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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 154 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2014/12/10 00:36   >>

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「では皆――――急ぐのじゃ! 襲撃されぬうちに、脱出しよう!」

 村長の言葉に皆が頷き、動き始めた。シュバルツも皆を手伝うために歩き出そうとした時、彼のロングコートの裾を引っ張る者が居た。
「シュバルツさん」
 振り向いた視線の先には、ケイタが居た。
「どうした? ケイタ」
 シュバルツがいつもの様にケイタの目線の高さに屈むと、声をかけてから少し考え込むようにしていたケイタが、思い切ったように声をかけて来た。

「ねえ……今の声って、やっぱりシュバルツさんなんでしょう?」

「えっ?」
 少し面食らった様に問い返すシュバルツに、ケイタは尚も言葉を続ける。
「シュバルツさんが、僕たちを安心させようとして――――」
「あはは……残念ながら、違うよ」
 そう言って優しく笑うシュバルツに、ケイタはなおも食い下がってくる。
「だって……! あの声はシュバルツさんにそっくりだったよ!? だから僕は――――!」
「ケイタ……。残念ながら私は、その『声』を聞いても居ないんだ」
「えっ? でも――――!」
「本当だ……。前にも言っただろう。『私はお前に、絶対に嘘はつかない』と……。誓って私はあの時何も言ってはいないし、やっても居ない」
「そうなの?」
 怪訝な顔をするケイタに、シュバルツは優しく微笑みかけた。
「本当だって。第一、これだけたくさんの桃の花を、どうやって用意するんだ」
 そう言ってシュバルツは、落ちている桃の花を拾い上げてケイタに渡す。
「……そうだけど……」
 シュバルツから渡された桃の花を見つめながら、ケイタはまだ納得しかねているようだった。
「だって、シュバルツさん、時々魔法を使ったし」
「…………!」
 ぼそっとケイタから言われる言葉にハヤブサは吹き出しそうになり、シュバルツも苦笑するしかない。
「あれは『手品』と言って、ちゃんとタネも仕掛けもあるものなんだ」
「本当に?」
 少し疑いの眼差しを向けてくるケイタに、シュバルツは苦笑しながらも頷き返す。
「本当だよ。そうだ、今度タネを教えてあげよう。約束するよ」
「本当に!?」
 シュバルツのその言葉を聞いたケイタの顔が、ぱっと明るい物になる。
「無事に避難が出来たらな」
 そう言いながら笑うシュバルツに、ケイタは「うん! 分かった!」と元気良く頷き返すと、踵を返して走り去って行った。やれやれ、とシュバルツがため息をつきながら身を起こすと、後ろからハヤブサに声をかけられた。
「相変わらず、子供の前で手品をやったりしているのか?」
「仕方がないだろう? 度重なる他の部族からの嫌がらせや襲撃で、子供たちも皆怯え気味になっていたから――――」
「そうか……」
 今のシュバルツの一言で、ハヤブサは、彼がどれだけここで八面六臂に走り回っていたのかを察してしまう。つまりシュバルツは農作業の手伝いだけではなく、妖魔たちの村に対する嫌がらせや襲撃の対応、さらには子供たちの心のケアまでやっていたのだ。その間に村長や長老の相談に乗ったり、妖魔たちの村の方まで足を運んでいたのだとしたら、それこそ休む間もなかっただろう。よくぞここまで頑張って来れたものだと、逆に感心してしまう。
「しかしお前は、本当に子供をあやすのがうまいな」
 ハヤブサのその言葉に、シュバルツは苦笑する。
「8歳年下の弟をあやした経験が生きているだけだ。そんな特別な事じゃない」
 シュバルツはそうさらりと言ってのけるが、子供の相手をするのがいまいち苦手な自分からしてみれば、怯えた子供たちの心をほぐし、笑顔を引き出す事の出来るシュバルツは、充分尊敬に値するとハヤブサは思うのだ。
 村の西側の方が、少しざわつき始めた。どうやら、妖魔の村から避難をして来た者たちが到着したらしい。妖魔たちは皆頭に布を巻き、大きな鳥の羽を挿している。どうやら本当に、この妖魔の村全体の妖魔たちが、その羽をつけているようだった。

「シュバルツ殿!」

 村に来た妖魔たちの内の1人が、シュバルツに気がついて声をかけて来た。それに気が付いたシュバルツも、そちらに向かって走って行く。
 ハヤブサはそのシュバルツの後は追わずに、ケイタの後を追う事にした。少し、確かめたい事があったからだ。
 求めていたケイタの姿はすぐ見つかった。彼は自分の荷物を担ぎながら、妖魔の子供たちを集めているところだった。

「ケイタ!」

 ハヤブサが声をかけると、ケイタは少し驚いた様に振り向いた。
「わっ! びっくりした! えっと……ハヤブサ、さん?」
「ああそうだ。俺の名前はリュウ・ハヤブサだ」
 ケイタに名乗りながら、ハヤブサは少し複雑な心情を味わう。前の時間軸ではそれなりに親しくなれていたケイタ。だが、この時間軸ではまだ、初対面に近いのだ。ケイタのどこかよそよそしい態度にハヤブサは少し淋しさを覚えるが、これも仕方がない事だろうと思う。時間を遡るとは、そう言うことだ。シュバルツに守られて、1人生き残ってしまった事も、村の襲撃から命からがら皆で逃げた事も、ケイタにとっては『無かった事』になってしまっているのだから。
「お前に確認したい事がある。少し、良いか?」
 気を取り直してハヤブサは、ケイタに話しかける。彼がどう言う子供かは分かっているので、他の子たちに話しかけるよりも、ハヤブサにしては随分気楽に声がけられていた。
「はい。良いですけど……」
 少し怪訝な顔をしながらも、こちらに向き直り、まっすぐ見つめてくるケイタ。ハヤブサはそんなケイタと同じ目線の高さに身を屈めると、聞きたい事を切り出した。
「お前が聞いた、例の『声』の事なのだが――――」
「はい」
「そんなに、シュバルツにそっくりだったか?」
「…………!」
 その確認に、ケイタは少し驚く。だがちょっと考えてから、彼はすぐに答えを返してきた。

「うん。間違いないよ。あれは、シュバルツさんの声だと僕は思ったんですけど……」

 ケイタのその言葉に、ハヤブサは「そうか」と頷くと、すぐに立ち上がった。
「済まなかったな。これで用は終わりだ」
「もういいの?」
 問うケイタに、ハヤブサは頷く。
「ああ。俺も確認したかっただけだから」
「確認?」
 小首を傾げるケイタにハヤブサは答えを返す。
「ああ。俺もあの『声』は、シュバルツの物だと思ったから――――」
 他に自分と同じような聞こえ方をした者が居たかどうか、確認したかっただけだとハヤブサは言った。

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