農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 149

<<   作成日時 : 2017/10/12 22:52  

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 不思議だ。
 この人には、王家や国に対する『忠誠心』は、無いというのに。
 それでも彼を、自分が信じることができるのは、一体どうしてなのだろう。

(……きっと、この人が、『自分の信念』を貫き続けていることを知っていて、私はそれを、『信じる』ことができるから、なのだわ)

 皮肉なものだ。
 上に立つ者として、一番信じる寄る辺となるべき『忠義心』が、実は、それほど『信』が置けないものなのだ、と、悟らされる格好になるなんて。

「…………………」

 姫は大きく、一つ息を吐いた。

(大丈夫、落ち着け)

 ここでの安全は、保障されている。龍の忍者が、何があっても、私を守ってくれるだろう。

 きっと、見極めなければならないのだ。
 目の前にいる相手が、本当に、信じるに足る相手なのかどうか。
『王家』という特権やフィルターを通さずに、見ていく必要がある。
 もっと、その人の、根本的な部分を、だ。

「ありがとうございます、ハヤブサ様………」

「礼を言われる筋合いはない」

 姫の言葉に、龍の忍者はぶっきらぼうに答える。それでも姫は礼を言った。いや、礼を言うべきだと思った。彼の存在があるおかげで今宵は─────

 安心して、眠りにつけそうだったから。

「休みます」

 ナディール姫は、静かに身をひるがえして、部屋に入っていく。
「ああ、ゆっくり休め」
 ハヤブサの言葉に、姫は微笑みながら頷いた。

「…………………」

 姫が部屋に入ってから、ハヤブサはふっと、一つため息を吐く。
 前途はあまり、はかばかしくない。きっと、姫には、大きな試練が待っていることだろう。
 そしてそれが終われば、彼女は王位に就く。

 そうなることで、何物にも犯しがたい、神聖な存在となる姫は、身の安全は半永久的に保障されることになる。自分もそこで、めでたくお役御免だろう。

 ただ、彼女個人の『幸せ』を、考えるのであるならば─────

「………………」

 夜なのに、万年雪をたたえている山肌が、青白く光っている。
 風が刺すように冷たいのは、ここの標高が高いせいだけではないだろう。

 考えても仕方ないことを、考えようとしている。
 自分にそう言い聞かせて、吹っ切ろうとしているのだが、なかなかにうまくいかなかった。

 龍の忍者にとって、まんじりともせず明けぬ夜は、まだしばらく続きそうであった。


  「第7章」

 翌朝。
 天気は快晴。
 いつもの姫であるならば、その景色に喜びの声を上げ、朝の空気の中、元気よく飛び出していたことであろう。
 しかし、ナディール姫は今、とてもそのようなことをする気にはなれなかった。
 調査団を取り巻く一連の出来事が、彼女の胸に、重くのしかかっていたのである。

(いったいどうして……。何が起こっているというの……)

 姫は問いかけ続けるのだが、当然のごとく、それに対する明確な答えが、帰ってくるわけもない。
 それを今から調べて、その中に潜む『真実』に近づいて行かねばならない─────それが、今、自分に課せられている『使命』だった。

 せめて、レアメタルの調査団の人たちの無事を、祈らずにはいられない。

 いくら、この国に流れてきて、日の浅い人、身寄りのない人たちだけで構成されていた、と、言うものであったとしても、それで、その人たちの安否を、おろそかにしていい、ということは決してない。
 皆がそれぞれにそれぞれの事情を抱え、悲しみや苦しみを背負いながらも、やっとこの国に流れてきたのであるならば───受け入れる側の国としても、その人たちの幸せの手助けをする義務が、生じているはずなのだ。

 調査団の人たちが生きているのならば、速やかに救助せねばならない。そして、事情を聴いて───

(うん………。よし………!)

 姫は、一つ深呼吸をした。
 とにかく自分は、できることを一つずつ、片づけていくしかないのだ。

 その時、部屋のドアを、何者かが「コンコン」と、ノックする音がした。

「はい」

 一瞬、身を硬くして、それでも在室の返事をする姫。だが、外から聞こえてきた「開けてもいいか?」と、問いかけてきた龍の忍者の声に、肩の力が一気に抜けるのを感じた。
「どうぞ」
 許可を出すと、ドアが静かに開く。ハヤブサの姿を認めた時、姫は、ホッと、小さく一つ息を吐いていた。

「少しは、眠れたか?」

 色素の薄いグリーンの瞳が、少し案ずる色をたたえながら、こちらをまっすぐ見つめてくる。姫は、少し、嬉しい心持を感じていた。それは、恋人以外には不愛想な龍の忍者が、根源的に持つ『優しさ』の一部を、垣間見ることができたからかもしれなかった。

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