの奥さんと娘さんを助けたい、と、願って、地下通路を泳ぎ回っている。

 心優しき勇猛な『餌』────シュバルツは素直に、好ましい、と、感じていた。

 ハヤブサの、無事を祈る。
 どうか皆を引き連れて、帰ってきてほしい─────

「あ、隊長!」

 ロープを継ぎ足す作業をしていたモガールが、そう声を発して立ち上がる。果たして彼の見つめる方向から、イガール隊長がばたばたと走りこんできていた。

「姫様が地下に入った場所は、ここか!?」

「あ、はい!」
「この場所であります!」
 イガールの問いかけに、モガールとヤッセが敬礼をしながら答える。
「そうか………」
 イガールはしばらく、地下への通路の入り口をじっと見つめていたが、やがて「姫様……!」と、小さく叫びながら地下通路に入っていこうとした。それを見た兵たちが、慌てて彼を引き留めていた。
「うわっ! 隊長! だめですよ!!」
「そうですよ! 危険すぎます!!」
「しかし、姫様が────!」
 そう言って、兵たちを振りほどこうとしたイガールであるが、「う………!」と、小さくうめいて、その場に座り込んでしまっていた。

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