農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 261 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/04/14 01:28   >>

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 行かねば。

 龍の忍者はおもむろに立ち上がると、車掌を探した。その姿を見つけると、切符を渡しながらこう言った。

「世話になった。済まないが、不足分の代金は、『隼の里』に請求してくれ」

「えっ!? お客さん!? あの、ちょっと……!」
 戸惑う車掌が止める間もあればこそ。
 龍の忍者は黒装束に身を包むと、窓を破壊してあっという間に電車の外へと飛び出して行ってしまった。
「あの……! ちょっと……! お客さ〜〜〜〜〜ん!?」
 後には間抜けに叫ぶ車掌と、周りの人たちの「忍者だ」「ニンジャ」「OH !! Japanize NINJA !!」と囁く乗客の声でその空間は溢れかえっていた。


 キョウジのアパートに向かってひた走るハヤブサ。
 しかし、周りに起こる「異常事態」に、少し辟易気味になっていた。
(くそっ! 何なんだ!? これは……!)
 心の中で毒づいて、そう舌打ちをする。
 街の景色は、まるで平和そのものだ。
 しかし龍の忍者はここに至るまでに既に――――飛び降り自殺を3回、交通事故を5回、落下事故を2回、惨事に至る前に助けていた。日常生活の中でままある風景なのかもしれないが、それにしたって、目の前で起こる頻度が高すぎる。つい、咄嗟に助けてしまうがまるで、こちらが進むのを拒むかのように次から次へと起こって来る目の前の事象に、苛立ちが募るのを押さえる事が出来ない。
(………抑えろ……! こういう時こそ、冷静に………!)
 焦りそうになる自分を、龍の忍者は強く叱咤した。
 まるで、こちらを試しているかのように起きる事象の数々。
 気にしすぎかもしれないが、これが、もし、『運命の女神』からの挑戦状だったら。
 キョウジの命を救うために、必要な試練なのだとしたら。
 そう思うとぞっとする。どれ一つとしておろそかにする訳にも行かないし、見捨てるわけにもいかない。
 今ここに、時間を巻き戻せる巫女かぐやは居ないのだ。正真正銘の一発勝負。なればこそ、失敗する訳にはいかないと、ハヤブサは強く自分に言い聞かせていた。
 
 道路に飛び出したベビーカーを、車に撥ねられる直前に救いだす。
「あ、あの、ありがとうございました……!」
 震えながら紡がれる母親の礼の言葉を最後まで聞かずに、ハヤブサはその場から立ち去っていた。時間がない。急いでいる。もしかしたら忍者としては悪目立ちし過ぎているかもしれないが、とにかく放っておいて欲しかった。
 自分が目指すのはキョウジのアパート。
 確認したいのはキョウジの無事。
 それ以外は自分にとって頓着すべき事ではないのだ。

 刻一刻と進む時計。
 壁を走り、屋根を走り、時に人助けをしながらハヤブサは進み続ける。
 角を曲がる。
 キョウジのアパートを、その視界に捉えた。
 後少し。

 ここでいきなり、ハヤブサの目の前で、水柱が勢いよく上がる。
「―――――!?」
 どうやら地下の、水道管が破裂したようだった。
 それに驚いたドライバーが運転を誤ったのか、制御を失った車がギャギャギャギャッ!! と、派手な音を立てて歩道に突っ込んで行く。
「くっ!!」
 龍の忍者はその恐るべき動体視力と判断能力で、車の進路に居た老婆と子どもを抱きかかえて飛ぶ。二人を安全な場所に下ろすと同時に、制動を失った車に向かってハヤブサは飛んだ。その車は電柱にぶつかり、派手にスピンをしながら交差点に向かって突っ込んで行っていたからだ。そこに、大量の鉄骨を積んだ大型トラックが向かってくる。
(いかん――――!!)
 双方を安全に助けることは無理、と、判断したハヤブサは、スピンする自動車とトラックの間にその身を置いた。スピンする車をドンッ!! と乱暴に蹴り飛ばして、その方向を変える。それと同時に突っ込んでくる大型トラック。それに撥ね飛ばされる直前、龍の忍者の身体は空にふわりと舞った。トラックにぶつかる、本当にぎりぎりのところを、彼はトンボを切ってかわす。
 しかし、トラックのドライバーも、目の前の事象に驚いてしまったのだろう。突っ込んできたトラックも、そのバランスを失って横転していた。しかもあろうことか荷台のひもが切れて、鉄骨が派手な音を立てて四散する。
「―――――ッ!!」
 龍の忍者は飛ぶ鉄骨の方向を見て、咄嗟に触れたり弾いたりして、その方向を微妙に変える。しかし、ハヤブサが弾き損ねた一本の鉄骨が、派手な音を立ててキョウジのアパートの窓に突き刺さってしまった。

「キョウジッ!!」

 龍の忍者は大声で叫びながら、キョウジのアパートに走り込んでいった――――


 ハヤブサは蹴破る様に玄関のドアを開け放つ。
「キョウジ!! 無事か!?」
 大声で叫びながら、ドカドカと中に入って行った。靴を脱ぐべきかと一瞬迷ったが、鉄骨が飛び込んだ部屋の中はきっと、壁やらガラスやらの破片で大変な事になっているだろう。靴を脱ぐほうがかえって危ないと判断したハヤブサは、そのまま鉄骨が飛び込んだ部屋を目指す。
 呼びかけても返事がないのが気がかりだった。
 無事でいてくれ、キョウジ。
「キョウジ!!」
 ハヤブサは問題の部屋のドアを勢いよく開け放って―――――

「……………!」

 一瞬絶句した後、やれやれ、と、肩を落として小さなため息を吐いた。
 目の前で座り込んでいたキョウジが振り返ってハヤブサの姿を認めると――――少し縋る様にハヤブサに声をかけて来た。
「あ……! ハヤブサ……!」
「キョウジ……! 無事だったか……」
「あ、ああ……。私は、無事だったんだけど――――」
 顔面蒼白になっているキョウジが、ゆっくりと鉄骨の方に振り向く。鉄骨の下にシュバルツの身体があり、その首から上が無くなっていた。おそらくキョウジを飛んできた鉄骨から庇って――――その様な状態になってしまったのだろう。
「シュバルツ……! シュバルツが……!」
 シュバルツを見つめながら茫然と呟くキョウジの背中越しに、ハヤブサは壁にかかっている時計を見る。その時計は、10時31分を指していた。それから更に、カチッ、カチッ、と、1秒ごとに秒針が進んで行く。

 キョウジを失った10時26分は、とうに過ぎ去っていた。
 キョウジの止まってしまった『時間』を、取り戻す事が出来たのだと―――――龍の忍者はようやく悟った。

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