農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 戦う君に、花束を 80

<<   作成日時 : 2017/03/29 01:50   >>

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「は、はい!」
 ナディール姫は、必死に縄をつかんで、登り続ける。どうにかこうにか、最初の踊り場までたどり着いていた。
「みんな、大丈夫!?」
「ええ………」
「何とか………」
 皆が、踊り場の上で互いの無事を確かめ合い、ほっと息をついている間に、龍の忍者はさらに上方を見上げていた。休憩できそうな踊り場が、もう少し上ったところにあり、その近くの隙間から、月明かりが漏れ出てきている。下の自分たちが居た場所は、流れ込む海水で埋め尽くされ、さらにその水かさを増そうとしていた。
(………もう少し、上がった方がいいな)
 周囲の状況を鑑みたハヤブサは、そう判断した。
「ナディール、もう少し上に上がろう」
 彼の判断に、否やを唱える者はいない。姫たちは、ハヤブサの渡してくれたロープを伝って、もう一つ上の踊り場を目指した。

「キャ……………!」

 小さな悲鳴とともに、ミレイの身体がずるっと滑り落ちる。
「─────!」
 ナディール姫がそれに気づいたときには、ハヤブサがその下で、ミレイの身体を支えていた。
「……………!」
 いかに龍の忍者が豪腕であるとはいえ、ロアンヌを抱きかかえながらロープにつかまり、さらに落ちそうになっているミレイを助け上げるのは、いささか苦戦を強いられた。
 それでも、彼女を離してなるものか、と、ハヤブサはぎり、と歯を食いしばる。腕と腹筋に、ありったけの力を込め、彼女の手を再びロープに掴まらせようとしたとき、彼は気づいてしまった。

 ミレイの手が、すでに傷だらけである、ということに。

「な……………!」
 思わず、小さく呻いてしまうハヤブサ。こんな状態の彼女の手に、これ以上ロープを握らせるわけにはいかない。
(どうする?)
 二人を抱えて登ることも、かなり力づくになってしまうが、できない話ではない。ぐ、と、身体に力を入れなおした時、上から声をかけられた。

「ミレイさん!!」

 見ると、ナディール姫が、必死にこちらに向かって手を伸ばしてきている。

「姫様………!」

 ミレイも、懸命にナディール姫に向かって、手を伸ばしていた。
 ハヤブサは、姫に彼女を任せて、自身もまた、ロアンヌを抱えなおして、岩肌を登り始めた。


「ミレイさん……! 大丈夫?」

 踊り場についたナディール姫が、さっそくミレイを案じている。彼女もまた、ミレイの手のけがに、気づいてしまったのだろう。
「へ……平気です………。大丈夫………」
 手を隠しながら、軽く笑うミレイの横に、ロアンヌが近づいてきて、寄り添うように座る。
「すみません、姫様……! この子ったら、牢の中で、かなり無茶をして───」
「母さん! そんなこと、こんなところで言わなくっても……!」
「もう、何度も何度も、牢の壁を登っているんです」
「………………!」
 その言葉に、思わず息をのむナディール姫。
「母さんってば!!」
 ミレイの方は、ロアンヌに対して、抗議のような声を上げている。
「これぐらいの怪我、大したことないんだから余計なことは言わないでよ! 母さん!! こんなもの───」

「大したことなくても、放置はまずいだろう。手を出せ」

 ハヤブサのぶっきらぼうな言葉が、ミレイの言葉を遮った。

「えっ? あ……! いたっ………!」
 ハヤブサに手を取られたミレイが、悲鳴を上げた。ハヤブサがミレイの手に、水をかけだしたからだ。
「洗わないと消毒できない。少し、我慢しろ」
 そう言いながら龍の忍者は、ミレイの手に手早く治療を施していく。

「手際が良いですね……」

 ナディール姫は、ハヤブサの治療を進める手を見つめながら、感心していた。
「必須技能だ」
 それにたいしてハヤブサは、不愛想に返事をしていた。怪我が多い職業柄、自分でも他人でも、手当てをする機会が必然的に増える。ただそれだけの話だ、と、ハヤブサは思った。
「できたぞ。だが、しょせんは応急処置だ。後で、ちゃんとした医者に診てもらえ」
「あ、ありがとうございます……」
 ミレイは少し涙目になりながら、包帯を巻かれた手に、ふうふう、と、息を吹きかけている。よほど、消毒の薬が染みたのだろう。
(しかし………彼女に、これ以上この岩壁を登れ、と、要求するのは……無理だな………)
 ハヤブサはミレイの様子を見ながら、そう感じてため息を吐く。
 ミレイはよく見れば、足も膝も、すでに傷だらけだった。
 本当に、何度も何度も、牢の壁を登っては落ちてを、繰り返したのだろう。
 そんな彼女に、これ以上無理をさせるわけには、いかなかった。
「…………………」
 ハヤブサは黙って、さらに上方の岩肌を見つめる。月明かりが差し込んでいる隙間までは、あともう少し距離があったが─────

(打ち抜けるか………? ここから、あの場所を………!)

 龍の忍者は、静かに息を吐きながら、拳を構える。

 大丈夫だ。
 あの距離ならば、俺の『気弾』は届く。
 打たねば。
 ここから、皆で脱出するために。
 シュバルツに、自分の居場所を知らせるためにも。

「少し、荒事をする。皆、身を低くして、頭を庇って互いを守りあってくれ」

「は、はい………!」
 ミレイとロアンヌは、言われたとおりの姿勢になるが、少しいぶかしげな顔をしていた。
 そんな中、ナディール姫だけは、ハヤブサの次の行動をある程度予測する。その衝撃に備えて、二人をかばいながら、身構えていた。
 

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