農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 224 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/27 17:43   >>

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「そうか……」
 屁舞留のその言葉を聞いて、キョウジも笑顔になる。しかし、屁舞留はまた顔を曇らせた。
「じゃが……。お主の影に宿る『闇』は消えてはおらぬ。そして、あの龍の忍者にも、『死の闇』が形成されつつある……」
「――――!」
 息を飲むキョウジに、屁舞留は少し哀しげに笑った。
「じゃが、それはおぼろげな物じゃ。例えて言うなら、先の戦いのケイタの様な感じじゃな……。どちらに転ぶか分からん、と、言う事じゃ」
「ハヤブサが……!」
 茫然と見守るキョウジ達の視線の先で、村人たちが移動を開始していた。次の戦いが始まりそうな気配を、濃厚に漂わせている。キョウジは、その後をついて行こうとした。それを、屁舞留が引き留めた。
「キョウジよ……。行くのか?」
 キョウジは瞬間怪訝な表情をその面に浮かべたが、すぐに「ああ」と、頷いた。
「分かっておるとは思うが、吾らに出来る事は何もない……。戦いについてっても、己が傷つくだけだぞ。キョウジ……」
 屁舞留のその言葉に、しかしキョウジは笑顔を浮かべた。

「ああ。分かっている。だがそれでも、私は行くよ」

「キョウジ――――」
 屁舞留は少し、苦い顔をする。
 自分達の姿など、どうせ誰にも見えないし、認知される事もない。
 だから、この戦いに無理について行かずとも、『見守る』だけなら少し離れた所にある自分の結界の中で充分事足りると屁舞留は思った。
 先の戦いで、キョウジはあれほど傷つき、苦しんだのだ。
 ならば――――無理について行かずともいいのではないかと思う。

 だがキョウジは、屁舞留のその忠告に首を振った。
「屁舞留……。確かに私の手は、誰も救えない。戦うシュバルツ達の力になれない事も、よく分かっている……」
「だったら――――!」
 尚も引き留めようとする屁舞留に、キョウジは穏やかな笑みを返す。
「そう……見守るしか出来ない。それしか出来ないのならば、せめて――――せめて、彼らの傍で、見守りたいんだ。戦いの、一部始終を……」
「―――――!」
「傷つく事を恐れて、それすらも逃げてしまったら………私はもう、二度と彼らに顔向けできない。そんな気がする……」
 だって彼らは逃げずに戦っているのに、と、キョウジは言った。屁舞留は、反論するべき言葉を失ってしまった。
「もっとも、こんな想いすら、結局は『自己満足』の類でしか無いんだろうけど……ね」
 そう言って、少し哀しげに笑うキョウジ。屁舞留は首を振った。

(強いのう……キョウジは……)

 素直にそう思う。
 自分は、最初の戦で村が滅んだ時に、もう心が折れてしまっていたのに。
 己の無力を呪い、不条理な戦を呪った。
 わざわざ村の外の時空の空間に、自身の結界を作ったのもそうだ。

 怖かったのだ。自分は。

 村が滅んで誰も居なくなってしまったと知っていても――――あの惨劇が、また自分を追いかけて来そうで、怖かった。
 だから自分は逃げた。
 逃げてしまっていたのに。

 だが目の前のこの青年は、自分が傷つく事を百も承知で、またその惨劇の中に身を投じようとしている。

 思う。
『見守る』とは
 こういう事ではないのか。

「『神』とは――――『人を裁く者』だ!!」

 素戔鳴はそう言った。きっとそれは、『素戔鳴』と言う神の在り様。それはそれで、きっと『正しい』ことなのだろう。
 自分は、『見守る』ことしか出来ない。
 でもきっと、これもまた―――――神の在り様なのだ。
『見守る』ことで初めてなし得る、何らかの神の役割もあるのだろう。そう信じたい。

(怯えるな……!)
 屁舞留は懸命に己を叱咤する。

 大丈夫。
 あの龍の忍者が引きつれてきた人の子たちが、村に覆っていた『闇』を、確かに少しだが、払った。
 あの村の者が全員、死ぬことはないのだ。
 命は、希望は繋がる。
 大丈夫なのだ。

「じゃあ屁舞留。私は行くから――――」
 そう言って踵を返そうとするキョウジを、屁舞留が引き留めた。
「待て、キョウジ」
「屁舞留?」

「吾も、お主について行く」


 村から劉備の城へ避難して行く道中で、村人たちはまず妖魔たちの襲撃に遭った。あっという間に敵味方の区別がつかなくなり、戦場は大混乱に陥る。
 そんな中でも人の子たちは連携して、何とかこの困難を切り抜けようとしていた。それぞれがそれぞれに――――己の出来る精一杯を成し遂げていた。傷だらけになりながらも、村人たちの集団は確実に劉備の城へと向かって行く。シュバルツ1人で戦っていた時とは、確実に違っていた。『1人じゃない』と言うのは本当にすごい事だとキョウジは思った。

 それでも、皆が『守ろう』としていたその輪から、零れ落ちてしまう命はどうしても出てくる。

 キョウジは、その1人1人の傍に行って、静かに目礼して手を合わせていた。すると、死した村人たちの身体から小さな光の玉が出て来て―――――静かに天へと還って行った。
「キョウジ……」
 声をかける屁舞留に、キョウジは手を合わせながら答える。その瞳から、一筋の涙が零れ落ちていた。
「……『供養』の真似事、だよ……」
「…………!」
「おかしな話だけど……私が『死んだ』時……ハヤブサにこれをしてもらって、何故か……とてもホッとした事を覚えていたから――――」

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