農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 238 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/03/17 01:32   >>

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「な……何が起こった……? 何がどうしてこのような物が――――」
 茫然と言葉を紡ぐ屁舞留の横で、同じように集会所から出て来て茫然としているシュバルツに、甲斐姫たちが説明を始めていた。
「シュバルツさん……。えと……つまり、この人たちは………」
「泣いている、貴方の姿を見て………」
「―――――!」
 女性たち二人のその言葉に、一瞬固まるシュバルツ。甲斐姫たちは更に説明を続けた。
「どうも……ここの『土地神様が泣いている』と、感じちゃったみたいで………」

「えっ?」

 思わず変な表情を浮かべて聞き返すシュバルツに甲斐姫は頷くと、更に説明を続けた。つまり、泣いているシュバルツの姿を見た村人たちが、とぼとぼと集会所を後にしたかと思うと、同じように泣きながら、誰からともなく祭壇の準備を始めたのだと。そして見るみるうちに祭壇の上は、お供え物であふれかえっていったのだと。
「ここの村人たちは、本当に……ここの土地神様が、大好きなんですね………」
 そう言う甲斐姫の瞳も、涙ぐんでいる。唖然としているシュバルツと共に、屁舞留もまた、言葉を失う以外になかった。そんな屁舞留の肩に、キョウジの手がそっと添えられる。
「良かったな、屁舞留。貴方はこれ以上ない、と言うぐらい、ここの人たちに慕われているんだ」
 キョウジのその言葉に、屁舞留ははっと我に帰った。
「ち、違う……! 慕われているのは吾ではない! お主の『影』が、この村のために頑張って走り回ってくれたから――――!」
「それだって、貴方が毎日コツコツと、『土地神』としての仕事を積み上げていたからこそだ」
 慌てて否定しようとした屁舞留の言葉を、キョウジは笑顔で切りかえす。
「ここの村人たちがどんな時でも、ちゃんと農作物の世話をしていたことも勿論大きいけれど、貴方だってどんな時でも、きちんと一つ一つの植物たちに声をかけ、『気』を送っていたじゃないか。それが、実を結んだんだよ」
「そ、そんな……! わ、吾は、吾が出来る事をただしていただけだ! ここの村人たちが居るのかいないのかも分からない吾の事を、熱心に祀ってくれていたから――――!」
 それに応える術が、それしか無かったのだ、と、答える屁舞留は、かなり動揺しまくっていた。そんな屁舞留を不謹慎だが『可愛らしい』と感じてしまって、キョウジはちょっと苦笑する。
「貴方が『居る』――――と、思ったからこそ、皆はこうしていろんな儀式を行ったり、『名代』を立てたりしたんだろう?」
「―――――!」
「屁舞留……やはり貴方は、皆に愛されている、立派な『土地神』なんだよ」
「ち、違う……! 慕われているのは、そなたの『影』で――――!」
「そんなことないよ。その証拠に、ほら………」
 キョウジが指し示す先で、村の者たちがいつの間には広場から祠の前に移動して、儀式に則って社から自分の『本体』である石を取り出していた。
「あ………!」
 小さく声を上げる屁舞留の目の前で、長老がシュバルツに対してこの石の由来を説明していた。この石こそが、ここの土地神の『御神体』であるのだと。
「シュバルツは、あくまで貴方の『代理』――――『土地神』とは屁舞留、貴方の事なんだよ」
「…………!」
 キョウジにそう言われて、屁舞留はぐっと言葉に詰まる。その目の前で、長老とシュバルツの会話はまだ続いていた。
「シュバルツ殿……。わしは、この『本体』を、わしらと共に連れて行こうと思っておるのじゃが……どうだろうか?」
「―――――!」
「『土地神様』は、わしらにとってはもう村の守り神も同然じゃ。とても離れがたく感じておる。新しい土地でも『村の守り神』として、御祀りしたいのだが……」

「あ…………!」

 長老の底言葉に、屁舞留は本当に茫然としてしまう。

 本当に――――?
 本当に、皆はそこまで、吾の事を――――?

 何故――――?
 何故だ………?
 吾は、本当に、神仙としても半人前で、出来ることも少ない、非力な身の上であると言うのに――――

「良かったな! 屁舞留!」
 キョウジは本当に嬉しそうに、屁舞留に声をかけて来た。
「貴方はちゃんと、必要とされている――――! 貴方の心を、皆はきちんと受け取ってくれていたんだよ!」
「……………!」

「長老様のお心のままに……。共に行かれるのであれば、そうした方がいいと私も思います。その方が、『神様』も喜ばれるでしょう」

 長老の問いに対して、シュバルツはそう答えた。否、それ以外の答えを、彼が持ち合わせているはずもなかった。

「………信じられぬ……」

 目の前で起きている出来事を眺めながら、ポツリと呟く屁舞留。そんな屁舞留を、キョウジがツンツン、と突いて来た。

「花は? 屁舞留」

「えっ?」

 何を言われているのかが一瞬分からなくて、きょとん、とする屁舞留に、キョウジは更に言葉を紡いでくる。
「屁舞留がせっかく用意していた花――――皆に、渡さなくていいのか?」
「えっ?」
「これってつまり――――『感謝の祭り』に相当するものだろう?」
「――――!!」
 キョウジに言われて、屁舞留もようやく合点が行って、はっと息を飲む。
 確かにそうだ。
 設えられた祭壇。数々の供え物。
 そして、村人たちから送られてくる、土地に対しての感謝の想い。
 これを――――『感謝の祭り』と言わずして、何と言えばいいと言うのだろう。

 今だ。
 あの花々を渡すなら、今しかない。

 でも―――――

 屁舞留は躊躇ってしまっていた。
 今まで、自分の存在を主張するような真似は、村人たちに対して屁舞留は決してして来なかった。
 それをいきなり『神』の存在を匂わす様な事をしてしまっては、村人たちに気味悪がられたりはしないだろうか?

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