農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 223 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/26 20:08   >>

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 キョウジはハヤブサの様子を見てから、屁舞留の方に振り返った。
「いや、斬らないと思うよ?」
「な、何でそう思うのじゃ……?」
 おっかなびっくりといった按配で聞いてくる屁舞留に、キョウジは笑顔を見せた。
「だって、彼の傍にはシュバルツが居る。ハヤブサはシュバルツが嫌がることは絶対にしない筈だよ」
「そ、そうか……? しかし……!」
 覗き込む屁舞留の視線の先に居る、龍の忍者。その目つきが、普通に怖い。完全に据わってしまっている目つきだ。それを見ていると、キョウジの方もだんだん自信が無くなってきた。
「だ、大丈夫だと、思うよ…………多分……」
「―――――!!」
 キョウジのその言葉を聞いた屁舞留の顔色が、真っ青になってしまう。
「多分ではいかんのじゃ!! 何度も言うておるであろう!? この木自体に罪はないと――――!!」
「そ、それはそうかもしれないけれど……!」
「それに、あの木も心を痛めておると言っておるではないか!! それなのに、斬り倒すなどと暴力はいかんのじゃ!! 木が可哀想すぎる!!」
「いやだから、ハヤブサが木を斬ろうとしても、シュバルツがそれを止めるから大丈夫だと思うよ」
 多分、と、キョウジは心の中で付け加える。
 どうして「多分」となってしまうのかと言うと、ハヤブサが本気を出してあの木を斬り倒そうとした時が問題だと思ったからだ。本気を出したハヤブサは、シャレにならないレベルで強い。それこそシュバルツの制止が間に合うかどうか、微妙なくらいだ。
 そんなこんなと屁舞留とキョウジが二人ですったもんだしているうちに、龍の忍者が木に向かって一歩、踏み出した。

「ひっ!!」

 完全に怯えてしまっている屁舞留だが、仙桃の木から離れる事だけはしない。何としても守り抜きたいと、願っているのだろう。キョウジはそんな屁舞留の傍について、事の成り行きを見守ることにした。

「シュバルツ」

「どうした? ハヤブサ」
 振り返った龍の忍者に、シュバルツは普通に答えている。特にハヤブサの態度から、何か警戒すべきものを感じている、と言う訳ではなさそうだった。

「この木の桃……食べさせてもらっても良いか?」

(し、食すのか!?)
 龍の忍者のその言葉に屁舞留は思わず前のめりにこけそうになってしまう。しかしシュバルツの方は、特に何かを思う訳でもなく、普通に「ああ、良いぞ?」と、ハヤブサに返事をすると、慣れた手つきで桃の実をもいで、彼に渡していた。渡された龍の忍者が、それをシャリ、と、一口かじる。

「うん……。確かに甘いな。良い桃だ」

 そう言いながら桃を食べる龍の忍者は、優しい笑顔になっていた。
(あ、あれ………?)
 その姿を見て、屁舞留は拍子抜けをする。そんな屁舞留を見て、キョウジは苦笑していた。
(ま、まあ……ハヤブサの目つきは、普通にしていても少しきついな、と、感じる時があるからなぁ)
 本人にその自覚があるかどうかは分からないが、ハヤブサは少々日本人離れをした、綺麗な顔立ちをしている。整いすぎた顔と言うのは、黙って立っていると、時に冷たい印象を人に与えてしまったりするものだ。
 しかしハヤブサは、元来とても優しい人だ。
 心を赦してくれた時に見せる笑顔は、とても柔らかい印象を周囲に与える。だから、ハヤブサはもっと笑顔を人に見せても良いんじゃないか、と、キョウジは思ったりすることもあるのだが。
 だが彼は、戦いの中にその身を置かねばならない人。
 そう簡単に――――人前で笑顔を見せられるものでもないのだろう。

「良い桃だろう? 村人たちが手塩にかけて育てているからな。しかし……それが、どうして――――」

 ハヤブサと話していたシュバルツの瞳が哀しげに曇る。この桃と妖魔たちとのつながりが、村の襲撃に繋がってしまう事実が、彼の心に重くのしかかってしまっているのだろう。

「お前のせいでも、この桃のせいでもない。気にするな」

 龍の忍者が桃を食べながら、ぶっきらぼうにそう言い放つ。
「ハヤブサ……」

「お前たちは、何も悪い事はしていない。だから、堂々と――――胸を張っていればいい」

(…………!)
 ハヤブサのこの言葉には、屁舞留も心を打たれたようだ。その瞳が、感極まった涙で潤んでいる。
「キョウジ……。あ奴、良い男じゃの……」
 そう言う屁舞留にキョウジもフッと笑顔を見せる。
「そうだろう? ハヤブサは、優しい人なんだ」

「シュバルツ。この桃、もう少しもらって行っても良いか?」
「ああ。構わないぞ? 好きなだけ持って行ってくれ」
 ハヤブサの問いかけに頷くシュバルツの横で、屁舞留もうんうん、と、頷いている。
「構わぬぞ! そなたの様な者に食べてもらえるのなら、桃たちも本望であろう! いくらでも持っていくが良いぞ!?」
 そうやってハヤブサに声をかけるのだが、当然ハヤブサには気づかれない。そのまま彼は桃を木からもぎ取っている。それでも屁舞留は、その姿を嬉しそうに眺めていた。
 ただ、桃を捥ぎ取るハヤブサの口元に、微妙な笑みが浮かんでいる。
(あ、何か企んでいるな?)
 キョウジはピンと来る物があったが、屁舞留のためにも敢えて黙っている事を選択していた。


『火急の話があるから』と、シュバルツが伝えていたにもかかわらず、集まりの遅い村人たち。やはり、彼らの危機意識は相当低かった。襲撃の事実をハヤブサたちが伝えても、俄かに信じ難い情報は、彼らの決断を鈍らせる。
 しかし、妖魔たちの村を襲っていた他の部族からの嫌がらせの話、そして、ハヤブサたちが懸命に呼びかけを行ったおかげで、彼らはようやく村を離れて避難する決意を固めていた。
(夜も更けてきた……。妖魔たちや素戔鳴からの襲撃から、無事逃げ切ることができれば良いが――――)
 そう思って表情を曇らせるキョウジの横で、しかし屁舞留は、少し明るい表情をしていた。何故なら――――
「キョウジ! 聞いてくれ! この村を覆っていた『死の闇』が、少し小さくなったぞ!」
「――――! それは、本当なのか!?」
 驚くキョウジに屁舞留は嬉しそうに頷いた。
「本当じゃ……! つまりこれは、助かる人間が、先の戦よりも増える、と言う事じゃ!」

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