農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 221 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/23 12:56   >>

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「吾からしてみれば、あれだけの物を内に抱えて、よく『人の形』を保っている物だ、と、思ってしまうがな……」
「そうですか……」
 屁舞留に答えながら、キョウジは考え込んでしまう。
 だいたい、ハヤブサと言いシュバルツと言い、それに自分の弟とその師匠。そして、その友人たちと言い、とにかく常識離れした強さを誇る『知り合い』が、自分の周りには多すぎる。だから、その辺りの感覚が多少麻痺気味になっているかもしれない、と、キョウジは思った。
(どっちにしろ、万が一帰ることができたら、ハヤブサの血液データをもう一度、洗い直してみる必要があるかもな……。屁舞留に良いヒントを貰ったし……)
 今のところ、帰る伝手も手段もないけど、と、キョウジは苦笑する。
 第一、もう死んでいる身だ。普通なら、このまま成仏しなければいけないのに。
 いつまでも未練がましく意識のあるこの身――――一体、どう言う事だろう。

 そうこうしている間にも、ハヤブサはケイタから話を聞き、時間を遡る決意を固めたようだ。握りしめていたシュバルツのコートをの一部を裂き、それを龍剣の柄に巻きつけていた。

 待っていろ。シュバルツ。そしてキョウジ……。
 お前たち二人の『失われた時間』を、必ず取り戻して見せるから。

 柄に口付けながら、そう決意しているハヤブサ。
(…………!)
 ハヤブサのその想いに、少し驚くキョウジ。ハヤブサが、シュバルツを取り戻したがるのは分かる。ハヤブサにとってシュバルツは、この上もなく大事で『愛おしいヒト』だからだ。だけどその上に――――自分の事も取り戻そうと考えていてくれていただなんて。

 どうしてだろう?
 シュバルツが居れば、もう私は居なくても――――

 そんな風に物思うキョウジに、屁舞留が微笑みながら声をかけて来た。
「良かったの! キョウジ……。あの『龍神』は、お主を必要としておる様だぞ?」
「屁舞留……」
「あの龍神の力も加わる。今度はもっと、大きな『奇跡』が起きるやもしれぬな!」
 そう言って楽観的に笑う屁舞留に、しかしキョウジは眉をひそめた。
「そうだと良いけど、あの戦場はそんなに簡単じゃない……」
 全く身を守る術の無い村人たちを守りながらの撤退戦。それだけでも厳しいのに、敵味方の妖魔が入り乱れて、敵味方の区別がつかなくなる。さらに追い打ちをかけるように、素戔鳴と言う仙界軍の襲撃――――悪い事が重なり過ぎている。しかも、素戔鳴率いる仙界軍の攻撃は、シュバルツの再生能力を奪ってしまうのだ。
「少しでも……運命の『サイコロの目』が、良い物が出ればいいのだけれど……」
 ハヤブサが連れて行く仲間を決め、時を渡ろうとしている。屁舞留もキョウジも、その後をこっそりついて行く事にした。


 術の光の中から抜けると、そこはもう懐かしい村の風景だった。
「これは……私たち、時を越えたの?」
「これが、あの村……? 綺麗……」
 ハヤブサと共について来た甲斐姫と孫尚香が、それぞれ感嘆の声を上げている。無理もない。彼女たちは、焼き払われた村の姿しか知らないのだから。
「ハヤブサさん! こっちだよ!」
 時を越えた少年が、ハヤブサの腕を引っ張り走り出す。どうやら見せたい物があるようだ。そして暫く行くと、材木を抱えて村人たちと話しているシュバルツの姿を見つけた。
「シュバルツ……!」
 ハヤブサは思わず、声を上げる。その声に「え………?」と、反応したシュバルツが、振り返った。

「え……! え……? ハヤブ、サ……?」

「シュバルツ……ッ!」

 ハヤブサはそのまま、シュバルツに避ける暇すら与えずに、その身体を抱きしめる。「お……! おい……!」と、シュバルツが戸惑った様な声を上げるが、ハヤブサの抱きしめるその腕の力は、ますます強くなっていくばかりで。

「あ………! あ………!」

 ついに、堪え切れなくなってしまったのだろう。ハヤブサはシュバルツを強く抱きしめながら、泣き始めてしまった。
(無理もないな)
 キョウジは思う。
 あの時空の道でシュバルツとはぐれて、実質どれぐらいの時がハヤブサの中で経っているのかキョウジには分かりかねるが、その間ハヤブサが、シュバルツを血眼になって捜し続けていたであろうことは、想像に難くない。しかも、やっと見つけたと思ったシュバルツは、いきなりハヤブサの目の前で砕け散ってしまっている。

 立っているだけで
 歩いている姿を見るだけで
 そのヒトが『生きている』と実感するだけで――――

 ハヤブサが泣き叫んでしまうのも、無理はないなとキョウジは思った。

「ハヤブサ……」
 シュバルツも、ハヤブサのそんな姿に戸惑いつつも、そっとその背に腕を回している。泣き叫ぶハヤブサの姿に、何か感じるところもあるのだろう。
 ふと見ると、少し離れた所でハヤブサについて来ていた女性二人も涙ぐんでいる。
(良かったな……)
 キョウジも再会した恋人同士の抱擁を、素直に祝福していた。
 そんな中、屁舞留が静かに桃の林の方に向かって歩いて行く姿が見える。キョウジは屁舞留の後を追いかける事にした。


「やはり、あった……」
 桃の畑の中で、屁舞留は一本の木の前に来ると、そこで立ち止まった。
「屁舞留?」
「おう、キョウジか……」
 呼びかけられた屁舞留が、穏やかな笑みを浮かべる。そのまま黙って、また、木を見つめ始めた。
「どうした? 屁舞留。その木は、一体……」

「『仙桃』じゃよ」

 屁舞留は少し、哀しげに笑った。
「ほら……素戔鳴が言うておったじゃろう? ここに自分の『仙桃』があると……。それが―――――これ、じゃよ……」


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