農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 79

<<   作成日時 : 2017/03/27 00:48   >>

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「のぼれ!! 早く!!」

 ハヤブサはミレイにロープをつかませ、自分はその後ろからロアンヌを抱えて部屋から脱出を試みる。
 容赦なく流れ込む海の水。逆巻く濁流は、ハヤブサたちの身体を、水底に引きずり込もうとした。

「手を止めるな!! 上がれ!!」

 ハヤブサは、懸命にミレイを励ましながら、水に抗い、壁を登り続ける。時折滑り落ちそうになるミレイを、下から支え続けた。

「ミレイさん!!」

 ハヤブサの空けた穴からは、ナディール姫が身を乗り出して、こちらに向かって手を伸ばしている。
「姫様!!」
 ミレイの伸ばした手を、姫がつかみ取る。ナディール姫は、力いっぱいその手を引き、ミレイは部屋から脱出することに成功していた。
「ミレイさん……! 大丈夫………?」
「姫様………!」
 ミレイは弾む息を整えながら、何とかナディール姫の問いかけに返事をする。

 信じられない。
 まさか本当に、姫様が、自分たちを助けに来てくれるだなんて。
 そして自分たちは
 これで助かったのだろうか───

「ミレイ………!」

 ハヤブサとともに脱出してきたロアンヌが、ミレイの方へ駆け寄ってくる。
「母さん………!」
 ミレイは、縋り付いてくるロアンヌの身体を抱きしめた。
 そのまま、しばしむせび泣く母娘。ナディール姫は、よかった、と、見つめていたが、同時に、胸をぎゅっと締め付けられる想いもしていた。

 本当に、皆をひどい目に遭わせてしまった。
 わたしのせい─────

「悪いが、感慨にふけるのは、あとにしてくれないか?」
 空気を切り裂くような龍の忍者の声に、ナディール姫は、はっと我に返った。
「ハヤブサ様………」

「そこかしこから、水が流れ込んでくる音がする」

 危険な事実を伝えてくるハヤブサの言葉に、一同ははっと息をのんでいた。

 そう。
 今いる場所は、満潮時には水路になっているところ。
 つまりは、ここも『水に沈む』場所なのだ。

「ここも直に、水に沈むぞ! 早急に脱出しなければ────」

「でしたらハヤブサ様! こちらへ!」

 ナディール姫は、力強く叫んでいた。
「少し進んだ場所に、吹き抜けになっている場所があります! そこから上に登れば────!」
「よし、分かった! 行こう!」
 叫びながらハヤブサは、自分の身体に括り付けていた縄を切る。もうこの縄は、必要のないものだからだ。
「案内してくれ! ナディール!」
「はい! ミレイさん、ロアンヌさん! こちらへ!」
 一同はナディール姫の案内に従って、その場から移動を開始していた。


 少し走ったところで、果たして、ナディール姫の言葉通り、目の前の空間が拓ける。そびえたつ岩肌のところどころに隙間があり、淡い月明かりが差し込んできていた。夜の優しい風が頬を撫で、穏やかな波音が耳を通り抜けていく。
(きれい………)
 優しい景色に、一瞬見惚れてしまうナディール姫。だが、すぐに、首を振って我に返った。

 そう
 いまは、
 こんなところで立ち止まっている場合ではないのだ。

(良し………! 狙い通りの場所だな………)
 周りの景色を見て、ハヤブサは一人、頷いていた。
 波の音の響き方からして、この岩壁の向こうは、すぐに海だ。
 そして、月明かりが差し込んでいる、ということは、ところどころの壁には隙間があり、外への脱出を容易にする、と、言うことだ。
 シュバルツには、「海沿いの崖から脱出する」と、伝えてある。
 どこでもいいから岩壁を派手にぶち抜けば、耳の良いシュバルツのことだ。きっと気づいてくれるだろう。
 ハヤブサは素早く周りを見渡して、姫やミレイが登れそうなルートを探す。
(あそこでいいか)
 比較的なだらかな斜面に、とっかかりとなる岩の凹凸がある。少し上に進めば、休憩できそうな踊り場のような場所も点在していた。
 そのルートに見当を付けると、ハヤブサは己の懐から、鉤爪のついた縄を取り出す。
 それを、勢いよく崖の上方に投げ、しっかりと引っかかったのを確認してから、皆の方へ振り返っていた。
「さあ、これを伝って、上に登って行け! 急げ!!」
「はい!」
 ナディール姫とミレイは、躊躇なくロープをつかみ、上へと登り始める。
「わ、私は………」
 ロアンヌはしり込みしていた。年老いた自分が、こんな急峻な崖を登れるはずもない。
「早く!!」
 ハヤブサが手を差し伸べるが、彼女は首を横に振るばかりだ。
「……………!」
 このままでは埒が明かない、と、踏んだハヤブサは、彼女の身体を強引に抱え上げる。そのまま彼もまた、崖を登り始めていた。

 彼らが少し上に登ったところで、その場所にも水が流れ込んでくる。
「あ…………!」
 流れる水音の激しさと、濁流の勢いに、ナディール姫の視線は奪われ、その身体が硬直してしまう。
「下を見るな!!」
 龍の忍者が、彼女のすぐ下で叫んでいた。
「上だけを見て、まっすぐ進むんだ!!」

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