農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 145

<<   作成日時 : 2017/09/30 22:48   >>

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 ラナン地区は、人口1万人。大国であるシロア国との国境沿いにある、比較的標高の高い場所にある自治区だった。自治区の北側には、シロア国との国境を守る要にもなっている、アレイド山脈が聳え立っている。
 人が住む場所からちょっと進めば、そこにはもう溶けることのない白い天然雪が、その山肌を覆っていた。
 ラナン地区の中心部にある『庁舎』に、到着した一行は、さっそく執務室に案内される。
 姫が上座に静かに歩を進めるその前に、ワヒム以下、地区の長たちが、皆畏まって頭を下げていた。

「姫様、よくお越しいただきました」

「皆、出迎えご苦労様です」

 執務室に、姫の凜とした声が響き渡る。それを聞いた姫に同行してきた兵士たちから、少しざわついた声が上がった。

「どうした?」

 それを聞きとがめたハヤブサが、兵士たちに声をかける。すると、トマスが、苦笑いをしながら問いに答えた。
「いや、あの……。姫様が、あまりにも違うから、びっくりして……」

「えっ?」

 きょとん、とするハヤブサに、別の兵士がフォローするように、口を開く。
「ああ、トマスは、まだ執務室の警護に当たったことがなかったっけ?」
「そうなんだ。俺は、ここに来てまだ、日が浅い方だからな」
「俺もそうなんだ。まだ外回りの警護しか、当たったことがなくて………」
「今回、姫様の警護に当たれたのって、本当にラッキーだよなぁ」

(そりゃあ『クジ』だからな)

 ハヤブサが、少し呆れかえるように見つめている前で、兵士たちの話はなおも続いた。
「大体、俺たちが見かける姫様は、執務から抜け出して、市場で買い食いしているのが、主だったから」
「おいしそうに飯を食って、にこにこと、楽しそうに笑っているイメージだよなぁ」
「本当に、普通のお嬢さん、って感じで」

「いや、しかし………」

 ハヤブサは、思わず口をはさんでいた。

「公式行事で、姫の姿を見ることもあるだろう? それを見たことはないのか?」

 ハヤブサの言葉に、兵士たちは各々顔を見合わせる。
「いやぁ、見たことは見たんだけど」
「すごく、遠くからだったし」
「何か、別人を見ているようでなぁ」
「『姫様っぽいな~』って感じで」

「………………!」

 ハヤブサは、兵士たちの話を聞きながら、頭を抱え込みそうになるのを懸命にこらえていた。
 確かに、姫の態度は普段から緩い感じで、黙ってその辺を歩いていたら、本当に、普通の町娘と区別がつかないほどだ。
 だが彼女も、仕事をするときはきちんとまじめに、王族の威厳と誇りを持って、誠実に職務を遂行しているはずなのだが。それが、あまり広く認知されていない状態は、いかがなものだろうか、と、思ったりもする。
 その横でハーシェルは、ただ一人、姫と区長たちの会話を、黙々と記録し続けていた。
 おそらく、カライ内大臣に報告する書類の作成も、兼ねているのだろう。

「………確かに、家畜に対する被害が、増えているようですね……」

 姫が、書類を片手に、少し難しい顔をしている。ワヒム区長も、渋い表情をしていた。
「左様です。このように、自然豊かなところです。牧畜をしている以上、多少の獣害はつきものですが、少し、数が多すぎるような気がするのです」
「我々も、対策は立てているのですが、何か、後手に回っている、というか………」
「通常の手口では、通用していないような………」

「分かりました」

 姫は頷きながら、手元の書類を少し整理する。

「その件については、あとで現地を視察しましょう。そのうえで、もう一度皆と話し合えば、有効な対策が立てられるかもしれません」

「了解しました」
 姫の言葉に、皆が一様に頭を下げる。

「それと、もう一つ。備蓄してある食糧庫で、盗難騒ぎが─────」

「少し、待ってください。ワヒム様」
 ワヒム区長の言葉を遮るように、姫が口を開く。

「それよりも先に、話し合わねばならないことがあります」

「話し合い……何でござろうか?」
 姫の言葉に、ワヒムは少し眉を顰める。『食料の盗難』以上に、話し合うべき重要課題があるのだろうか、と、思ったからだ。
 しかし、ワヒム自身もまた、姫が持ってきた話の重要性に、息を呑むこととなった。

「調査団のことです」

「調査団?」

「少し前に、地下のレアメタル鉱脈のことを調査するために、この地に調査団を派遣する、と、カライ内大臣からこちらに、連絡があったはずです」

「そういえば………」
 ワヒムはふむ、と、頷いてから、口を開いた。
「確かに数日前、カライ殿から連絡を受けておりますな。それが、どうかされたのですか?」

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