農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS 戦う君に、花束を 89

<<   作成日時 : 2017/04/14 11:11   >>

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「いや………えっと…………」

 シュバルツは少々たじろぎながら、必死に逃げ道を探そうとする。だがそれよりも早く、彼はあっという間に城の者たちに、取り囲まれてしまった。

「ドモン・カッシュの兄………」
「いわれてみれば、似ているような………」
「だが、ドモン・カッシュに兄弟居たっけ?」

 その言葉に、一同がフム、と、首をひねる。その中で、ノゾムが一人
「いますよ」
と、冷静に応えていた。

「ドモン・カッシュには、確か、お兄さんがいて………」

 ノゾムが、慣れた手つきで端末を操っている。
「そういえば、ノゾム様は、ユリノスティ王国一の、ドモン・カッシュのマニアだったな」
「データベースをこしらえているって、聞いたことがあるぞ?」
「雑誌の記事とか、全部スクラップ帳に保存してあるとか……」
(マニア………)
 兵士たちの話を聞きながら、シュバルツはもう苦笑するしかない。
 キョウジも相当な「ドモンマニア」といえるが、果たしてそれを上回るほどだろうか、と、シュバルツが思索している間に、ノゾムは目的の記事に、たどり着いていた。

「あった。この項目だ。お兄さんの名前は、『キョウジ・カッシュ』と言って─────」

 そこまで行ったノゾムは、キョウジの画像から、シュバルツの方に視線を移す。

「え…………」

 そして、そのまま固まってしまった。

 なぜなら、そこにいた『シュバルツ』の顔は
 どこからどう見ても、『キョウジ』の顔を、瓜二つなことに、気づいてしまったからだ。

「……………」

 それは、兵士たちも同じのようで、キョウジとシュバルツの顔を見比べて、皆、あんぐりと口を開けている。

「………………」

「………………」

 しばし、奇妙な沈黙が、その場を支配する。シュバルツは微笑んではいるが、明らかにその頬が、ぴくぴく、と、引きつっていた。

「あの…………」

 ノゾムが口を開いた瞬間、シュバルツが己の顔に、がぼっと覆面をつける。
「あ…………!」
 だが、ノゾムが小さな悲鳴を上げた瞬間、ハヤブサが、シュバルツの覆面を、がぼっと取り外していた。
「お……! おい………!」
 慌てるシュバルツを、ハヤブサはじとっと、にらみつけていた。その手にはシュバルツの覆面が、しっかりと握られている。
「こうして名乗ったんだ。いまさら、隠れようとするのはよせ」
「いや、しかし………!」
 シュバルツは、名乗ったことを、少し後悔してしまう。
 自分は、あくまでもキョウジの『影』
 だから、こんな風に、キョウジの代わりに、自分が注目を浴びることなど、あまりよくないことのように思うのだ。

「心配するな、シュバルツ。悪いようにはしない」

 ハヤブサは、シュバルツの覆面を懐にしまいながら、口を開く。

「それよりもシュバルツ、ノゾムを見てみろ」

 ハヤブサに指し示されるままに、シュバルツはノゾムの方に視線を走らせる。そこで、ぎょっと、固まってしまった。

 なぜなら、ノゾム王子は
 いっぱいに涙をたたえた瞳で
 すがるようにこちらを、見つめていたからだ。

「お前、この子のこの眼差しを、振り払うのか?」

「うう…………!」

 痛いところを突かれて、シュバルツはぐっと、押し黙るしかない。
「あきらめろ、シュバルツ。乗りかかった船だ。この子の期待に、応えてやれ」
 ハヤブサの言葉に、シュバルツはがっくりと、頭を垂れる。そこで深くため息を吐いていると、ノゾムから、「あの………」と、そっと、声をかけられた。
 シュバルツが顔を上げると、ノゾムが食い入るように、縋るようにこちらを見つめている。
(参ったな………)
 シュバルツは軽く苦笑すると、ノゾムと同じ目の高さになるように、腰をかがめた。

 本当に参った。
 子どものこんな眼差しなど────抗うことが、出来なくなってしまうではないか。

「あの………貴方は………」

「何だ?」

「本当に………ドモン・カッシュの、おにいさん………です、か………?」

「ああ、そうだよ」

 シュバルツはノゾムの質問に、笑顔で答えた。
 そう────自分は確かに、『ドモン・カッシュの兄』その定義は、間違ってはいないと思う。ドモンは私のことも兄と呼び、とても慕ってくれている。でも『キョウジ本人か』と、問われれば、首をひねるしかないのだけれども。

「………………!」

 目の前でシュバルツに頷かれてノゾム少年は、感極まった表情をその面に浮かべた。全身を震わせ、喜びを露わにし出した。

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