農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 8

<<   作成日時 : 2015/08/30 06:36   >>

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「夕食、食べていないだろう。何か食べるか?」
 シュバルツの提案に、ハヤブサも頷く。
「そうだな……。あまり腹は減ってはいないのだが………」
「それでも少しぐらいは食べないと――――よくはならないぞ?」
 やれやれ、と、ため息を吐くシュバルツに、ハヤブサも苦笑する。
「仕方がなかろう……。食べなければならんと分かってはいるのだが―――――」
 実際、食欲の戻っていないハヤブサは、食事を無理やり食べてもまだ、吐いてしまう事の方が多かった。だが、彼の内臓の方に何らかの異常がある訳でもないので、この現象にはキョウジも、そしてシュバルツも首を捻るしか無い。何か心理的な事が原因なのかと考えたりもしたのだが―――――
「とにかく、少しでも食べられそうなら食べてみよう、ハヤブサ……。キョウジがお粥を作ってくれているはずだ。それを温めて持ってくるから――――」
「ああ、頼む」
 シュバルツが部屋から出て行くのを、ハヤブサは穏やかな表情で見送っていた。


(それにしても、ハヤブサは……今日は、少しでも食べてくれるかな……。本当に、何時になったら、彼の食欲は戻って来るのだろう……)
 くつくつと音を立てる小さな土鍋を見つめながら、シュバルツは小さなため息を吐く。
 ハヤブサの容体が停滞状態になってから半月―――――少しでも、改善の兆しが見えてくれば、ハヤブサも私も、もう少し希望が持てるのに………。
 そう思ってしまってから、シュバルツは頭をブン、と、横に振る。

 ハヤブサは、こんな所で終わる奴じゃないんだ。
 必ず治る筈なんだ。
 それを私が信じずしてどうする――――!

 そう強く、シュバルツは自分で自分に言い聞かせる。
 ハヤブサだって、生きようと、治ろうとする意志はある。希望は持てる筈だった。
 充分温もった土鍋を鍋敷きを置いた盆の上に置き、ハヤブサの部屋へと運ぶ。その道中で、ハヤブサの居る部屋からカタン、と、物音がしたのを、シュバルツの耳が捉えた。
(……何だろう? ハヤブサが起きているのかな……?)
 そう思ったシュバルツは部屋を覗き込んで――――――信じ難い光景に、絶句した。

「な…………!」

 何故なら、ベッドから起きあがったハヤブサが―――――子供たちが持ってきた花をへし折り、千羽鶴をぐしゃぐしゃにして引きちぎろうとしていたから―――――

「ハヤブサ!? 何をやっているんだ!? お前!!」

 思わず大声を出すシュバルツに、ハヤブサがビクッと反応する。

「あ…………?」
 そしてハヤブサの方も、手に持っている千切れかかった千羽鶴を見て、茫然としていた。
 どうやら彼の方も―――――シュバルツの声で初めて『我に帰った』らしい。
「ち、違う……! 俺は………ッ!」
 みるみる顔面蒼白になって、がたがたと震えだすハヤブサ。
「こ、こんな……! どうして………!」
 そのままハヤブサの身体がぐらりと傾いで、倒れそうになるから――――

「ハヤブサ!!」

 シュバルツは慌ててお粥を置いて、ハヤブサの傍に走り寄る。床に激突しそうになるハヤブサの身体を、寸での所で受け止めた。

「ハヤブサ………!」

 シュバルツが呼びかけるが、ハヤブサは腕の中でがたがたと震え続けていた。
「いやだ……! こんな………! 何で……! 何故だ………!」
「ハヤブサ……!」
 床に散らばった花々と、ぐしゃぐしゃにされてしまった千羽鶴の姿が目に刺さる。シュバルツは、それらをハヤブサから隠すようにすると、震え続けるハヤブサの身体を、そっと抱きしめた。

「どうしたの!? 一体何があった!?」

 シュバルツの大声を聞きつけて、キョウジも部屋に飛び込んでくる。そして、花々と千羽鶴の惨状を見て、彼もまた絶句していた。
「…………!」
 キョウジもまた、慌ててハヤブサの傍に駆け寄ろうとする。しかしそれを、シュバルツが合図を送って押しとどめていた。
(私に任せてくれ)
 彼の瞳がそう訴えているのを見て、キョウジは足を止めた。

「ち……違う………! 何で……ッ!」
 聞き取れないほどの小さな声で呻き、震え続けるハヤブサ。
「分かっている……! 大丈夫だ、ハヤブサ………!」
 そんなハヤブサの髪や背を、シュバルツは優しく撫で続けた。
「お前は、こんな事をする奴じゃない。そうだろう?」
「……………!」
 ハヤブサは瞬間目を見開いた後、その瞳からポロポロと、涙を零し始めた。
「そ……それでも……! 手に持って、引き裂いていたのは『俺』なんだ……ッ!」
 我に帰った瞬間の、手の中に在った千切れかかった千羽鶴の感触が、ハヤブサの手にははっきりと残っている。
「どうして――――! せっかく、子どもたちが……! 里の皆が―――――!」
 そう言ったきり、後は言葉にならず、泣き崩れてしまうハヤブサ。
「ハヤブサ……!」
 シュバルツはそんな彼の身体を抱きしめ、優しく撫で続ける。

 彼がどうなろうと、自分は見捨てる気はない。

 ハヤブサにそう伝えるために――――。

「シュバルツ……!」
 ハヤブサは、そんなシュバルツの身体に縋りついてきた。暫く、部屋の中に龍の忍者の慟哭にも似た泣き声が響く。
「………………」
 キョウジはただ立ちつくして、そんな二人を見つめていた―――――。


 そうして、どれぐらいの時が経っただろう。
 涙も枯れて来たのか、それとも無く体力が尽きたのか――――ようやく、落ちついてくるハヤブサ。シュバルツは、そんなハヤブサを優しく抱きあげると、そっとベッドに寝かしつけようとした。しかしハヤブサは、それに弱々しく抗っていた。
「いやだ! 眠りたくないんだ……!」
 そう言ってハヤブサは、シュバルツの身体に縋りつく。

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