農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 龍と剣と、その拳と 26

<<   作成日時 : 2015/09/26 00:57   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

「里が襲われた時―――――」
 ハヤブサは話しながら、相手の男の顔をちらりと見る。
 目の前に居るのは、間違いなく里を襲って来た鬼蜘蛛党の党首。血に飢えた瞳をぎらつかせながら、残虐に赤子を引き裂いていた姿を、忘れる事など出来ない。
 なのに何故―――――自分は、この男とこんな話をしようとしているのか。自分で自分の行動が、ハヤブサは不思議で仕方がなかった。
 それに目の前に佇むこの男から感じる、違和感は何なのだろう。
 赤子を引き裂いていた時のあの男と、今の目の前に居るこの男を、何故かイコールで結び付ける事が出来ない。この静かな佇まいの男が、本当にあの残虐な行為をした人物なのかと疑いたくなるほどだ。
(しかし……『外見だけで判断するな』とは、父上も仰っておられたしな……)
 ここまで思い至って、ハヤブサはとりあえず、あれこれと考え込む事を止めた。
 自分の身体の秘密をあっさりと曝し、会ったばかりの自分に向かって『龍剣の使い手』と言いきったこの男と、話をしてみたいと言う好奇心の方が、ハヤブサの中では勝ってしまっていた。
「父は皆を守るために、敵と戦っていた。俺はそれをお助けしようと傍に走り寄って行った。そうしたら―――――」


「リュウ!! お前は里の奥の祠に行き、『龍剣』を手に入れて来い!!」
 敵と戦いながら、ハヤブサの父―――――ジョウ・ハヤブサは叫ぶ。それにハヤブサは否やを唱えた。
「何故ですか!? 父上! あれは里の秘宝中の秘宝。選ばれし者にしか、それは手にする事が出来ないと―――――!」
「今その龍剣の力が必要なのだ!! 早く行け!!」
「でもそれは、父上の役目では―――――!」

「違う!! それは、お前でなければならぬのだ!!」

「…………!」
 父に強くそう言い切られて、ハヤブサは絶句する。
「行け!! 早く!! そして、皆を救うのだ!!」
「父上……!」
「リュウ様!! お早く!!」
 その声に振り返ると、里の者たちも皆、各々の手に戦うための武器を持って、父の後に続いていた。
「私たちは大丈夫です!! ですから早く!!」
「首尾よう龍剣を手に入れて、早く戻って来て下せぇ!!」
「それまで我々が、リュウ様に変わってジョウ様をお守りいたします故――――!!」
「皆……!」
 しばらく茫然としていたハヤブサであるが、やがて、皆の声に後押しされるようにその顔を上げ、踵を返した。そして、里の奥の祠を目指した。背後に、燃え上がる炎と、人々の悲鳴と怒号を感じながら―――――

 石段を駆け上がり、いくつもの鳥居をくぐり抜ける。その先に、目指す祠はあった。
 酷く静謐で、どこか、素朴ささえ感じさせる小さな祠。
(龍剣は!?)
 その中で、ハヤブサは懸命に目的の物を探す。すると、祠より更に奥まった場所に在る小高い丘の上に、淡い輝きを放つそれを見つけた。
「…………!」
 ハヤブサがその傍に走っていくと、何がどういう仕組みになっているのか、透明な巨大な『石』の様な物が、そこに淡い輝きを放ちながら浮いていた。そしてその中に、龍剣が収められていたのだった。
(これは……どうやって取り出せばいいんだ……?)
 ハヤブサが茫然と見つめていた矢先に、上空から『闖入者』が降って来て―――――
 そして、現在に至る、と言う訳であった。

 話を終えた切り、座り込んでしまっているハヤブサの傍に、男は歩み寄って来ると、「ほら」と、言いながら、手に持つ刀を差し出してきた。
「えっ?」
「返すよ。君の刀だろう?」
「な…………! 正気か!?」
 唖然とするハヤブサに、男はにこりと微笑みかける。その笑みを『どこかで見た事がある』と、感じてしまうのは何故なのだろう。
「言った筈だ。リュウ・ハヤブサ……。私は、君と争う気はないと」
「……………ッ!」
 ばっと、ひったくる様に剣を手に取りかえす。それを鞘に収めながらじろりと男を睨みつけると、男は苦笑しながら口を開いた。
「どうしても、私を斬りたいか? 切り刻みたいなら付き合うぞ? 死なないから、本当に切り刻むだけになるが――――」
「もういい!! そんな不毛な趣味は無い!!」
 怒鳴りつけて、プイッと視線を逸らした。本当に男の方が、自分の事を敵視も警戒もしていないのだと感じて、何だか悔しくて腹立たしい気持ちになる。こいつを『仇』だと、睨みつけている自分の方が、まるで馬鹿みたいではないか。
(『龍剣』だと、自分は死ぬのだと言っていたな……)
 男の言葉を反芻して、ハヤブサはギリ、と歯を食いしばっていた。
(見てろよ……! 必ず龍剣を手に入れて、この男を慌てさせてやる……!)
 そこまで思い至ってから、ハヤブサは一つ大きなため息を吐いていた。
(それにしても馬鹿としか言いようがないな。この男は……。自分のそんな大きな身体の秘密を、あっけなく俺などに話して………)
 敵視も警戒もしていないのにも程があり過ぎる。まさに、毒気が抜かれるとはこのことだとハヤブサは感じた。

 それにしても妙だ。
 この『毒毛が抜かれる』感覚を、自分は、前にもどこかで味わっていた様な気がする。
 それは、何処なのだろう。
 何故なのだろう。
 思い出せそうなのに思い出せない。それが、少し歯痒くもあった。

「これが、その『龍剣』だ……」

 ハヤブサは男と共にこの龍剣の前まで話しながら歩いて来て、不思議な感覚に襲われる。
『龍剣』にまつわることすべて、里の中では秘中の秘とされてなければならない物だ。それを―――――
 自分はどうして、他所者にこんなにも軽々しく、それを話しているのだろう。
「……………」
 無言で龍剣を眺めている男の横顔に、ハヤブサは改めて問いかけた。
「問う。お前は、本当に『龍剣』が目当てではないのか?」
 男はちらりとハヤブサを見やると、再び龍剣に目を移しながら言った。
「ああそうだ。私は龍剣を手に入れようとは思わない。あれは『魔剣』だ。それは――――君の方がよく知っているだろう?」
「…………!」
「あの剣の危険さを少しでも理解している者ならば、それを自分の物にしようなどとは思わない物だがな」
(確かにそうだ)
 男の話を聞きながら、ハヤブサはどこかで納得していた。この龍剣は、『妖刀』の類だった。剣自体に意志があり、その『使い手』を選ぶ。剣に選ばれなかった者がそれを強引に手に取ると、剣自体が牙をむき、その者の魂を喰らうと言う。現に、何人もの血ぬられた犠牲者の話を、ハヤブサも父親から伝え聞いていた。だからこそ龍剣は里の奥に封印され、厳重に守られて来たのだが。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

龍と剣と、その拳と 26 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる