農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 147

<<   作成日時 : 2017/10/05 23:02   >>

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 見ると、トマスの顔色が、白くなってしまっているのが分かる。
「大丈夫ですか!?」
 姫が、はっと、弾かれたように立ち上がる。それを見て、トマスの方が、慌てて首を横に振った。
「いえ、姫様! 俺は大丈夫です! ただ………」

「ただ………?」

 問い返す姫に、トマスは懸命に笑顔を向けた。

「ただ、俺も、その調査団の任務に、就く可能性があったんだ……。それを思うと………」

「そうですか………」

 姫は、少し眉を顰めると、小さくため息を吐きながら、席に座りなおした。

「では姫様。我らのそのほかの訴えは、その書類にまとめています。目を通しておいてください」

 ワヒムの言葉に、姫も「分かりました」と、姫も短く答える。そのあと、もう少し、諸々の話し合いが続いた。
 その後ろで、トマスのそばにいた兵士が、彼に声をかけていた。

「おい、トマス」
「何だよ」

「お前が、調査団の任務に就く可能性があったって………」

「ああ………」

「どういうことか、聞いてもいいか?」

 トマスはその問いに頷くと、口を開いた。

「おれは、『新入り』だと話しただろう? ここに来て、まだそんなに日が経っていないんだ」

 自分は、いわゆる自国の内戦のごたごたから逃れてきた、避難民だった。家族ともはぐれ、独り、この国に流れてきていた。
(これからどうしよう………)
 途方に暮れていたトマスの前に、城の警護団募集の張り紙が。
 指定された場所に行くと、結構な人だかりがあった。警護団募集の報せに集まってきた人々のようであるが、自分と似たような境遇の人間が、それなりにいる、と、トマスは感じていた。
(最近は、どこも物騒だからなぁ……。この国のように、平和に暮らせていることの方が、実は結構稀な例なのかもしれない……)
 軽い面接と、簡単な書類の提出だけで、あっさり警護団に入隊できたので、少し拍子抜けした。自分は、身元を保証してくれる人がいない、いわば浮浪者も同然の身であったから、雇われることは難しいだろう、と、考えていたからだ。

「ここの隊長の、イガール・ジェスティ殿も、この国に流浪してきた人らしいから、そういうところにこだわりはないのかもしれないぜ」

「やっぱり、あの噂は本当だったんだな……。この国は、難民に優しいって」

「俺も、落ち着いたら、故郷から家族を呼び寄せようかな……」

 自分と同期に警護団の団員になった者たちが、そう話しているのを、トマスは聞いた。
 自分と似たような境遇の人たちが多かったことに、トマスは胸をなでおろすと同時に、複雑な気持ちにも襲われていた。
 皆、寄る辺もなく、ここに流れ着いてきた人たちなのだ。
 どうして、世界はこんなにも『平和』ではないのであろう。

「そんなときに、調査団の話が隊長から持ち込まれたんだ……。何でも、採用と、昇進試験も兼ねているからって、選ばれたのは、ほとんどが、俺と同期の人たちだったんだ……」

 自分が選ばれなかったのは、単に調査団に入れる人数の限界値の問題で、運もなかっただけだ、と、トマスは思った。
 ただ、調査団に入れなかった、ということで、悲観する気にはなれなかった。
 自分は、全くの独り身で、護るべき家族もない。出世を急ぐ必要は、これっぽっちもなかったのだから。

「残念だったな。お前にも、土産を買ってきてやるよ」

 知り合って、少し意気投合したばかりの男が、少し残念そうに笑いながら、握手を求めてくる。
「ああ、よろしくな」
 トマスも笑って、握手を返して、その男と別れた。自分は、その後城の外回りの任務を命じられていた。
 そして、モガールとともに、街歩きに出ていたナディール姫とともに騒動に巻き込まれたりしながら、今に至るというわけだった。

「……調査隊が行方不明、と、言うことは、あいつも、それに巻き込まれたんだろうか……。それが、ちょっと、気になって………」

「そうか………」
 トマスの話を聞いていた兵士たちが皆、何とも複雑な面持ちになっていた。
「大変だったな………」
「調査団の人たち、無事だといいな……」
 各々が、トマスにそう声をかける。トマスも、「ありがとう」と、穏やかに礼を言っていた。

「………………」

 ハヤブサは、少し離れたところから、兵士たちの話を聞き続けていた。龍の忍者の優れた聴力は、兵士たちの会話を、余すところなく捉えていたのである。
(………それにしても、調査団の構成メンバーが、少し気になるな………)
 トマスの話を聞きながら、ハヤブサは、軽い違和感を覚えていた。
 彼の話を整理すると、今回のレアメタル鉱脈の調査団は、城に来て、まだ日の浅い兵士たちを中心に選ばれているようである。
 しかし、それは何故なのだろう。
 この国にとって、レアメタルの鉱脈、というのは、何物にも代え難い、重要事項のはずだ。
 それを、その調査を─────入隊して日が浅い兵士たちに、やらせるものなのだろうか。

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