農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 戦う君に、花束を 139

<<   作成日時 : 2017/09/03 01:25   >>

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「しかし、姫様───」

 カライ内大臣は、咳ばらいをしながら、ナディール姫に問いかけていた。

「よろしいのでしょうか? イガール隊長は、いささか雑用に追われすぎているような気がしますが…………」
「そうね………」
 ナディール姫は、少し苦笑しながら答えを返す。
「でも、いいじゃない。イガールは望んで、そうしているところがあるから………」
「姫様………」
「ねぇ、カライ内大臣」
 額に縦ジワを深く刻む内大臣に、ナディール姫がそっと呼び掛けてきた。

「内大臣は……イガールが、初めてこの国にきたときのこと、覚えてる?」

「イガールがですか?」

 そう答えてから、内大臣はフム、と、あごひげに手を当てながら、思索にふけった。
 イガールは確か、この国に来る前は、傭兵をやっていたと聞く。
 ある朝、城の門の前で行き倒れていたところを、いつもの如く、城から抜け出そうとしていた、幼かったナディール姫が発見したのだ。
 ぼろぼろに傷つき、薄汚れた格好をしていた武人。普通ならば、門前払いをしていても、おかしくはなかったのに。
 姫の父であるガエリアル王は、イガールを追い払わなかった。
 それどころか、彼に食を与え、住む場所を与え、そして、仕事さえも与えたのである。

 最初は、生気のない眼差しで、淡々と仕事をこなしていたイガール。
 だがある日、イガールがものすごく嬉しそうな表情をしている事に、姫は気づくことになる。

「どうして、そんなに嬉しそうなの?」

 幼かったナディール姫は、疑問を素直にイガールに告げていた。するとイガールも、嬉しそうに答えていた。

「ここはいいです……。平和で………。人々も、微笑んでくれるし、感謝の言葉をくれる……」

「?」

 きょとん、と、した表情を浮かべる幼いナディール姫に、イガールは、優しいが、少し、苦笑気味の表情を浮かべていた。

「この世界しか知らない姫様には………想像もつかないかも知れませんね……。私が生まれ育った地域は、もっと荒んでいたんです。殺しあいが常に起こるような、紛争の絶えいない場所でした……」

 物心がついたときには、既に家もなく、両親もいなかった。
 非力な子どもである自分が、それでもこの世界で生きることを望むのならば、軍隊に入らなければならなかった。

 強くならねばならぬ。
 人よりも、抜きん出なければならぬ。

 弱い
 足手まとい
 周りから、そう烙印を押されれば、自分は直ちに切り捨てられ、その先には『死』しか待ち受けていなかった。

 生きるために、命じられるままに武器を振るった。たくさんの生命を、奪った。
 
 血と硝煙と、生命への冒涜が、自分の総てだった。

 そうではない。
 それだけが、世界の全部ではない。

 そう言って、優しく手を差し伸べてくれた人も、居たのだが。

 その存在は、ことごとく理不尽な暴力によって排除されてしまった。時には自分の手で、その人を殺さねばならなかった。

 憎しみと、暴力と、哀しみの連鎖────

 嫌になった。
 何もかもが、嫌になった。

 そんなある日、気がつけば、自分は紛争に紛れて、部隊の仲間を襲ってきた敵ごと皆殺しにしてしまっていた。

 生き残った自分は、逃げた。
 ただひたすら、逃げた。
 世界を、自分を呪いながら逃げた。

 もう嫌だ。
 消えてしまえばいい
 死んでしまえばいい────

 こうして、呪いに塗れた自分は、ユリノスティ王国の城の前で、行き倒れていた。

 そんな時、ナディール姫と、ガエリアル王に出会ったのだ。

「ここは、優しくていいところです……。何よりも、人を殺さなくてすむのがいい………。護ることを躊躇わなくてすむのが、嬉しい………」

 イガールはそう言って、優しいが、少し陰りを帯びた眼差しを湛えて、微笑む。

 幼かったナディール姫は、イガールの話を理解することは、難しすぎた。
 ただ、ナディール姫は、イガールが、何か大変な目に遭って、深く傷ついているのだろうな、と言うことを、なんとなく理解していた。
 そして、この国の人々の優しさが、彼の傷を癒すのには、必要なのだ、と、言うことも。

 人々の感謝の言葉を受けながら、優しく微笑むイガールの横顔。

 いつの間にか、自分は彼を好きになっていた。
 そう。
 これはきっと

 自分にとっては『初恋』だった。

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