農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 131

<<   作成日時 : 2017/07/31 14:06   >>

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「許可か………」

 ドモンが考え込む横で、ノゾム王子も何かを思案するような顔をしている。それを見たシュバルツが、少し苦笑しながらも口を開いた。
「とにかく、私はハヤブサのところに行って、事のあらましを話してくる。ドモン、ノゾム王子のことは頼んだぞ」
「分かった」
 ドモンが頷くのを確認してから、シュバルツの姿が、部屋からふっと消える。後には、ノゾム達三人が残された。

「あの、ドモン様」

 しばしの沈黙を、ノゾムの声が破る。
「どうした?」
 振り返るドモンに、ノゾムは少し逡巡してから、再び口を開いた。

「あの……。もしも、ここにドモン様が滞在して下さるのならば……お願いしたいことが、あるのですが……」

「願い?」

 きょとん、と、目をしばたたかせるドモンに、ノゾムは深く頷いていた。


「…………!」

 ノゾムの部屋で発動した『術』の気配────それは、執務室にいたリュウ・ハヤブサにも、当然の如く伝わっていた。
(何が起きているか、確かめに行くか………?)
 ハヤブサは一瞬そう考えるが、直ぐに思いとどまった。
(いや、ダメだ。ここには、ナディール姫がいる……)
 ノゾムの部屋で発動した『術』が、こちらに対する陽動の目的も、十二分にあり得る話だ。それに、ノゾムにはシュバルツとドモンがついている。あの二人が揃っていて、敵に後れをとるなど、まず、あり得ないだろう。

「………では姫様。ラナン地区への視察を行う予定で、話を進めてよろしいですか?」

 カライ内大臣の声で、ハヤブサははっと我に返る。
「ええ、お願い」
 姫がそう答えながら、手元の書類にペンを走らせている。どうやら、目の前の閣議が終わりを迎えるようであった。
(しかし……『蜘蛛』だと………?)
 書類を片付けるナディール姫を見守りながら、ハヤブサはシュバルツに言われたことを思い出していた。

 ─────キョウジが言っていた。あの姫の肩には、大きな蜘蛛が乗っていると

「………………」
 ナディール姫の護衛に着いた初めのころに、城の様子を探ろうとして、あまりにも城の中の『術』の気配が強すぎて、断念したことを思い出す。
 探るために『気』を込めて、一瞬見えたのが、『蜘蛛の糸』のイメージ。
 一人でこの城で、ナディール姫の護衛をせねばならなかったときは、最低限の蜘蛛の糸を払い、姫の安全のみを、最優先として、行動するよう心掛けてきたが─────

 今は、シュバルツも、そして、不本意ながらも、ドモン・カッシュもこの城にそろっている。こちらも戦力的には、充実してきていることになるのだ。

(仕掛けるか………?)

 ナディール姫の身体から『蜘蛛』を取り除くのは、おそらく簡単だ。だがそれは、敵方に直接打撃を与えることになり、そこから思わぬ形で術と悪意を連鎖させ、城の者たちや姫を、危険にさらすことになりかねない。
 それでもいずれはその『悪意』とも戦わねばならない。それは、紛うことなき事実であった。

「………………」

 ハヤブサがそうやって思案をしていると、いつの間にかナディール姫が、目の前に立っていた。

「ハヤブサ様、参りましょう」

 姫にそう声をかけられて、ハヤブサはおとなしく後に従うことにした。

「明後日に、ラナン地方に参ります。ハヤブサ様、ついて来てくださいますか?」

「それは構わないが」
 歩きながらハヤブサは、ナディール姫に問いかけていた。
「ナディール、一つ聞いてもいいか?」
「はい、なんでしょう?」

「ラナンというのは、そんなに大事なところなのか? お前が直接出向かねばならないほど──────」

「ええ。そうです。ハヤブサ様」

 ナディール姫は、迷わず即答していた。
「前にも少し話したと思いますけど、ラナン地方は、我が国の一番北方に位置する、大国と国境を接している地方にもなります。住んでいる住人も少数民族で、独特の文化を持って、生活しています」
 ナディール姫の話によると、その地区は、王国に属してはいるものの、自治区と表現した方が、近いという。
「レアメタルの鉱脈は、当然地区の地下にも存在しています。ですから、利害関係をめぐって、少しややこしいことになりつつあるのも、また事実で………」
 そう言うナディール姫の瞳に、深い憂いの色が宿り、ため息が唇から漏れる。

 難しい。
 国が貧しいよりは、豊かになった方が、皆が幸せになれる、と、思っていたのに。
 豊かになればなったで、どうしてこうも次々と、複雑な問題が浮かびあがってくるのだろう。

「だから私が直接行って、話し合いの場を設けたほうがいいと、思ったんです。ラナン地区の人たちを含めた王国の皆が、いい方向に足並みをそろえることができれば………それが一番、ベストなのでしょうけれど………」

「………………」
 ハヤブサは、黙して答えない。歩きながらナディール姫は、やがて笑顔になり、顔を上げた。

「さあ、早く昼食を食べねばなりませんね! 昼からの閣議に間に合わせるよう、急ぎましょう! ハヤブサ様!」

 昼食に向かう姫の足取りは、あくまでも軽やかで、とても、しっかりとしたものだった。

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