農家の嫁の日記

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 109 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/10/08 23:07   >>

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「貴方の考えは……変わらないのね。分かったわ……!」
 甲斐姫は、自分の得物である金拵(きんこしら)えの『浪切』と呼ばれる形状の剣を、ジャッと、音を立てて構える。この剣は鞭状になっていて、伸縮自在の独特の動きをする武器であった。
「だけど、私の考えも変わらない。……はっきり言うわ。ハヤブサさんは、貴方が自分を助けに来る事など望んではいない。そして、貴方は『独り』でハヤブサさんを助けに行くべきではない。どうしても行きたいと言うのであるならば……少なくとも援軍を待って、皆で一緒に行くべきだわ」
「確かにそうだ。理屈で言うならば、君の言っている事は正しい――――」
 甲斐姫にそう答えを返しながらもシュバルツは、ハヤブサの瞳に宿っていた悲壮な光が気になっていた。
 あれは、死を覚悟していた者の光だ。
 戦いに赴くにあたって、自分達戦士は多かれ少なかれ、『死』は覚悟する物だ。しかし、あのハヤブサの瞳に宿っていた光は、酷く色濃かった。はっきりと、自分の『死』を意識していると分かった。そして、本来の歴史であれば、そこは私が命を落とした戦場――――

 ならば、死ぬべきは私で、ハヤブサではない。
 犠牲の肩代わりなど――――させてはいけないのだ。

「だが……私は行く。済まないが、援軍を待っていたのでは、間に合わない」
 これは、シュバルツの中の確信だった。ハヤブサは今――――恐ろしい難敵と当たっていて、酷く苦戦していると、感じ取っていた。
「そう………」
 甲斐姫は小さく息を吐くと、鋭い眼差しをシュバルツに向けてきた。
「でも……『分かったわ。行ってらっしゃい』と、私も言う訳にはいかないのよ」
 ジャッ! と音を立てて、甲斐姫の意志を乗せた金拵えの浪切が、シュバルツに向かって動く。
「だって、約束したから……! ハヤブサさんと――――」
「約束?」
 怪訝そうに眉をひそめるシュバルツに、甲斐姫の鋭い声が飛ぶ。

「『必ず、貴方を助ける』って………!」

「―――――!」
「その『約束』を交わした以上、私は絶対に、それを違える訳にはいかないの」

 そう。
 ハヤブサさんはこの戦場に来る時、私に手を伸ばしてくれた。他にも頼れる仲間がいたと言うのに――――。
 私は『悲劇は嫌だ』と、子供じみた声を上げただけ。それをあの人は馬鹿にしたり失笑したりせず、それを拾い上げてくれた。「礼のつもり―――」そう言って、手を差し伸べてくれた。
 嬉しかった。
 だから、そんなハヤブサの願いを叶えたい、と、願う。
 例え、どんな手段を使おうとも――――
「だから止めるわ。貴方を……。どんな事をしてでも」
 そう言いながら甲斐姫はずい、と、前に進み出る。
 自分が理解している限り、目の前に居るシュバルツと言う人は、おそらく特異体質を持っている。自分が少々怪我をしても、それが治ってしまうのだ。
 そして、あの人に完全に止めを刺せるのは、おそらく神仙の力を持つ者だけ。素戔鳴は、まさしくそれに該当する。それ以外の者がこのシュバルツに攻撃を加えても、この人にとってはさして問題にはならないのだ。何せ、『治せる』のだから。
「悪いけど、貴方の腕一本脚一本――――もらうつもりで、止めるわよ!」
 その言葉が終わると同時に、甲斐姫から凄まじい殺気が放たれる。
(治せるのだから、問題ないでしょ?)
 浪切を構える彼女から、そう言う『心の声』が聞こえてきた。
「…………!」
 本気だ、と、シュバルツは思った。
 本気で彼女は、自分に勝負を挑んで来ている。
「そうか……」
 シュバルツはしばらくそんな彼女を静かに見つめていたが、やがて意を決したように頷いた。

「いいだろう。この勝負、受けて立とう」

 その言葉を受けて、甲斐姫は身構える。だがシュバルツの方は微動だにしない。ただ静かに――――そこに佇んでいるだけだ。
「…………!」
 しかしシュバルツのその姿に、甲斐姫は逆に歯を食いしばった。シュバルツはただ棒立ちに立っているだけの様であるのに、その姿からはなかなか隙が見いだせなかったからだ。
(できる……! やはり―――この人は強い………!)
 浪切を握る手に、ジワリと汗が滲み出てくる。しかしここで引く訳にはいかない。甲斐姫は気を取り直した。

 負けるもんか……!
 ここでこの人を行かせてしまったら、絶対に私は死ぬほど後悔してしまいそうな気がする。
 だから絶対に
 負けるもんか―――――!

 二人の間を、ひゅう、と風が吹き抜ける。
 カサ、と、音を立てて木の葉が二人の間の地面に落ちた瞬間――――甲斐姫が動いた。

「やああああああっ!!」

 甲斐姫の意志が、彼女の手を通して浪切に伝わる。金拵えの鞭状の刃が、命を宿したようにうねり始めた。ジャッ!! と、音を立てて、浪切がシュバルツの足を食い千切ろうとした刹那。

 ガンッ!! 

 甲斐姫の手を激しい痛みが襲い、彼女の手から浪切が、はるか上空へと奪われてしまう。
 武器を失い、無防備になった彼女に、尚もシュバルツが間合いを詰めてくる。
(斬られる――――!)
 そう感じた彼女が、身を固くした瞬間。

 ふわり、と、いきなり彼女の身体が優しく抱きしめられた。

「――――!?」
 瞬間、何が起こったのが理解できずに混乱する彼女の耳元で、シュバルツが小さく囁いた。

「ありがとう………」

 それだけを言い置くと、シュバルツは甲斐姫の身体からするり、と、手をほどいて――――森の奥へと独り、消えて行ったのだった。

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