農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 157 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/12/14 12:34   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

「助かります」
 ハヤブサは長老の言葉に丁寧に頭を下げる。この『土地神』からは、今のところ不吉な物を感じる訳ではなかったが、物が『御神体』なだけに、不用意にそれを傷つける事を、ハヤブサは何としても避けたいと思った。『神の呪い』とは、時に理不尽な物である。御神体が傷つけられた事によって、その呪いが自分に牙を剝く分には一向に構いはしなかったが、万が一シュバルツにそれが向いてしまったら。
 それを考えると、背筋に寒気が走る。
 いろいろとお膳立てをしてくれた太公望のためにもシュバルツのためにも、不確定的な危険な要素は少しでも減らしておきたい、と、ハヤブサは考えていた。
 シュバルツはそれを複雑な気持ちでそのやり取りを見守る。そこに、武装した妖魔の一団がやってきた。
「長老殿! シュバルツ殿!」
「――――!」
 妖魔たちが手にする黒光りする武器に、一瞬反応してしまうハヤブサ。だが、ここが村の中であると言う事と、額に挿してある鳥の羽根で、彼らが味方だと知って構えを解いた。本当に、咄嗟に敵味方の区別がつくと言う事は、素直にありがたかった。
「長老殿……シュバルツ殿……。このたびは、我らの同族が――――本当に、申し訳ない!」
「ちくしょう! 百々目鬼の奴め……!」
 長老たちの傍に着くなり、妖魔たちは次々とわびの言葉を言いながら頭を下げる。それに対して長老とシュバルツは、慌てて妖魔たちが詫びるのを止めさせようとしていた。
「どうかお手を上げてくだされ。そなた達のせいではない」
「しかし――――! シュバルツ殿のおかげで一時期は大人しくなっていた奴らなのに………!」
「百々目鬼軍の後ろ盾を得た途端、急にまた暴れ出しやがって――――!」
「こちらの村まで襲おうだなんてとんでもない野郎だ!! 畜生! 返り討ちにしてやる――――!」

「『お前のおかげ』って……戦ったりしたのか?」

 ハヤブサの問いかけにシュバルツは頷く。
「ああ。妖魔と人間が交流する事に、異を唱えてくる者などいくらでもいる。話し合いが通用する相手ならばよかったのだが、そうではない相手も居たからな……。やむを得ず」
「この人凄ぇんだぜ!! 向かってくる相手を1人も殺さずに撃退して――――!」
「あんな戦い方もあるんだなぁ。俺たち、感心しちまってたよ」
「あれは私1人の力ではない。貴方がたが協力してくれたからこそだ」
 妖魔たちの言葉に、シュバルツは少し難しい顔をして答える。
「だが……今となっては考えてしまうな……。『これでよかったのだろうか』と……」
 そう言うシュバルツの面に、自嘲的な笑みが浮かんだ。

 シュバルツが嫌がらせをしてくる他の部族の妖魔たちを1人も殺さずに撃退し続けたのは、ひとえに対話の窓を閉ざしたくないからであった。妖魔の村の長も対話を望んでいたし、1人でも殺してしまったら禍根を残してしまう。それに、嫌がらせや襲撃もエスカレートするのではないかと考えたからだ。
 もちろん、この村の妖魔たちの大半は、自分のやり方に賛同してくれていたが、中には「甘すぎる」と言ってくる者たちも居た。

 ―――そんな生易しい戦い方をしているから、奴ら図に乗ってくるんですせ!
 ―――あんな奴ら、一度本格的に叩きのめした方がいい。こちらがいくら話しても、分かってもはらえないのだから――――

 その意見に対してシュバルツも懸命に説得し続けた。

 ―――それでも、1人でも殺してしまえば総てが終わりだ。対話の窓は閉ざされ、貴方がたの平和を望む気持ちも、相手には完全に伝わらなくなってしまう。
 ―――お願いだ……! もう少し時間をくれ! 何とか襲撃を止めるよう、長と共に説得を続けるから――――

 だが、その努力も空しく、結局村人たちや妖魔たちにも、村を捨てさせる選択をさせてしまった。結局自分は何も事態が変えられず、今日を迎えてしまったのだ。

 どうすればよかった?
 どうすれば今の事態を回避できたのだろうか。
 ずっとそう問い続けてしまう。
 考えた所で、答えなど出る筈もないのに。

「……殺さなかったのは正解だったな、シュバルツ。1人でも殺してしまっていたら、おそらく今日を迎えられてはいなかった。俺の救援は間に合わなかっただろう」

「―――――!」
 思いもかけぬハヤブサの言葉に、シュバルツは驚いて顔を上げる。

「一人でも殺せば、次から次へと殺して行かなければならなくなる。命を奪うとは、そういう負の連鎖に巻き込まれることを意味する。そうなってしまったら、この村はもっと早く、襲撃の憂き目に遭っていただろうな」

「ハ……ハヤブサ……」

「その御方の言う通りじゃ。シュバルツ殿が支えていてくれたからこそ、わしらは今日まで無事に過ごせた。桃の収穫も無事にできた。それが、何よりの事じゃ」
 長老の言葉に、妖魔たちも頷く。
「確かにそうじゃな……。人間たちと交流したいと願っていたわしらの願いを、この方は叶えてくれた。素晴らしい世界を、わしらに見せてくれた」
「戦い方も、教えてくれたしな」
「どれもシュバルツ殿が、この村に来てくれたおかげだな」
「いや……私はきっかけを作っただけにすぎない。その後の交流は貴方たちの力で―――」
(そうやって『弱者』に何のためらいもなく手を伸ばす事が出来るっていうのが、どれだけすごい事か――――当の本人がまるで分かっていないのが困るな……。こういう事は、誰でもできる事ではないのに……)
 懸命に謙遜するシュバルツを、ハヤブサは苦笑しながら見守る。シュバルツはかなり有能なのに、それをまるで無自覚なのが、堪らなくもどかしくて、そして愛おしいと感じていた。

「シュバルツ殿……いろいろあったが、我らは人間と交流を持てた事だけは、絶対に後悔はしない」

「――――!」
 妖魔の言葉に、村の長老も頷く。
「そうじゃな。この方々と我々は、こうして手を取りあえた。種族が違えども、妖魔と人間は、共存する事が出来るのだ」
「我らは誰に何と言われようとも、この取り合った手を、離すつもりはないから――――」

「みんな………」

 しばらく茫然と皆を見つめていたシュバルツであったが、やがて皆から視線を逸らして背を向けてしまった。その肩が小刻みに震えている。どうやら、感極まって泣いてしまっているようだった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

されど、龍は手を伸ばす。 157 ――無双OROCHI異聞録――― 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる