農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 83

<<   作成日時 : 2017/04/02 23:13   >>

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「ハヤブサ」
 出入り口に着くと、シュバルツが手を差し出してくる。
「頼む!」
 ハヤブサは、ミレイをシュバルツに託すと、再び穴の中へと入っていった。

「大丈夫か? 上へ行くぞ」
 シュバルツは、ミレイを抱きかかえると、崖を上へと登っていく。
「シュバルツ殿! こちらへ!」
「がんばれ! あと少しだ!」
 崖の上では、数人の兵士たちが身を乗り出すように覗き込んで、こちらに向かって手を差し出している。兵士たちの手が届くところまで、シュバルツがミレイを運ぶと、皆の手が、ミレイを上へとひっぱりあげていた。
「大丈夫か?」
「早く火のそばへ! 身体が濡れている!」
「毛布を持ってきた! タオルもいるか!?」
 ミレイを助け上げた兵士たちが、彼女の様子を見てあわただしく動き始める。
「シェフを呼んで来い! 早くご家族に会わせてやるんだ!」
 イガールの叫びに、「了解!」と、兵士の一人が走り出す。イガール自身は、崖から身を乗り出すように、下を見つめ続けていた。


「次はお前だ。行くぞ」
 ハヤブサは、ロアンヌに向かって手を差し出す。
「姫様………!」
 ロアンヌは、案ずるようにナディール姫の方を見つめる。
「大丈夫よ」
 ナディール姫は、そんなロアンヌに、やさしく微笑みかけていた。そんな彼女の足元には、傘を増した海水が、もうかなり近くまで迫ってきていた。
(急がなければ……)
 ハヤブサは拳を握りしめる。もう本当に、ぐずぐずしている時間は無いと悟った。

「ナディール、なるべく早く戻るが……身の危険を感じたら、少しでも、上へ移動しておけ」

「ハヤブサ様」

「必ず迎えに来るから」
 そう言い残して、ハヤブサはロアンヌを抱きかかえて、踵を返した。踊り場の上には、ナディール姫が1人、残された。
 するすると、岩肌を素早く上っていく、龍の忍者の後ろ姿を、暫し瞳で追うナディール姫。その足元に、跳ね上がった海水が、パシャリ、と、かかる。
「……………!」
(もうこれは、少しでも上に上がった方が良さそうね)
 ナディール姫はそう決意して、岩壁を上へとゆっくり登りはじめていた。


「この人を頼む!」

 出入り口で待っていたシュバルツに、ロアンヌを託す。そのままハヤブサは、再び洞窟の方へと振り向いて、ナディール姫がいた踊り場が、水没している事に気がついた。
「──────!」
 息を呑み、姫の姿を探す。すると、踊り場から少し上の岩場にしがみついて、ゆっくりと上へと上っている、ナディール姫の姿を見つけた。

「ナディール!!」

「ハヤブサ様………!」

 ハヤブサの呼びかけに気づき、顔を上げるナディール姫。その瞬間、足下の岩場が小さく崩れた。
「キャ…………!」
 さすがに悲鳴を上げ、少しバランスを崩すナディール姫。
「今行く!!」
 龍の忍者は短く叫ぶと、岩場を飛ぶように移動してきた。
「手を離すな!!」
 超人的な身体能力を駆使して、岩壁を移動しながら、ハヤブサはナディール姫に呼びかけ続ける。そして、あっという間に、彼はナディール姫の元に到達していた。

「掴まれ!!」

 ハヤブサの呼びかけに、ナディール姫も懸命に、その手を伸ばす。二人の手は、がっしりと重なり合い、ハヤブサはナディール姫を、己の方に引っ張り上げることに成功していた。

 そのまま龍の忍者は、ナディール姫とともに、地下の通路から外へと出る。
「大丈夫か?」
 今までと同じように、出迎えてくれる愛おしいヒト。その表情を見ると、やはり、自分の中の何かが緩んでしまうのを、ハヤブサは感じていた。
「シュバルツ、姫を頼む」
 故に、ハヤブサは姫をシュバルツに託した。少し、その場で一息つきたい、と、願ってしまったせいかもしれなかった。
「分かった」
 そんなハヤブサの態度を、特に疑問に思うこともなく、シュバルツは姫を彼から受け取り、崖の上へと登っていく。登り始めて少ししたところで、上から声をかけられた。

「姫様!!」

 その声に、ナディール姫の方が、びくっと、少々過剰に反応する。少し不思議に思ったシュバルツが、上を見上げると、こちらをのぞき込んでいるイガールの姿が、視界に飛び込んできていた。

「あ……………!」

 腕の中のナディール姫が、彼に向かって懸命に腕を伸ばし始める。気のせいか、その頬が、少し赤らんでいるようにも見えた。
(これは………)
 シュバルツは、ピン、とくるものがあった。それがゆえに、彼女を地上に助け上げる役目は、イガールに託そう、と心に決めていた。

「姫様!!」

「イガール………!」

 主従は互いに、懸命に手を伸ばしあう。イガールの手が、姫の手に触れた。
(もう、大丈夫だな)
 シュバルツは、姫をイガールに託そうとする。
 その刹那だった。

 イガールの手から、姫の手が、ずるっと、滑るように離れる。

「─────!」

 悲鳴を上げる間もなく、ナディール姫の身体が、下へと落ちて行ってしまっていた。
 

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