農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 141

<<   作成日時 : 2017/09/13 15:12   >>

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 シュバルツは、いつか自分もそのような存在に堕ちてしまうことを、とても恐れていた。だから、ハヤブサの、シュバルツに対する『想い』を知った時、彼は最初、必死に逃げようとした。

「駄目だ!! お前に、DG細胞が感染してしまったら、どうするんだ!!」

 捕まえて、彼を犯そうとしたときに、彼のヒトの口から出てきた言葉は、ただひたすらにこちらを案ずる、けなげな言葉。

 そんなお前だから
 そんなお前だから、俺は────

 彼とともに、生きたいと思った。
 彼のそばに、寄り添いたいと、願った。

 たとえ、共に死ねずとも
 たとえ、彼と共有できる時間が、刹那の一瞬だったとしても─────

 自分の存在が、彼の孤独を癒す一助になれたのなら

 それだけで、自分の人生は、もう充分豊かに彩られると思った。

 きっと、そこに『後悔』はない。
 『後悔』だけは、無いのだ。

(不思議だよなぁ……。こんな気持ち、きっと、シュバルツと出会わなければ、俺は知らないままだったなんて………)

 ふっと、小さく苦笑しながらハヤブサは思う。

 後悔─────
 そう、後悔だけは、してほしくなかった。ナディール姫にも、イガールにも。
 難しいことでは、あるかもしれないが。

「さあ、イガールにもノゾムにも、今の閣議で決定したことを、伝えなくてはね」

 姫は屈託なく笑いながら、手元の書類を片付けていた。


 こうして、姫とハヤブサは、数人のお供をつけて、ラナン地方に旅立つこととなった。

「姫様……! 私もお供致します!」

 姫に留守居役を申し渡されたとき、イガールは珍しく、強い口調で姫の供につくことを願い出ていた。しかし、姫はそれを、やんわりと断っていた。

「いいえ。イガールには、留守をお願い致します」

「姫様……!」

 呆然とした表情を浮かべるイガールに、ナディール姫は優しく微笑みかけていた。

「イガール……。貴方には、この城の守りと、ノゾムのことをお願いしたいのです」

「……………!」

「数日のこととは言え、ノゾムは『王代理』を努めます。しかし、ノゾムはまだ年若い……。しっかりとした支えが、必要なのです」

「そうかも知れませんが……」

 イガールの額に、少し縦皺が刻まれていた。彼が、この命に承服しかねているのが、伝わってきていた。
「姫様………! ラナン地区での姫様の身の安全は、誰が守るのです!?」

「心配要りません。私には、ハヤブサ様がついて下さっています」

「…………!」

「最強の護衛が、私を護って下さるのです。何も心配する必要はありません」
 そう言って、姫はにこりと微笑む。イガールは、酷く複雑な顔をしていた。
(その複雑な表情の、意味するところは何だ?)
 ハヤブサはそう考えながら、イガールを見つめるのだが、当然、彼にイガールの心情総てを、読み解けるわけでもなく。

「…………分かりました、姫様」

 畏まるイガール。姫は、優しく微笑みかけていた。

「イガール……。貴方は、城の皆や、町の人たちに頼りにされているのだから、留守居役を、どうかよろしくね」

「はっ」

「………………」
 ハヤブサはその光景を、何とも言えない気持ちをまとわりつかせながら、見つめていた。
 確かに、相手のことを思いやる、と言う行為は、大事なことだ。だが、何か────ナディール姫の、イガールに対する思いやりは、どことなく空回っているように見えるのは、気のせいだろうか。

 シュバルツが、自分のことを思いやってくれるのは、とても嬉しい。
 だが、思いやりが過ぎて────彼が全く、自分のことを頼ってくれなくなってしまったら、自分は、どう思うだろう。

(ハヤブサ……。私のことはいいから、お前は、自分のことを優先してくれ……)

 そんなことを愛おしいヒトから言われたら、腹立たしさと情けなさが相俟って、泣いてしまいそうになってしまう。
 その気遣いは、嬉しくなどない。
 むしろ哀しい。
 シュバルツ、お前にとって俺は、そんなにも頼るに値しない存在なのかと、首根っこをひっつかんで、怒鳴りつけたくなってしまうだろう。

 頼らない、と言うこともまた、相当に残酷だ。
 頼って欲しい、と、相手が願っているのならば、なおさら。

 姫はその辺り、どう考えているのだろう。
 このイガールの表情は────

(あいつの気持ちが、全くわからんのだよなぁ……。せめて、あいつとゆっくり話す機会があれば………)

 ここまで考えてから、ハヤブサは、軽くため息を吐く。

 これ以上、2人の関係に踏み込むのは、明らかに、自分の『任務』の範疇を越えている。それこそ、『野暮』というものだろう。

「ハヤブサ様、行きましょう」

「分かった」

 姫に呼び掛けられたハヤブサは、顔を上げ、彼女の後に続いた。
 あとには、礼をして二人を見送る、イガールと内大臣が、残されていた。


 こうして、ナディール姫は城から旅立ち、ノゾム王子が、その間の代理を務めることとなり、現在に至る。
 ドモン・カッシュがノゾム王子のそばで面倒を見る、ということに、ハヤブサは、幾何かの不安を感じないでもなかったが、シュバルツが時々様子を見てくれるようなので、特に心配する必要もないだろう。
 これで、心おきなく、ラナン地区までの汽車の旅を………。
 汽車の旅を………
 汽車の旅?

「おい」

 ハヤブサは、窓際の席に座って、外を見つめているナディール姫に、思わず声をかけていた。

「ん?」

 振り返った姫の口には、口いっぱいにパンが頬張られていた。

「ふぁんは、ほようでふふぁ? はやうははま(何か御用ですか? ハヤブサ様)」

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