農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 203 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/02/06 14:16   >>

驚いた ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

 ボフン、と、音を立てて、キョウジは時空の奔流からその空間へと引っ張りだされる。
「でっ!!」
 それまでふわふわと浮いていた身体が、いきなり重力に従って落下したものだから、キョウジはしこたま腰を打ってしまった。
「いてててて………」
 痛む腰をさすりながら立ち上がると、何やらどこからか、泣き声が聞こえてくる。
(何だ………?)
 その声の主が『子供』の様であったのが気になって、キョウジはきょろきょろと、その声の主を探した。ここが何処であれ何であれ――――『子供』が哀しいままなのは、よくないことだと思うのだ。
 声の主は、すぐ見つかった。
 薄暗い空間の中、そこだけボウ、と、明かりが灯っているかのように輝いている場所がある。そこに白銀の長い髪を古風に結い、白に紫の色を重ねた神装束の衣服をまとった『子供』が、そこで哀しげな声を上げて泣いていたのだ。
 キョウジはその子に声をかけようとして、一瞬、何故か躊躇われた。その子供自体が淡く輝き、その明りが、周囲を照らしている。あの『龍』とはまた違った、『神気』の様な物も感じる。それは、この子供が『人ならざるモノ』であると言う事を感じさせるには充分すぎる物であったからだ。
(………………)
 だが、このままではこの子はいつまでたっても哀しいままだし、事態に何の進展もなく、埒もあかない。もし、目の前に居る子供が『神』で、自分が不可侵の禁を犯してしまっているのだとしても――――恐れる物は何も無い、と、思った。自分はもう、死んでしまっているのだ。失う物など、何も無い筈なのだから。
 しかし、どう声をかけたものかと、子供との距離を歩いて縮めながら考えていると、その子の手元で淡く光り輝く『何か』が創りだされているのが見えた。それが、自分にはとても見知っていた物に見えたので――――キョウジは、思わず考えるより先にその子に声をかけていた。

「それは、桜の花? それとも、梅の花かな?」

「――――!」

 ビクッ! と、振り返る子供に、キョウジは人懐こい笑みを浮かべて応えた。

「こんにちは」
「なっ! 何者じゃ!? 貴様は――――!!」
「え、え〜〜〜っと、何者かと言われても……」
 警戒心も顕わにこちらを睨みつけてくる子供に、キョウジは苦笑する。自分が何者かと説明し、怪しい者ではないと証明する事は、存外難しいものだ。
 とりあえずキョウジは、自分が何者かということを説明してみることにした。
「私の名はキョウジ・カッシュ。28歳。男。学者をやっていました。ついさっきまで人間として生きていたんですけど、突然現れた『龍の首』みたいな物に襲われて、どうやら死んでしまって――――こちらに来てしまったようです……けど……」

「龍の首?」

 白銀色の瞳を向けながら、小首を傾げる子供。その額には、三日月の文様が刻まれていた。キョウジは頷き返すと、「ここからそれが見えるかな?」と、何かを探すような仕種をして見せた。すると、遠くの方に、ボウ……と、龍の身体がうねっている姿が浮かび上がってくる。
「あれです。恐らくあれに巻き込まれて――――」

「そうか」
 子供はそれだけを言うと、またキョウジから自分の手元に視線を移して、ぐじぐじと泣き始めた。

「だ、大丈夫か?」

 睨まれはしたが、特に子供の方から強く拒否されるような様子もなかったので、キョウジはもう少しだけ子供の方に近寄って、その傍に座った。
「大丈夫ではない! これが泣かずにいられるか!!」
「ど、どうしてそんなに泣いているんだ? 私でよければ話を聞くよ?」
「………………」
 そう言って顔を覗き込んでくるキョウジを、その子供はしばらく推し量る様に見つめていたが、やがて、ポツリ、ポツリ、と口を開いた。

「わ………吾を、熱心に祀ってくれていた、村の者たちが、居たのだが………」

「うん」

「い……戦に巻き込まれて……ッ! 皆、死んでしまって……ッ!」

「…………!」
 その言葉には流石にキョウジも絶句するしかない。
「遺体も片付けられず、野ざらしのままじゃ……! だからせめて吾だけでも、皆を供養してやりとうて、その真似事の様な物をしておるのじゃが――――」
 そう言って涙を流す子供の前に、小さな石が積み上げられている。供養塔のつもりなのだろう。
「じゃが………とても人数分の花を咲かせてやる事など出来ぬ! あまりにも――――哀しすぎて……ッ!」
 そう言って、涙にくれる子供の手元から――――また一輪の、八重咲きの花が生み出されてくる。それはとても綺麗で、それでいて、何故か胸が締め付けられる色を湛えていた。
「そうですか……」
 キョウジは短くそう言うと、胸の前で手を合わせて、その石積みの塔に向かって丁寧に頭を下げた。その仕草を見ていた子供が、遂に、声を上げて泣き始めてしまう。いろいろと堪えていた物が、堪え切れなくなってしまったのだろう。

「何故じゃ……! 何故吾は……このような事しか……! 花を咲かせることしか出来ぬのじゃ……! こんな事が出来た所で、何の役にも立ちはせぬと言うのに――――!」

 そう言って顔を覆って泣き伏してしまう子供の手元から、また一輪、花が零れ落ちてくる。よく見ると、石積みの塔の傍には淡い光を放つ綺麗な花々がちりばめられる様に撒かれていた。この子が泣きながら――――それでもやっと、これだけ咲かせたものなのだろう。
「……………」
 キョウジは黙ってその花々を集めると、その石積みの塔の周りを綺麗に飾り付けし始めた。やがて終わると、もう一度手を合わせて、その塔に向かって丁寧に頭を下げる。
「……貴方は『神様』なのか?」
 頭を下げ終わったキョウジが、振り返りながら子供に問いかける。それに対して子供は、涙を拭いながら答えた。

「吾は、『神』などとたいそうな者ではない――――。じゃが、『人外』である事は、確かじゃな……」

 懐から懐紙を取り出して、チーン! と、鼻水を拭く。
「一応、これでも吾は、300年生きておる」

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
驚いた

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

されど、龍は手を伸ばす。 203 ――無双OROCHI異聞録――― 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる