農家の嫁の日記

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zoom RSS ただひたすらに、君を想う。 40

<<   作成日時 : 2015/08/09 00:02   >>

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 その頃龍の忍者はと言うと――――天神流の里で、病の床に臥していた。
 シュバルツの手を拒絶してから、常に自分の心を殺し、そして、引き裂いてきたハヤブサ。
 まるで、自分を呪い続けるかのようなその行為は、ハヤブサの心と、そして身体をも蝕んで行く。
 それでもハヤブサは、ハヤテの愛に応えようと努力していた。
 自分を『好きだ』と言ってくれたハヤテ。
 彼には―――――何の落ち度もないのだから。

 だが、ハヤブサが『ハヤテ』と、その名を呼ぶたびに、心の中によぎるのはあの愛おしいヒトの影。

 違う。
 これは違う、と、ハヤブサは何度もそれを否定する。
 その影に、刃をつき立てる。
 だがその刃は、そのまま自分に跳ね返ってきた。

 痛い。
 ココロが痛い。

 早く死ねばいい。
 死んでしまえばいい―――――

 彼のヒトを思い出しても、何も感じなくなるくらい
 ココロが、死んでしまえば良いのに――――――

 それは、緩慢な自殺を試みるに似ていた。
 龍の忍者は、日々、衰弱して行った――――――


「リュウ……!」

 勿論ハヤテが、ハヤブサが目の前で弱っていくのを、手をこまねいて見ている訳ではなかった。
 名医がいると聞けば、どこへでも駆けつけ、里につれて来た。
 身体に良い薬があると聞けば、どのような手段を用いてでも、それを手に入れた。
 だが、どの医者も薬も――――ハヤブサに対して有効な治癒手段にはなり得なかった。

「リュウ……。お前、また食べていないのか……?」

 ハヤテが頭首としての用事を終えて、里の外から帰って来ると、ハヤブサに出されたと思われる夕食が、綺麗にそのまま残っていた。上半身を布団から起こして、窓の外を見ていたハヤブサが、ハヤテの姿を認めてふわりと微笑む。
「ハヤテ……。帰っていたのか」
「リュウ……! お前、また痩せたんじゃないのか……!?」
 ハヤテの指摘に、ハヤブサは苦笑するしかない。
「済まない……。でも……食べられなくて………」
「お前の好きな物ばかりじゃないか……! それでもか?」
 それにハヤブサは困ったように微笑むだけだった。
「……………ッ!」

 もちろんハヤテは、「食べられない」というハヤブサに、何とか食事をさせようと試みていた。無理やり口に食事を詰め込んだこともある。とにかく栄養を取ってくれなければ、治る物も治らないからだ。元気になって欲しい一心であった。
 しかし。
「う………ッ! ガホッ!!」
「リュウ!!」
 そのたびにハヤブサは、口に入れられた物を、全部吐いてしまう。
 慌てて介抱しようとするハヤテを、ハヤブサは懸命に押しとどめようとする。
「駄目だ……。ハヤテ……! 汚れる……ッ!」
「何を言っているんだ、リュウ!! 吐くなら、ちゃんと吐け!!」
「ハヤ……ううっ! ぐ……!」
 結局ハヤブサは、胃液まで吐いて、そしてようやく落ちついた。茶と、梅干しを僅かばかりかじり―――――その日の夕餉は、それで終わってしまった。
 そんな事が度々続いた。


 琥珀色の長い髪をさらりと流し、色白で、薄絹の着物を纏ったその人は、痩せてやつれて来た事で、その美しさと儚さに、一層拍車がかかっていた。
「リュウ……」
 まるで、呼び止めて繋ぎとめておかなければ、そのまま天に召されてしまいそうな気さえする程に―――――
「ハヤテ………」
 ハヤテの呼び掛けに、ハヤブサはふわりと笑って答える。自分がその肩に触れると、ハヤブサもその手にそっと、己が手を添えて来てくれた。

「今日は……抱かないのか……?」

 そして、その笑顔のまま、そう聞かれる。
「……………!」
 自分が弱り切っているのに、なおも身体の関係を望んでくるハヤブサに、ハヤテも、狂気じみた何かを感じぬわけではない。
 だが、求め続けなければ。
 俺には、お前が必要だと、そう言い続けなければ―――――
 目の前のこの美しい人を、完全に失ってしまいそうで怖かった。
 何とか自分に繋ぎ止めたくて、失いたくなくて――――ハヤテは今宵も弱り切ったハヤブサを抱いた。

「ああ……! ハヤテ……!」

 幸せそうに微笑み、自分の身体に縋りつき、甘やかに喘ぐハヤブサ。
 自分は―――――確かに、ハヤブサを手に入れていた。
 これは、自分が望んだとおりのハヤブサの姿だ。

 だが。
 どこかから、誰かの、別の声がする。

 ――――本当ニ、ソウカ?

「…………!」

 ――――本当ニ、コレハ、オ前ガ望ンダ『ハヤブサ』ノ姿 ナノカ?

 ハヤテは、懸命に頭を振った
 気づきたくない。
 気づいてはいけないと思った。

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