農家の嫁の日記

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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 48

<<   作成日時 : 2015/11/04 14:12   >>

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 どうして、こんなにも心が波立つのか―――――

 知りたい。
 お前は
 お前は 誰だ?

 だが同時に、ハヤブサの心に響く、「思イ出スナ!」と、制止する声。
「…………!」
 不思議な事に、その声は二方向から聞こえて来ていた。つまり、「思い出してはいけない」と制止している者が、少なくとも二人以上はいる、と言う事だった。
(どういうことだ? これは……!)
 ハヤブサは疑問に思うが、すぐに思いなおした。

 今は、彼の正体について詮索する時期じゃない。

 つまりはそう言う事なのだろう。

「……………」
 男はしばらく推し量る様にハヤブサを見つめていたが、やがて「修業を始めよう」と、二振りの剣を取り出した。
 ハヤブサも抜刀し、無言で剣を構えなおした。
 男は今――――――仁王の戦い方を完全にその身に再現をして、ハヤブサとの剣の修業に取り組んでいた。
 自分の戦い方のスタイルを完全に変えて、尚もこの強さ――――この男は、一体どれほどの腕を持っているのだろう。

「お前の方が、強くなる」

 男は時々、こう言って自分を励ましてきた。

「だから、早く強くなれ。ハヤブサ」

 ハヤブサは、フ――――ッと大きく息を吐いて、精神を集中する。
 迷いなくまっすぐな太刀筋を手に入れるためには、余計な雑念を捨てねばならぬ。
 怒りを恨みを、捨て去らねばならぬ。
 そうして心穏やかに刀を構えていると―――――見えてくる物がある。

 太刀を通して伝わってくる、男の『人格』の様な物。

 優しさ。
 温かさ。
 そして、言いようのない懐かしさ―――――

 きっと、俺は知っている。
 この男の太刀を、知っている。

「―――――」

 心の奥底では、男の真の名を叫んでいる自分を自覚する。

 見極めろ。
 この男の『正体』を。
 恐れることは無い。
 この男は『仇』に見えていても、絶対に里を襲った張本人ではないのだから。

(ハヤブサ……)

 シュバルツは戦いながら、真っ直ぐに向かってくるハヤブサを見つめる。
 ハヤブサの齢は、もう16前後には達しているだろうか。手足はすらりと伸び、少年の高い声から大人の低い声に変わった。少年の美しさより、青年のたくましさの色が濃くなる。長く伸びた琥珀色の髪が、ふわりと風に揺れる。そして、成長期を迎えたハヤブサの容姿は、今まさに美しい盛りであった。

『仇』と恨んでいる人間から『剣』を教わる―――――自分はハヤブサに、どれ程の怒りと恨みと、苦痛を与えてしまっているのだろう。それなのにハヤブサは、その修業についてくる。彼の懐の深さと精神力の強さには、シュバルツもただただ舌を巻くばかりだ。

 怒りや恨み、そして、哀しみに充ちあふれ、雑念だらけだった彼の太刀筋も、今はそれらが影をひそめ、代わりに真っ直ぐで迷いなく、力強い太刀筋が、表に出てくるようになる。
 シュバルツにとっては、ある意味懐かしくもある太刀―――――きっと、ハヤブサが『龍の忍者』としての資質を取り戻すのも、あと少しだ。
 彼が『龍の忍者』として総てを取り戻したなら―――――自分はもう、その役目を終えていい。ハヤブサを導く、『師』としての役割も。『仇』として恨まれることも。

 ハヤブサ……。
 ハヤブサ、お前は
『龍の忍者』として総てを取り戻した時、どうするのだろう。
 やはり、『仇』としての私を、討ちたいと願うのだろうか?

「……………」

 それでも良いか、と、シュバルツは思った。
 神をも滅殺する力を持つ龍剣と龍の忍者。その力は、『悪魔の細胞』と呼ばれた『DG細胞』をも滅殺出来る。それ故にハヤブサは、『DG細胞』で構成されている自分の身体を破壊する事が出来る、数少ない人間の1人だった。
 ここはハヤブサの心の中。そして、自分も精神体の存在であるとはいえ、本気を出した龍の忍者に龍剣で斬られてしまえば、自分もただでは済まないだろう。下手をしたら、精神体も現実世界の肉体も、死を迎えてしまう可能性が大いにある。

 だがここで葬られるのなら―――――酷く幸せなことだと、シュバルツは思った。

 ハヤブサの心の中で死ねるのなら、文字通り、彼と一つになれる。彼の中に自分は溶け込み、彼の一部になる事が出来るのだから。
 それは、抗いがたい甘やかさを伴って、シュバルツを誘惑していた。
 彼の中で死にたいと、願うようになっていた。

 そして、そんな彼の心の動きを、『邪神・ラクシャサ』はほくそ笑みながら見ていた。

 ――――イイゾ……後少シダ……。

 漆黒の闇の中、ラクシャサは残忍さを滲ませながら嗤う。

 龍の忍者が最愛の人をその手で殺す。その瞬間に、この『怨の術』は完成を迎える。
 自分の犯した過ちに対して彼の放つ絶望、憎悪、恨みが―――――この身が龍の忍者の身体を乗っ取り、現世に完全復活を果たすための、大いなるエネルギーになる事だろう。

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