農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 43

<<   作成日時 : 2015/08/12 00:13   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 静かに眠り続けるハヤブサの表情は、やつれているとはいえ、穏やかな物で、とても内面に、そんな葛藤がある様には見受けられない。
「リュウ………」
 ハヤテは、ハヤブサの髪をそっと撫でる。すると、ハヤブサの方が、僅かばかりの身じろぎをした。ツ……と、一滴の涙が、その頬を伝う。ハヤテが、そっとその涙を救うと、ハヤブサの唇が動いた。

「シュバルツ……」

「――――――!」

 絶句する。
 息を飲む。
 その名は、大分前に聞かなくなっていた。だからてっきり、ハヤブサの中ではけじめがついたもの、と、思っていたのに。

 まだ、想い続けていたと言うのか。
 リュウ、お前は―――――

 もう一度、ハヤブサの唇が動く。

「シュバルツ……」

 だがハヤブサは、その名を口にした途端、苦しそうに頭を振りだした。

「だ……駄目だ……! 駄目だ……! 思い出しては……!」
「リュウ………!」
「ハヤテ……! ハヤテ……! ハヤテが………!」
 そのまま、酷くうなされだすハヤブサ。彼の瞳から、血の色の涙が零れ落ち始めた。
「ハヤテ……ッ! 俺は……ッ!」
「リュウ!!」
 たまらずハヤテは、ハヤブサを揺り起こす。
「―――――――!」
 はっと、目を開けたハヤブサは、目の前のハヤテを視界に捉えたその一瞬――――――酷く哀しげな瞳をして、それから、ふわりと微笑んだ。

「ハヤテ………」

「リュウ………!」
 ハヤブサが、ふらふらと手を伸ばしてくる。そっと優しく握りかえしてやると、ハヤブサは、酷く幸せそうに―――――笑った。本当に、酷く、幸せそうに――――
「―――――――」
 そして、そのまま糸が切れたかのように、昏倒してしまった。
「リュウ!! リュウ!!」
 必死に呼びかけると、ハヤブサは僅かに身じろぎをする。ハヤテはホッと胸を撫で下ろした後、その瞳から大粒の涙を零し始めた。
(リュウ……! お前本当は……願っているのではないのか……? 『会いたい』と……)

 会いたいと
 愛したいと
 願っているのではないのか。

 お前が心から愛した
 あの、『最愛のヒト』に―――――

 願っているのに、ハヤブサは
 ずっとその願いを押し殺して
 殺し続けて―――――

『俺のため』に………!

「リュウ………!」

 たまらずハヤテは、ハヤブサの身体を抱きしめていた。

 馬鹿な奴だ……!
 恋人と共に幸せそうに居たのを、無理やり自分の方に引きずり込んだのは俺だ。
 そのまま強引に自分の物にして、お前を踏みにじって―――――

 今ならば分かる。
 自分は、ただ子供じみた独占欲を満たそうとしていただけだ。
 お前に、振り向いて欲しくて。ただ、それだけの理由で。

 なのに、お前は―――――

 理不尽な事をした俺を、責めるでもなく
 それどころか、俺を愛そうと努力してくれていた。

 でも、お前の真っ直ぐな心は、嘘がつけないから―――――

 結局お前は、自分の心と体を壊して行かざるを得なくなってしまったのだ。

 そんなになってまで、俺を愛そうと、尽くそうと、してくれたお前に
 俺は一体、何をしてやれるのだろう―――――

 ハヤテは、はらはらと涙を落としながら、ずっと、ハヤブサの枕元で彼の寝顔を見つめ続けた。そして、考え続けた。
 そうやって――――どれだけの時が、経っただろう。

(……今なら、まだ間に合うだろうか………)

 里の医師たちも匙を投げた、ハヤブサの身体。
 だが、もしも
 生きる気力を、彼が取り戻してくれるのなら―――――

 『龍の化身』と言わしめたリュウの事だ。
 もしかしたら、彼は死なずに済むかもしれないのだ。

 丑三つ時を過ぎて、払暁近くになる頃に、ようやくハヤテは顔を上げた。

 やはり俺は、リュウには生きていて欲しい。
 生きていて欲しいのだ。

「リュウ……」
 そっとハヤテが彼に触れると、ハヤブサは薄く瞳を開けた。
「ハヤ……テ……?」

「少し、外に出ようか」

 そう言って、ハヤテはハヤブサを、抱き上げていた。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

ただひたすらに、君を想う。 43 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる