農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 85

<<   作成日時 : 2017/04/06 01:04   >>

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 馬鹿だ。
 馬鹿だ。

 こんなことで、涙がこらえられなくなってしまうだなんて。

「ふ………………」

「姫様…………?」

 イガールが、怪訝そうにこちらを見ている。早く泣き止まなければいけない、と、ナディール姫は強く思った。これ以上、泣くのはだめだ。これ以上の涙は、彼に迷惑をかけることに、なってしまうから。

 泣き止め。
 早く。
 これ以上の涙は無意味だ。

 やらねばならないことがある。
 言わねばならないことがある。
 だけど、一度乱れてしまった感情は、なかなか彼女を放そうとしてはくれなかった。

「姫様………」

 涙を流し続けるナディール姫の前で、呆然とたたずんでしまうイガール。
「………………」
 実はハヤブサは、かなり苛々しながら、その様子を見つめていた。
(「姫様………」じゃ、ないだろう!? あのバカ野郎が!)

 彼女に、あんな涙を流させておいて、どうして抱きしめてやらないんだ、あの男は。
『好き』という気持ちがあるのなら────何も恐れることは、ないだろうに。

「彼女は王族だ。気持ち一つで、どうこうなるものでもないのだろうな………」

 いつの間にかハヤブサの横に来ていたシュバルツが、そっと、呟いてくる。
「シュバルツ」
 振り返るハヤブサに、彼は手を軽く上げて応えていた。

「彼女の置かれている『立場』を考えるのなら、そう簡単には抱きしめられないと、思うぞ」

 ハヤブサの考えをなんとなく察しているのか、シュバルツが諭すように言葉を紡ぐ。
「立場か」
 ハヤブサは、シュバルツの言葉に、軽くため息を吐いた。
「そんなもの、俺は気にしないがな………」
 ハヤブサのぼそりと落とされた言葉に、シュバルツはやれやれ、と、肩をすくめる。
「それは、『お前』は、そうかもしれないが────」
 そのまま彼は、イガールの方に、視線を走らせた。
「そこまで『覚悟』を決めた者など、普通はなかなかいない。イガール殿も、姫の置かれている立場を鑑みてしまって、二の足を踏んでいるのではないだろうか」
「………………」
 ハヤブサは、シュバルツの言葉には答えず、一歩、前に出る。

 好きなのだろう?
 お互いが
 お互いを。

 ならば、一歩、踏み出すべきなのではないのか。

 ハヤブサは、単純にそう考えてしまう。

 本当ならば、護衛する対象の『恋心』の面倒を見るのまでは、依頼の範囲外のことだ。だから、余計な手出しなどせず、静観するのが、プロとしては正しい心構えなのかもしれない。

 だが、何故だろう。
 黙ってみていることなど、できそうになかった。

 それは、自分もまた、恋をする痛み、辛さを、知ってしまっているせいかも、しれなかった。

「………………」
 泣いているナディール姫は、無防備で、隙だらけだ。だからハヤブサは、手の中にそっと、小さな『気弾』を作り、彼女の足元に向けて放ってやる。
「─────!?」
 姫の足元で爆ぜた『気弾』は、彼女の身体からバランスを奪う。そのままナディール姫は、前のめりに倒れてしまいそうになった。
「姫様!」
 それを近くにいたイガールが、とっさに支える。
「─────!」
 しかしその状況に、姫は身体を硬直させてしまっていた。
 何故ならこれは。
 自分から、イガールの胸に飛び込んでしまったも、同然なのだから。

「あ……………!」

「………………!」

 硬直しているのはイガールも同じなのだろう。姫を支えた格好のまま、固まってしまっている。

「いっ!?」
「馬鹿ッ!! 見るな!!」
「し、静かに、何気ない風を装っているんだぞ………!」

 周りの兵士たちも、いろいろと何かを察知しているのだろう。皆必死にあらぬ方向に視線を泳がせ、自分たちを『空気』と化そうとしているのが見て取れた。それがゆえに、その場は異様な緊張感が漂う空気が流れこんでいた。
「お、おい…………!」
 これがハヤブサの仕業である、と、勘づいているシュバルツは、少し慌て気味に、彼に声をかけた。なんにせよ、これは先走りすぎているのではないか、と、感じてしまったからだ。
「………………」
 それに対してハヤブサは、特に何も答えることはなかった。ただ腕を組んで、二人の様子を静観しているのみだった。

 とにかく、きっかけだ。
 二人に必要なのは、最初の一歩を踏み出すことなのではないかと、ハヤブサは感じていた。
 互いの思いを確かめ合ってこそ、次への一歩が進めるのではないか。

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