農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 115 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/10/17 02:08   >>

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「汝(なれ)の腕、人間にしては見事――――。もう少し深く踏み込まれておったなら、吾は骸になっていたかもしれぬ」
 そう言いながら素戔鳴は、己が斬られた部位を撫でさする。浅いとはいえ、それなりにダメージはあったようだ。
「大技を放った後は、必ず隙が出来るものだ……」
 そう言いながらハヤブサは、己が顔を覆っている覆面を外す。相手に最期の礼をつくす意味合いもあるが、それよりももっと――――相手の『油断』を誘うつもりで、ハヤブサはそれをしていた。

 そう。
 ハヤブサは、まだあきらめてはいなかったのだ。
 素戔鳴に、ダメージを与える事を――――。

 自分が、もう死ぬのは分かっている。その運命を、今更覆そうとは望んでいない。
 ただ、まだ立って歩ける素戔鳴。お前をそのままにしておけば――――
 お前は、村人たちを――――シュバルツを、また追って行ってしまうだろう?

 させない。
 そんな事は。
 俺は、シュバルツを守りたい。
 それが叶うのであるならば――――何だってする。

「あの雷の多段攻撃の後、風雨を呼ぶ時――――お前は、割と隙だらけになる。そんな状態であると言うのに、『神』特有の、その間一切の攻撃を受け付けない守りを、その身につけているという訳でもない………」
 だから、俺が放った普通の攻撃でも、あの瞬間なら割とお前に入るんだ、と、話すハヤブサに、素戔鳴は、ほう、と、少し感心した様な声を上げた。
「大したものよ……。未だ年端もいかぬ若造の様であるのに――――」
「…………」
 素戔鳴の言葉に、ハヤブサは穏やかな笑みを浮かべる。
 素戔鳴に感心されて満足したかのように見えたが、そうではない。彼はこの時、全く別の事を考えていた。

(今なら、言えるかな)
 死の運命を目前にして、ハヤブサは愛おしいヒトに想いを馳せる。
 今なら
 今なら――――言ってやれるかもしれない。
 シュバルツに。

「もう、俺の事など忘れて、自由に生きろ」と……。

 今なら、俺から彼の手を、離してやれるかもしれないんだ。

(ああ、でも、伝える術がないな)
 そう感じて、ハヤブサは少し苦笑してしまう。
 元の世界であったならば、ここに隼を呼んで来て――――最期の手紙を託す事が出来ただろうに。
(まあ、今の状況では――――それすら、させてはもらえないだろうがな……)
 素戔鳴と、仙界軍に囲まれたこの状況。
 手紙を託す事はおろか、そんな手紙を書くことすら、許してはもらえないだろう。
 何せ、今の自分は謂わば『罪人』
 素戔鳴に、『裁き』を受ける立場の人間であるのだから。
 事の正邪はどうであれ、俺は目の前の『神』であるこいつを既に怒らせすぎている。もしも殺されるのならば――――もう、骨すら残してもらえないほどのダメージを、与えられる事になるだろう。

 良いだろう。
 それこそ、望むところだ。
『遺体』さえ発見する事が出来なければ――――
 シュバルツもそのうち、俺をあきらめる事が出来るだろう。

 シュバルツ。
 シュバルツ。

 今、一番会いたいヒト。
 でも、一番会ってはいけないヒト。
 ここには来るなシュバルツ。
 俺は、お前に助けられる事など――――決して望みはしないから。

 ただ、許されるのならば最後に――――
 もう一度、その肌に触れたかった。
 分かっている。
 それこそ、贅沢な望みだ。

 愛している。
 最期の瞬間まで。
 俺が、お前を想い続けてしまう事だけは――――
 どうか、許して欲しい。

「良い表情だ……。覚悟は、出来たか?」
 穏やかな笑みを浮かべ続けるハヤブサに、素戔鳴は、死への覚悟が整ったものと受け取る。素戔鳴の手の内で、天叢雲の剣がきらりと光った。
「……………」
 だがハヤブサは、その問いかけには黙して答えない。

 愚問だ。
『死への覚悟』など――――とっくに出来ている。
 ただし――――貴様も道連れだ。

 さあ、寄って来い。
 もっと近くに寄って来い。
 こんな事もあろうかと、自爆するつもりで身体に仕込んだ火薬。これが、役に立つ時が来た。
 殺せないまでも――――この戦場から撤退せざるを得ないほどのダメージを、最期にお前にくれてやるから。
 準備は既に整っている。後は、手元にある発火布に、刺激を与えて火を起こすだけ。爆発まで、1秒とかからないだろう。
 だから、そのままもっと――――近寄って来い。

「人の子にしては、汝はよく戦った。その闘志に敬意を表し、吾直々に――――貴様に引導を渡してやろう……」

 そう言いながら、黒褐色の肌をした仁王が、ハヤブサの目の前に立ちはだかる。それでも、ハヤブサの穏やかな表情は変わらない。ただ、この景色が、自分がこの世で見る最後の風景なのだとハヤブサは思った。

 もういい。
 もう充分だ。
 シュバルツ。
 お前を守って、死ねるのなら――――

 素戔鳴が、天叢雲の剣を最上段に振りかぶる姿が見える。ハヤブサはただ、静かに目を閉じた――――

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