農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 125 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/11/01 16:40   >>

驚いた ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0


 だが、これは賭けだ。
 危険な賭け――――
 これをやったからと言って、シュバルツを100%守れると言う保証はない。下手をしたら、自分ともども、共倒れになってしまう可能性もある。
 しかし素戔鳴に斬られてしまったら、シュバルツは本当に終わりだ。粉々に砕け散って、確実にこの世から消滅してしまう。だが今思いついた方法をとれば、シュバルツの死の可能性が限りなく100%ではなくなるのだ。

 ならば、やらねば。
 ぐずぐずしている暇はない。早くしなければ素戔鳴がシュバルツを斬ってしまう。それだけは何としても阻止したい。
(動け……!)
 ハヤブサは、自分の四肢に鞭うつ。

 頼む、俺の身体……!
 後少しでいい。動いてくれ――――!

 カタン、と、シュバルツが刀を置く気配がする。
 そのまま彼は、ハヤブサの横から立ちあがると、素戔鳴に向かって歩を進め出した。
「………もう、良いのか?」
 こちらの出した条件をあっさりと飲んだシュバルツを、少し意外に思いながらも素戔鳴は彼に声をかける。それに対して、シュバルツはただ静かに頷いた。
「ああ。もう、別れは済んだ」
「そうか………」
 チャキッ、と、音を立てて天叢雲の剣を構えながら、素戔鳴は目の前の青年を検分する。
 この青年は今から死ぬと言う身であるのに、その瞳は静かに澄み渡り、恐れの色も迷いの色も浮かんでいない。こちらの視線から、瞳を逸らす事も無い。死に向かうその姿勢は、全く持って見事としか言いようがなかった。
「……………」
(『個人』として見るならば、この青年は全く善良であろうに……な)
 ハヤブサのために、村人たちのために、その身を潔く投げだす青年。その行動からは『邪悪』の気配が全く感じられない。これが普通の『人の子』であったなら、素戔鳴も素直に感嘆し、好意を持てた事であっただろう。ハヤブサがこの青年を懸命に守ろうとした、その気持ちを少し、理解する。
 しかし、シュバルツの身体を構成している物に潜む『悪』の気配が、素戔鳴の『軍神』としての部分を刺激していた。やはりこれは、滅さなければならないものだと強く思う。
「……潔くその身を差し出した汝に免じて、せめて苦しませずに、あの世へ送ってやろう」
「…………」
 最後通牒を出し、剣を振りかぶる。しかし、目の前の青年の穏やかな気配は変わらない。
(惜しいな………)
 ちらりと湧いた感情を、すぐに打ち消す。命を砕く覚悟を、その剣に伝えた。

「死ね」

 その言葉と共に素戔鳴は剣を振り下ろす――――はずであった。
 だがそれをする前に、シュバルツの背後から手が伸びてきて、いきなり彼を背後に引き倒していた。
「な―――――!」
 驚愕したシュバルツの視界に飛び込んできたのは、引き倒した自分の上に馬乗りになる龍の忍者の姿であったから、シュバルツは更に驚いてしまう。
「ハヤブサ!?」
「―――――!?」
 2人が息を飲む気配を感じ取りながら、ハヤブサはシュバルツの上に乗って抑え込む。
「う………ッ!」
 手足に力を込めると身体中に激痛が走り、シュバルツの上に血が滴り落ちた。
「ハヤブサ!? 何をしている!? 離せ!!」
「………嫌だっ!」
「ハヤブサ……ッ!」
 シュバルツはハヤブサの身体の下から逃れようと、手足に力を込める。しかしどうした事か――――瀕死の筈のハヤブサの抑え込む力は凄まじくて、それを振り払う事が出来ない。
「ううっ………!」
 だが痛みは堪えられないのだろう。ハヤブサの口から呻き声が漏れ、滴り落ちる血は止まらない。しかしそれでも龍の忍者は頑なにシュバルツを抑え込み続けた。まるで、「死んでも離すものか」とでも、言わんばかりに
(何故だ……! ハヤブサ………!)
 自分が足掻けば足掻くほど、ハヤブサを苦しめるだけだと悟ってしまったシュバルツは、抵抗できなくなってしまった。フッと手足の力を緩めると、ハヤブサの面に少しの笑みが浮かんだ。

「―――ハヤブサよ。これは一体何の真似だ?」

 自分の裁きに横槍を入れられた格好になった素戔鳴が、不快感をあらわにしながら忍者二人を見下ろしている。
「……済まない。無礼は詫びる。だが……後生だ……! もう少しだけ、時間をくれ……!」
 顔を上げ、必死に頼み込むように素戔鳴を見つめる龍の忍者。
「今更、こ奴の命乞いなどは――――」
「今更、『助けてくれ』などとは言わない……! シュバルツの命乞いも、しようとは思わない……!」
「ならばなぜ、このような事を?」
「彼と……末期の話がしたい……!」
「何?」
 その言葉に、素戔鳴は少し眉をひそめた。
「シュバルツの方は、話は済んだと言っていたが?」
「俺の方の話が、まだ済んでいない――――」
 肩で苦しそうに息をしながら、ハヤブサは必死に懇願した。
「お願いだ! 少しでいいんだ……! 彼と話す時間をくれ……! もう死に向かう身なれば、それぐらいの情けはあってもいいはずだ……!」

「……………」

 素戔鳴は推し量る様に、二人の様子を無言で見つめていたが、やがて、構えていた天叢雲の剣を下に下ろした。
「よかろう……。少しの間、待ってやる」
 そう言うと素戔鳴は2、3歩下がって、二人から少し距離を開けた。それを見たハヤブサは「感謝する」と、軽く頭を下げた。
 それをしてからハヤブサは、腹の下の愛おしいヒトの方へと向き直る。
「ハヤブサ……」
 こちらの名を呼びながら見つめてくるシュバルツの瞳には、こちらを案じる色しか浮かんでいない。これから殺されると言うのに、最後まで優しさを失わないシュバルツ。愛おしさが、溢れてしまう。
「シュバルツ……」
 想いを込めて、その頬を優しく撫でる。それをしながらハヤブサは、シュバルツにそっと語りかけた。
「シュバルツ……頼みがある」
「何だ?」


「俺と一緒に……死んでくれないか?」


「―――――えっ……?」

 何か聞いてはいけない、不吉な言葉を聞いた様な気がして、シュバルツは思わずハヤブサを凝視してしまう。
「な……何を……」
「俺と一緒に、死んでくれないか、シュバルツ」
 腹の下で震える愛おしいヒトに確認するように、ハヤブサはもう一度言った。
「何を、言っているんだ……? お前は――――!」
 こちらの言っている事を理解したシュバルツの顔色が、見る見るうちに変わって行く。
「シュバルツ……」
「何を馬鹿な事を言っているんだ!? ハヤブサ!! 駄目だ!!」
 案の定シュバルツは怒りだした。当然だ。自分の身はとことん顧みない奴だが、『命』の重みと大切さをよく理解している。今だってそうだ。俺の命を救うためなら、自分の身がどうなっても構わないと、本気で思ってくれている。
 だけど俺だってそうだ。シュバルツを救うためなら、自分の身はどうなってもいい―――そう、思っている。そこは、譲る事が出来なかった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
驚いた
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

されど、龍は手を伸ばす。 125 ――無双OROCHI異聞録――― 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる