農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 戦う君に、花束を 82

<<   作成日時 : 2017/03/31 13:55  

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「皆無事だ。あそこにいる」
 シュバルツが穴の中をのぞき込むと、なるほど確かに、少し離れた踊り場のようになっている岩間の上に、女性3人が固まって座り込んでいる。シュバルツと視線の合ったナディール姫が、こちらに向かって手を振っていた。
「俺は今から、彼女たちをここまで運んでくる。シュバルツ、その後を頼んでもいいか?」
「ああ」
 頷くシュバルツに、ハヤブサは微笑み返す。

 やはり、彼は
 自分にとっては得難い『相棒』なのだと、ハヤブサは強く自覚していた。
 そして、何よりも愛おしいヒト─────

「では、シュバルツ、この縄を頼む」

 ハヤブサは、自らの『命綱』とも言える縄を、シュバルツに託す。それをした彼は、また、穴の中へと降りて行った。姫たちの元へと─────

「皆! ナディール姫と、人質となっていた人たちはここにいる! 今から出てくるぞ!!」

 シュバルツは、ハヤブサから託された縄を、自身が持ってきた縄と結びつけながら、上に向かって叫んでいた。その声を聴いた兵士たちから、「おお……!」と、どよめきが上がる。

「シュバルツ殿! どうか、お気をつけて!」
「縄は、我々がしっかりと抑えていますので!」

「ありがとう」

 シュバルツが兵士たちに手を振ると、兵士たちも嬉しそうに応えていた。その横で、イガールが、食い入るようにこちらを見つめている姿が見える。
(やはり、姫が心配でたまらないのかな)
 イガールのその姿を見ながら、シュバルツはなんとなく、そう感じていた。


 ストン、と、龍の忍者が、身軽に踊り場に舞い降りてくる。皆がそろっているのを確認してから、ハヤブサは改めて、3人に手を差し伸べていた。
「今から一人ずつ、俺が出口まで運ぶ。最初に、誰が来る?」

「………………」

 3人は、互いに顔を見合わせながら、しばし思案にふけっていたが、やがて、それぞれがそれぞれ、自分以外の人間を指さしていた。
「姫様、お先にどうぞ」
「そうですよ、姫様」
 ロアンヌとミレイは、ナディール姫を先に行かせようとする。しかし、それには姫の方が、頑なに首を横に振っていた。
「何を言っているの!? だめよ!!」
「ですが、姫様………」
 ロアンヌは、少し困ったように口を開いた。
「王族をお守りするのは、我々国民の『義務』ですから………」
 その言葉にナディール姫は、「違うわ!」と、強く反論していた。
「その義務を負うのは、我ら王族の方です!! 私たちは、国の人々がいて、初めて『王』となりえるのですから───!」
「でも、姫様……! 姫様には責任もお立場も、私たちよりはるかに重いものがあるはずです……! ならば、私たちよりも先にここを────」

「………その重い責任があるから、私はなおさら、貴方たちより先に、ここを動くわけにはいかないわ」

 ナディール姫の、固い意志を孕んだ声が、その場に響く。ロアンヌ母娘は、はっと息をのんでいた。

「お願いします、ハヤブサ様。私をここから連れ出すのは、一番最後にしてください。そうしなければ、私は父や国民に、顔向けができなくなってしまいます」

「……………!」
 きっぱりと姫にそう言い切られて、一体だれが、反論できるだろう。ハヤブサは、やれやれ、と、ため息を吐いていた。
「ならば、二人のうち、どっちが先に行くんだ?」
 ハヤブサはそう言いながら、今度は母娘の方に、手を差し伸べる。しかし、ここでも、母娘は互いに譲り合おうとした。
「お願いします。母さんを先に────」
「駄目です。ミレイ、貴方が先に行きなさい」
「でも、母さん………!」

「駄目ですよ。子供は、親より先に死んではいけません」

「……………!」
 その言葉に、一同ははっと息をのむ。

「お願いよ、ミレイ……! なんと言われようとも、私は………! 貴方を私より先に、死なせたくないの………!」
 そのまま、すすり泣くロアンヌの声が響き渡る。その姿に、皆はもう何も言えなくなってしまった。
(確かにそうだな……。子が親より先に死んでしまうのは、一番の『親不孝』だ)
 ハヤブサはそう思いながら、亡き母に思いを馳せる。
 自分を生んですぐに、天に召されてしまった母。
 だから、自分には『母親』に関する記憶もないし、その思い出もない。
 だが母は、自分を身籠った時から、その誕生をとても心待ちにしていた、と、ハヤブサは人づてに聞いていた。

 心優しい母─────
 もしも母が生きていたら、自分が危険な任務に赴くたびに、「死んでほしくない」と、嘆かせることになったのだろうか。

「よし、決まりだな。一番最初にミレイを、次に、ロアンヌを運ぶ。ナディール……お前は最後でいいな?」

「ええ。十分です。ハヤブサ様」
 ナディール姫は、そう言って頷き、笑顔を見せた。ハヤブサの決断に、否やを唱える者は、誰もいなかった。

「では行こう。ミレイ、俺につかまれ」

「は、はい………!」
 ハヤブサの差し出した手を、ミレイが握り返す。ハヤブサはミレイの身体を抱きかかえると、自身が穿った穴に向かって、再び岩肌を登り始めていた。

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