農家の嫁の日記

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災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 32

<<   作成日時 : 2015/10/05 17:37   >>

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「……………!」
「それよりも、君こそ私を気にかけている場合か? 私は『仇』なのだろう?」
「―――――!」
「それなのに……君は、優しいんだな。よく、そう言われないか?」
「か、勘違いするなよ!! お前の身を案じた訳じゃない!!」
 ハヤブサは苦し紛れに大声を出していた。
「飢えてふらふらになっているお前を討ちとっても、自慢にもならないし、後味が悪いだけだからな!! だからそうならないように声をかけただけなんだ!!」
「そうか」
 男はそう言ったきり、また視線を逸らして、静かに座りなおした。ハヤブサは、耳まで朱に染まるのを感じた。
(またやってしまった……! 『敵』に気をかけるなど――――絶対にやってはならぬと父上にも注意されていたのに………!)

 そう。
 忍びの世界において、倒すべき相手に余計な情けをかけることは、時に、自分や仲間の命を危険にさらす事に繋がってしまう。
 だから、戦いに情けや迷いは禁物だった。
『敵』は『敵』
 そう断じたなら、迷わず討つべきなのだ。

 それなのに―――――

 意識のない自分を介抱したり
 食事を差し出してきたり
 武器を取りあげられている状態を、甘んじて受け入れていたり―――――

 とにかく目の前に居るこの男の言動行動すべてが奇天烈だった。

 何故この男は、自分にこうも世話を焼いてくるのだろう?
『龍剣を手に入れさせるため』と言う目的があるにしても、少し度が過ぎている様な気がする。それこそこちらがうっかり『恩義』を感じてしまいそうになるほどだ。
 だから、それを返すつもりで声をかけてしまったのも、また事実だった。

 どう言うつもりなのだろう。
 恩義をかけたふりをして―――――こちらの動揺を誘っているとでも言うのだろうか。

 里を襲ってきたのに。
 赤子を残忍に引き裂いていたのに。
 そのたたずまいは
 その優しさは
 一体何だと言うのだろう。
 本当にこの男は―――――俺の『仇』なのだろうか。

(あ………そう言えば……)

 二個目のおにぎりを完食した時に、ハヤブサはふと思い当った。
「おい」
 思い当った事実を確認するべく、ハヤブサはもう一度、男に声をかける。
「何だ?」
「お前の刀………さっき、妙な輝きを放ってなかったか?」
 気を失う直前に見た、男の戦いの中で見た刀の輝きを思い出す。それに対して男は目をぱちくりとさせていた。
「刀?」
「そうだ。……あの刀、何か特別な力があるのか?」
 あの輝き、切れ味―――――刀の方に、何か特別な力や『銘』があるのならば、それを知りたいと思った。
 対して男は少し首を捻っていた。
「……あるのかもしれんが、私にはよくわからん」
「え?」
 きょとん、とするハヤブサに、男は苦笑した。
「分からないって………お前の刀ではないのか?」
「あれは借り物の刀なんだ。私の刀は、君に取りあげられていたから――――」
「―――――!」
 はっと気がついてハヤブサは、男の刀を取りあげて放り投げた方に振り返る。すると、その視線の先には、自分が地面に突き立てた時の状態のまま――――ピクリとも動かされていない様子の刀が鎮座していた。
「な………!」
 茫然とするハヤブサに、男は再び声をかける。
「何度も眉唾な話をして申し訳ないが――――私が使った刀は、あの観音様からお借りしたものなんだ。あの像の背に背負われていた刀をお借りして――――」
「今どこにあるんだ!? それは……!」
「元に在った場所に返したぞ?」
 男の言葉を聞いて、ハヤブサは弾かれたように走り出す。祠からはずれたところにポツンとある、小さな観音像の背を覗き込んだ。そしてそこには、男の言葉通りに鞘におさめられた刀が。
 すらり、と、ハヤブサがその刀を抜いてみて――――――絶句した。
 何故なら、その刀は―――――刀身がボロボロに錆びて朽ち果てていたのだから。
(馬鹿な……! あいつはこんな刀で、あの化け物を斬り伏せたとでも言うのか!?)

 あの美しいまでの一刀両断
 それを、こんな刀でやってのけたと言うのなら

「……………!」
 ハヤブサは、己が身体に震えが走るのを感じる。
 勿論、畏怖もある。いとも簡単に、不可能と思える事をやってのけたその剣の腕前に、舌を巻くばかりだ。
 しかし――――彼は同時に『歓喜』にも震えていた。

 見つけた
 いい『修行相手』を
 この男と自分の剣の腕の『距離』を知りたい。
 この男と互角に渡り合う
 いや、凌駕するほどにならなければ――――――

 きっと、『龍剣』は手に入らない。

 これは、確信だった。

 ばっと顔を上げて、ハヤブサが男の方を見ると、男も立ち上がってこちらを見ている。
「この刀で………お前はあの巨大な化け物を倒したのか……?」
 ハヤブサが問うと、男は「そうだ」と頷いていた。
 ハヤブサは無言で踵を返すと、男の刀を突き立てている所まで全力で走る。刀を地面から引き抜くと、男に向かって投げてよこした。
 パシッと刀を受け取る男に向かって、ハヤブサは叫んだ。

「俺と、勝負しろ!!」

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