農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 63

<<   作成日時 : 2017/03/10 00:35   >>

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「姫様…………無事に、シェフのご家族を見つけられるといいな……」
 同僚の言葉に、モガールも頷いた。
「そうだな…………」
 そのまま、しばし地下通路の入り口を見つめていたモガールであるが、やがて、ポツリとこう言った。

「なあ、ヤッセ………。今、俺たちの国は、王が病気でお倒れになってから、後継者の問題で、少し揺れているけれど………」

「うん」
 ヤッセと呼ばれた同僚の兵士は、同意をするために頷く。

「俺は、もし『主君』を選べるのなら、姫様がいい、と、思っている………」

「モガール………」
 少し驚くヤッセを、モガールはまっすぐ見つめ返した。
「だって姫様は、どんなに危地に陥っていても、絶対に、俺たちを見捨てようとはしなかったんだ………」
 そう言いながらモガールは、姫と街を散策した時のことを、思い出していた。
 彼女は、刺客に襲われて逃げる時も、常にこちらに気を配っていた。
 モンスターに囲まれた時も、こちらを必死に庇おうとしてくれた、あの手の震えを、いまでも鮮明に思い出すことができる。
 
 あの時に決めた。
 自分が命懸けで守るのは、この人なのだと。

「そうだな………。俺も………」

 ナディール姫が、常に周りのことをおもいやり、行動している姫であることを、ヤッセもよく承知していた。だから、モガールの言っていることが、よくわかった。

「誰が何と言おうと、俺も、姫様の味方になるつもりだ」

 ヤッセの言葉に、モガールもうん、と、頷く。
「…………………」
 シュバルツも、黙って横で話を聞いていたが、ナディール姫の人柄を理解していた。
(そうか……。だからハヤブサも、必死になって彼女を守ろうとしているんだな………)
 ハヤブサが仕事熱心なのはいつものことだが、この仕事に関しては、特に力が入っている、と、シュバルツは感じていた。
 普段通りのハヤブサであるなら、彼が『仕事』をしている場に自分が顔を出したならば、まず怒る。有無を言わさず、追い返そうとしてくるのが常であったのに。
 今回に限っては、それがない。それどころか、彼女を守るために、自分に頼ることを、躊躇うことすらしなかった。
 それだけハヤブサも必死なのだ。
 ミッションの達成以上に、彼女を守りたい、と、彼も願っているのだろう。

 シュバルツは、祈る。
 どうか、『悪意』に負けないでほしい、と。

『生きているだけで迷惑をかける』
 それは、ある意味当たり前のことなのだ。

 人は、生きている限り、場所をとる。
 他者とのかかわりを持たずには、いられなくなる。
『迷惑』をかけずに生きている人間など、この世にはいないのだから。

「…………………」

 こうしている間にも、縄が、シュバルツの手の上を滑っていく。ハヤブサの動きを感じていた。
「俺、もう少し継ぎ足す用のロープを持ってきます!」
「俺も手伝うよ!」
 そう叫んで、モガールとヤッセが走り出す。
(ハヤブサ………! 姫………! 二人とも、どうか無事で………!)
 シュバルツもまた、そう祈りながら、わずかな合図も捉え漏らしがないよう、その手に全神経を集中させていった。


「真っ暗………!」

 地下に降り立ったナディールは、思わずそう漏らしていた。兵士たちに借り受けたライトを点けても、あまり視界が確保できないので、少しの心細さを感じた。

「そうでもないぞ? ところどころに光が差している……。今宵は、月が明るいんだな」

 対してハヤブサは、自身も闇の中に溶けませながら、そんなことを言っている。
「そうなんですか?」
 ナディール姫は、きょとん、としながらも、ハヤブサの言葉に従って、目を凝らしてみる。すると確かに、通路のあちこちに、青白い光がわずかに差し込んでいるのが見えた。
「きれい………」
 思わず、素直な感想が、漏れ出てしまう。この時間に、この通路に来ることなどなかったから、余計に、未知の景色に感動を覚えていた。
「のんびり感慨にふけっている暇などないぞ、ナディール」
 苦笑しながらもハヤブサは、彼女にそう声をかける。闇に怖気るどころか、その美しさに感嘆の声を上げる彼女の姿は、素直に好ましいと思ったが。
 今は、一刻を争う事態なのだから。
「ここからは、お前の地下通路に関する知識が頼りだ。この近くで、満潮時に水中に沈むのはどのあたりだ?」
「それはこっちです。こっちの方────」
 ハヤブサの問いに、ナディール姫は淀みなく答える。
「この先に、下に降りる階段があるんです。その先は、満潮時には水がたまっていて、進めなかった覚えがあるから………」
 果たして彼女の言葉通り、少し進めば下に向かって階段が伸びていた。ハヤブサたちは、迷わず下に向かって階段を駆け下りていた。

 階段を降りると、少し開けた空間に出た。地面にはところどころ水がたまっていて、二人が足を踏み出すたびに、水滴がパシャリと、音を立ててはねた。

「この辺りで、人を監禁できるような場所に、覚えはないか?」
「わ、分からない……! 『人を閉じ込める』なんて、そんな考えで、この辺りの景色を見たことなんかないもの………!」
(それはそうだ)
 自分の問いかけに戸惑うナディール姫の姿に、ハヤブサはある意味納得する。
 この優しい姫は、そんな風に人を陥れることなど、考えたこともないのだろう。

「誰かいないか!?」

 だからハヤブサは、まず大声で、呼びかけてみることにした。
 敵であろうが味方であろうが、誰かいるのなら、反応が返ってくるはずであるから。
 

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