農家の嫁の日記

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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 31

<<   作成日時 : 2015/07/28 00:02   >>

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 ならば、ハヤテの愛を素直に受け入れれば良いのにと思う。
 だが、こんな時でさえ、自分が会いたいと願うのは、シュバルツ唯一人だった。
 全身をハヤテに穢されている自分に、そんな資格などもう無い事は嫌と言うほど分かる。
 だけど、こんな時だからこそ、自分が縋るのはシュバルツとの記憶だった。
 シュバルツを愛し、愛された優しい記憶。
 それが、壊れそうになる今の自分を支えていた。

 シュバルツ。
 シュバルツ。

(会いたい……!)

 叶わないのは分かっている。
 だがそれでも、ハヤブサは、月明かりの向こうに愛おしいヒトの姿を探してしまう。

 声が聞きたい。
 もう一度触れたい。
 触れて欲しい。
 そのうちなる優しい『光』で、もう一度俺を包んで欲しい。

 分かっている。
 叶わぬ願いだ。
 それでもまだ
 尚もそれが欲しいと足掻き続けている、俺はいったい何なのだろうか。

「……シュバルツ………」

 闇に落ちて行くしかないと分かっているその言葉を、ハヤブサは呟く。帰って来るのは、沈黙ばかりの筈であった。
 だがしかし、その日の夜は、少し違った。

「………ハヤブサ……」

「――――――!!」
 聞こえる筈の無い声が聞こえて、ハヤブサは思わず跳ね起きてしまう。
「シュバルツ……?」
 闇の中、懸命に目を凝らすが、そこには、闇ばかりしか見えない。
(幻聴か……)
 この手の幻聴はある意味聞き慣れた物でもあったので、僅かばかりの失望感と共に、頭を垂れる。だが、その『幻聴』は、さらに続いた。
「ハヤブサ………」
「シュバルツ!?」
 まさか、と、顔を上げるハヤブサの目の前に、優しく差しこんでくる月の光。
「……………!」
 その月明かりの下に、夢にまで見た愛おしいヒトの姿があったから――――

「シュバルツ……!」

 無我夢中で手を伸ばそうとするハヤブサの手首から垂れ下がった鎖が、『じゃらり』と音を立てる。それが、ハヤブサを一瞬にして現実に引き戻した。
「ハ……。俺も焼きが回ったな……。こんな所にシュバルツがいる筈ないだろう……」
 胸をかきむしられる程愛おしい幻影を見つめながら、ハヤブサはため息を吐く。すると、今度はその『幻影』が苦笑しだした。

「勝手にヒトを幻にするな。ちゃんと、私はここに居るよ」

「―――――!!」
 はっ、と、息を飲みながら顔を上げるハヤブサに、シュバルツはにこりと微笑みかける。

「シュバルツ……!? 本当に……!?」

 震える声で問いかける自分に、シュバルツは「ああ」と頷き返してくれる。

「ああ………!」

 会いたかった。
 会いたかった。

 もう一度手を伸ばそうとして―――――自分の今の状態を、ハヤブサは思い出してしまう。
 鎖につながれ、全身をハヤテに穢されてしまっている自分は、彼を裏切っているも同然だ。シュバルツに触れる資格などありはしない―――――そう思った龍の忍者は、硬い表情をして、その手を下におろしてしまった。

「ハヤブサ……」

 ハヤブサの事情を知り、何となくその気持ちを察したシュバルツの瞳が、哀しみゆえに曇る。
(構わないのに)
 ハヤブサがどんな状態であろうと、自分がハヤブサを愛している事に変わりは無い。だから、シュバルツはその一歩を踏み出す事を、躊躇わなかった。スッと静かに進んでくるシュバルツの足。ハヤブサは思わずそれから逃れようとして、後ずさろうとする。だが自分が動こうとするたびに、『じゃらり』と音を立てる鎖。その音が、ハヤブサを暗澹たる気持ちに落とし入れ、その音を聞きたくないが故に、彼はその場で身を固くして、小さくうずくまることしか出来なかった。
「……………」
 シュバルツが、すぐ近くで座る気配がする。
「……触れても、良いか……?」
 優しく問うてくる声。だがハヤブサは、それに小さく首を横に振った。
「シュバルツ……」
 その名を口にした瞬間、ハヤブサは人目もはばからずに泣き出してしまいたくなる衝動にかられる。だが、懸命に堪えた。いつ、ハヤテがこの部屋にやって来るかも分からぬこの状況。シュバルツの身を、危険にさらす訳にはいかないと思った。
「せっかく来てくれたのに悪いが……どうか、このまま帰ってくれ……」
「ハヤブサ……!」
「俺は良い。それよりも、ハヤテがいつ来るかも分からないんだ。だからどうか、このまま―――――」

「ハヤテ殿は、今宵里にはいない……」

「―――――!!」
 驚いて顔を上げるハヤブサに、シュバルツは静かに頷いた。
「……ここに、手引きをしてくれた者が居るんだ。今、部屋の外を見張ってくれている」
 部屋の外ではあやねが、油断なく辺りを見回しながら立っていた。
 そして、『ハヤテの屋敷を警護する』と言う理由で、あやねの息のかかったくのいちたちの一隊が、この屋敷を囲んでいた。
「今は詳しくは言えないが、その人が、私がもう一度この里から出るまでの間、私の安全を保障してくれると言った。私は、その言葉を信用できると思う」
「本当に……?」
 茫然と呟くハヤブサに、シュバルツは頷いた。

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