農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 253 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/04/01 23:34   >>

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 シュバルツを助けられたのは嬉しい。
 だけどその為に、屁舞留を犠牲にしてしまう事はなかった。
 いくら屁舞留の寿命がもう尽きかけている、と言っても
 シュバルツを助けるために犠牲になるのは、やはり、自分の役目だったのではと、キョウジは思うのだ。

 だって、屁舞留は望まれていたではないか。
 村人たちが『共に居たい』と、望んでくれていたではないか。
 同じように寿命を迎え、天に召されるにしても
 大好きな村人たちに囲まれて、静かに最期を迎える道も、屁舞留にはあった筈なんだ。

 それなのに

 どうして―――――!


 そうやって、どれだけ泣いていた事だろう。

 小さくうずくまって、嗚咽を漏らし続ける自分に、声をかけてくる者が居た。

「貴方が、キョウジ殿ですか?」

「―――――!」
 ビクッと、キョウジが顔を上げると、1人の青年が、静かにこちらを見つめていた。
 その青年は、道士風の着物を身に纏い、銀髪の長い髪をそよと風になびかせている。そして、その背後に輝く金の光背と、そこから漂う穏やかな『神気』が、キョウジにこの青年が神仙の類である事を知らしめていた。
「あ………!」
 慌てて涙を拭い、立ち上がる。
「すみません……! お騒がせをしてしまったでしょうか?」
 恐縮して謝るキョウジに、その神仙の者も頭を振った。
「いえ……。私も貴方を探していたのです。一言、礼を言いたくて」
「えっ……? 礼を、ですか?」
 神仙界の者から「礼」を言われる覚えが全くないキョウジがきょとん、としていると、その青年はにこりと優しく微笑んだ。

「屁舞留から話を聞きました。屁舞留が、貴方に大変お世話になったようですね」

「えっ!?」
 意外すぎる言葉を聞いたキョウジが驚いていると、青年の方が名乗ってきた。

「我が名は、『神農』です」

「神農――――! 貴方が……!」

 キョウジは思わず息を飲む。
 『神農』と言えば、屁舞留が尊敬してやまない、神仙界の者の中でも、上位の『神気』を持つ者だ。それが、どうしてわざわざここに……? それも、『屁舞留から話を聞いた』って………!?
 まさか―――――

「『屁舞留』は、今、ここにいます」

 そう言いながら神農は、キョウジに手を差し出してくる。その手の中には、か弱く光る、小さな玉があった。
「これは――――?」

「これが、『屁舞留』です」

「…………!」
 驚き、息を飲むキョウジに、神農は優しく微笑みかけて来た。
「屁舞留は、完全に消滅してはいません。『神気』を限界まで使い果たして、このような姿になってしまいましたが――――ちゃんと、命を繋いでいます」
「屁舞留……!」
 信じ難い思いで、キョウジは神農の手の中に光る、小さな玉を見る。その玉は、あの屁舞留が纏っていた光と同じ、優しく淡い色を湛えていた。
「でも屁舞留は、もうすぐ自分の寿命が尽きると言っていましたが――――」
 大丈夫なのでしょうか? と、問うキョウジに、神農は少し苦笑した顔を見せる。
「そうですね……。この子は生まれてすぐに人間界に落ちてしまいましたから――――神仙としての基本的な修行も、『神気』の蓄えも出来ていないままなのです。あまりにもか細い『神気』であったが故に、見つけるのに、100年かかってしまいました」
 そう言って穏やかに笑う神農に、キョウジもあんぐりと口を開けるしかない。さすが神仙。100年単位で物を考えているような節があるんじゃないかと思ってしまう。
「あの清流の中で屁舞留を見つけてからは、時々様子を見に来ていたのですが……神仙界でする修行と同じように、充実した時を屁舞留が過ごしていたので、そのまま黙って見守ることにしていたのです」
 そして、200年目に村人たちにその身を拾われた時には、屁舞留にはもう立派に『神仙』としての心構えができていた。村人たちの『祈り』を糧に、屁舞留は霊体を獲得して、村の『土地神』として、成長して行く。
「ですが、戦に遭い、『神気』を注ぎ続けた村が焼かれ、人々も死に絶え――――屁舞留はそれで、かなり消耗してしまっていたのも確かです。失った『神気』を、もう一度取り戻す術を持たない屁舞留は、あのまま放っておけば、本当に消失してしまっていたことでしょう」
 その時に現れた、時空や磁場を乱す妖気を纏った『妖蛇』
 その力によって、再び現れた『村』
 そして、迷い込んできた『人の子』
 どうなる事かと静観していたが――――

「屁舞留は……立派に役目を果たしましたね。褒めてやりたい。そう思います」

「……………!」

 止めた筈の涙が、また思い出したように溢れだして来てしまって、キョウジは慌てた。
「貴方にも、礼を言わねば」
 神農のその言葉に、キョウジは懸命に首を振る。
「違う……! 私は何もしていません……!」
 村を救うために奔走したのは、ハヤブサやシュバルツ達だ。
 村人たちの生活を支えるために、畑や植物に『神気』を注いでいたのは屁舞留だ。
 自分はそれらを傍観していたに過ぎないのに――――
「でも、貴方は屁舞留を支えてくれた。喜びも哀しみも、共に分かち合った」
「いいえ……! 支えられていたのは、私の方です……! いつも、屁舞留は――――」
 後はキョウジは、言葉にする事が出来なかった。
 どんな時でも「キョウジ、キョウジ」と、屈託なく声をかけて来てくれた屁舞留。それに、自分はどれほど支えられた事だろう。

「ですが、貴方と共に過ごした時間が、屁舞留の『土地神』としての成長を促し、貴方の祈りと村人たちの祈りが――――屁舞留の命をかろうじて未来に繋がせた。それは、紛う事無き事実です。私も、この子を完全に失わなくて良かったと―――――心から、そう思っています」

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