農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS されど、龍は手を伸ばす。 254 ――無双OROCHI異聞録―――

<<   作成日時 : 2015/04/03 01:11   >>

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「屁舞留……」

 キョウジは涙を拭いながら屁舞留を見つめる。優しく淡い屁舞留の光が、とても愛おしかった。
「屁舞留は……これからどうなるのでしょうか……?」
 キョウジの問いかけに、神農は優しく笑いかける。
「屁舞留は、今完全に『神気』を失っている状態なので、神仙界でそれが回復するまで、眠りにつく事になります。また回復をすれば、霊体を取り戻す事も出来るでしょう。もしかしたら、またどこかの『土地神』として、赴く事もあるかもしれません」
「また、屁舞留に会えますか?」
 その問いかけには、神農は少し考え込んだ。
「………そうですね。貴方と屁舞留と、そして運命が望めば、また、会う事も出来るかも知れません。ただ………」
「ただ……何ですか?」
 小首を傾げるキョウジに、神農は少し眉をひそめた。

「ただ……屁舞留の方が、貴方の事を覚えているかどうか……。屁舞留は、ほぼ死んでいるのと同じ状態です。回復した時に、記憶の引き継ぎが行われている可能性は皆無に等しい。もしも貴方と再会しても、屁舞留はそれと気づかないかもしれません……」

 神農のその言葉に、しかしキョウジは笑顔を見せた。
「それは、構いません。屁舞留がもう一度元気になって、また、どこかであんな風に、土地を、人を愛して行くのなら――――私はそれで、充分です」
 キョウジの言葉を聞いて、神農も「そうですか……」と、優しい笑顔を面に浮かべた。

「さて、それでは私はそろそろ行きます。屁舞留を早く回復させてやらねば……。キョウジ殿、本当にお世話になりました」

「いいえ……。こちらこそ、本当に、ありがとうございました」
 そう言ってキョウジは神農に向かって頭を下げる。

 変わり物の自分を、受け止めてくれた。
 シュバルツを、助けてくれた。
 本当に――――屁舞留には大恩を受けたとキョウジは思う。

「では―――――」

 神農はそのまま掻き消えるように、姿が見えなくなってしまった。独りになったキョウジの頬に、また、一筋の涙が伝う。

 ………泣くな、キョウジ………。

 何処からか、屁舞留の優しい声が聞こえる。
(そう言えば、自分もシュバルツに『泣かないで、哀しまないで』と、言ったよな)
 そう思い出して、キョウジは苦笑していた。屁舞留がこの言葉を言った時は、自分がシュバルツと相対した時と、同じ心境だったのだろうか。
 幸せで、満ち足りていて、でも別離の哀しさに胸が締め付けられて。
 だとしたら、屁舞留を心配させてはいけないから、自分は、泣きやまなければならないのに――――。

「はは……。無理だよ、屁舞留……」

 後から後から溢れてくる涙。自分は、泣くこと以外に、この喪失の哀しみを癒す術を知らなかった。
(屁舞留………どこへ行っても、どうか元気で――――)
 心の中で屁舞留に別れを告げながら、キョウジは独り、涙を流し続けたのだった。


「………これで、私の話は終わり、だよ……」
 キョウジはそう言いながら、握っていたシュバルツの手を、そっと離す。キョウジが顔を上げると、はらはらと静かに涙を落とし続けるシュバルツの姿が、そこにあった。
「シュバルツ……」
 キョウジがそっとシュバルツの頬に手を伸ばし、涙を拭うと、シュバルツもようやく、その口を開いた。

「キョウジ……ッ!」

「うん」

「ハヤブサ……! そして、屁舞留も……! 私は一体、どうすれば………!」
 そう言いながらシュバルツは、己の身体をぎゅっと抱き抱えるようにして震えながら、静かに涙を落とし続けている。キョウジは優しく微笑むと、シュバルツの肩にそっと手を置いて、口を開いた。

「生きなきゃ、駄目だよ。シュバルツ」

「―――――!」

「貴方は今、ハヤブサやその仲間の人たち、そして、屁舞留に望まれて、ここにいるのだから――――」

 キョウジの手が、シュバルツの髪を優しく撫でる。
 必死に手を伸ばし続けてくれた、ハヤブサや皆のためにも。
 限界まで『神気』を与え続けてくれた屁舞留のためにも。


「ちゃんと、生きなくちゃ」


「キョウジ……ッ!」

 いろいろと溢れてくる感情に、耐えきれなくなってしまったのだろう。シュバルツの瞳から、大粒の涙が零れ始めた。
「キョウジ……ッ! キョウジ……ッ!」
 縋る様に名を呼び、肩を震わせるシュバルツ。キョウジはそんなシュバルツを、優しく抱きしめた。
「キョウジ――――!」
 シュバルツもキョウジを抱きしめ、そして泣き続けた。
「シュバルツ……」
 キョウジもシュバルツを抱きしめながら、いつしか涙を流していた。
(ハヤブサ………そして、屁舞留………ありがとう……)
 心の中で、感謝の言葉を紡ぐ。

 貴方たちはシュバルツに―――――生きる『動機』をくれたんだ。

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