農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 199 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/02 23:49   >>

驚いた ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0


  「第7章」


(……ルツ……。……シュバルツ……)

 誰かの、優しい声が響く。

 自分の額に、誰かの優しい手が、ふわ……と、添えられた。

「シュバルツ……」

 酷く、懐かしい声。
 その声に導かれるように、シュバルツは瞳を開けた。
 ぼんやりと開ける視界に、とても懐かしい笑顔が――――

「キョウジ!?」

 叫びながら跳ね起きたシュバルツに、『キョウジ』と呼ばれた青年はにこりと微笑んだ。

「あ、シュバルツ。気がついた?」

「…………!」

 全く『いつもの通り』なキョウジの姿に、シュバルツは少し拍子抜けする。何かいろいろと混乱してしまう所ではあるが、とにかく状況を把握するために、彼は周りを見渡した。
 そして――――自分達が今、とても不可思議な空間に居る事に気づく。
「ここは……どこだ?」
 思わずキョウジに問うていた。
 それもそのはずで、シュバルツ達がいる周りには、見事なまでに何もなく、天も地も定かではない様な、ただ白い霧で覆われている様な空間であったからだ。

「……どうやら、貴方の『夢の中』、みたいだね」

 問いかけられたキョウジも周りを見回しながら答える。
「貴方は今、深い眠りに落ちているから――――」
「眠りに?」
 きょとん、とするシュバルツに、キョウジは頷いた。
「うん、眠りに」 
「眠り………」
 少し考え込むような仕種を見せたシュバルツを、キョウジは何故か、慌てて止めようとして来た。
「シュバルツ待って! あんまり『どうして自分が眠りに落ちたか』とか、深く考えない方が良い様な気が――――!」
 だが、キョウジの制止は間に合わず、自分がどうしてこんなに深い眠りに落ちてしまったのか、その『過程』を思い出してしまう。

「…………! ―――――ッ!!」

「あ、ああ……思い出しちゃった?」

 おずおずと聞いてくるキョウジに、シュバルツも咄嗟に言葉を返す事が出来ない。しばし、二人の間に奇妙な沈黙が流れた。

「………………」
「………………」

 先に沈黙を破ったのは、シュバルツの方であった。

「そ、その、キョウジは……」
「な、何? シュバルツ……」

「み、見た……の、か? その……私とハヤブサが―――――」

 出来ればキョウジには頷いて欲しくない、と、思いながらシュバルツは問いかける。しかし無情にも――――キョウジの頭は縦方向に動いてしまった。

「あ〜〜……え〜〜〜っと…………うん」
「――――――!!」

 絶句して、気の毒なほど顔色が目まぐるしく変わって行くシュバルツに向かって、キョウジは慌てて言い訳をしだした。
「いやそのっ!! そんなに具体的には見てないよ!? なるべく遠くの方に離れて、目と耳を塞いで、『見えない見えない〜』ってしていたんだけど………!」

「………………」

「その…………何というか………」

「………………」

「すごかったね………。何かこう……『刺激的だった』と言うか――――」

「………ちょっと、あっちで腹搔っ捌いてくる」

 そう言って顔を真っ赤にしながら踵を返すシュバルツに、キョウジは慌てて縋りついた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!! シュバルツ!!」
「離してくれ! キョウジ!! あんな姿をお前に見せて、私はもう生きていられる気が――――!!」
「だからここは『夢の中』だから、切腹したって意味が無いんだってば!!」
「――――!」
 はっと気がついて動きを止めるシュバルツに、キョウジもやれやれと、その手を離した。
「せっかくこうして会えたんだから、もっと話をしようよ、シュバルツ。私は、貴方に話したい事がいっぱいあるんだ」
「キョウジ………!」
 キョウジのその言葉に、自分も、キョウジに対して積もる話を沢山抱え込んでいた事を思い出した。
 何てことだ。あんなに、『キョウジに話したい』と飢えていたのに。
 いざキョウジに会ってしまうと、そんな飢えすら忘れてしまって、普通に和んで話してしまっている自分が少し怖かった。習慣や慣れと言うのは、恐ろしいものだ。
「分かった……」
 シュバルツが頷いたのを見て、キョウジもにこりと微笑んだ。

「まず――――状況を整理させてくれ、キョウジ」

 シュバルツの言葉に、キョウジも「うん」と頷く。
「ここは………本当に、私の『夢の中』なのか?」
「うん、そうだよ。ここは貴方の夢の世界。だから貴方が望めば、何でもここに出てくる」
 キョウジが、歩きながら説明を始める。その様子は、さながら大学の小講義でもしているような雰囲気だ。
「例えば貴方が『椅子に座りたい』と思えば椅子が出てくるし、『コーヒーが飲みたい』と思えば、コーヒーが出てくる。……ああ、すごいね。こうしている間にも、もう私の部屋が再現された」
 そう言いながらキョウジが目の前のデスクに腰を落ち着けると、そこはもう、懐かしいキョウジのアパートの部屋だった。シュバルツにとっては日常の風景。今は妖蛇に破壊されてしまっていて――――もう見る事が出来ない風景でもある。
「……………」
 シュバルツが少し感慨深くその光景を眺めていると、デスクの上を見たキョウジから、軽く悲鳴が上がった。
「シュバルツったら! 書きかけの論文まで再現してくれなくても良いのに―――!」
 せっかく忘れていたのに――――! と、頭を抱えるキョウジ。それを見てシュバルツも、ようやく笑顔になる事が出来た。
 本当に――――
 涙が出るほど懐かしい、日常の風景だ。
「なるほど……ここが私の『夢の中』だと言う事はよく分かった」
 そう言いながらシュバルツも、いつもの壁際のポジションに、腕を組んで凭れかかる。自分がキョウジと話す時は、いつもこうしていた事を思い出して、妙な感慨深さに浸りそうになった。それらを振り払う様に頭を振ると、シュバルツは話を進めることにした。
「ではキョウジ……一つ聞くが」
「何? シュバルツ」

「お前も、私の『夢の一部』なのか?」

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
驚いた
面白い
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

されど、龍は手を伸ばす。 199 ――無双OROCHI異聞録――― 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる