農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 63

<<   作成日時 : 2015/12/09 13:49   >>

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 目の前で仁王が苦し気に呻いている。
 震える切っ先がハヤブサの方に向こうとするのを、自身で何度も押しとどめていた。
(仁王に、ハヤブサを討たせてはだめだ)
 仁王の願いは、ハヤブサを守ること。
 龍の忍者となったハヤブサに、再び龍剣を取ってもらうこと。
 そのために、今までハヤブサを見守ってきたのだ。
 それなのに、私の代わりに敵からの攻撃を、その身に受けてしまって――――

 それを、邪悪な力に捻じ曲げられて、自らの手で踏みにじるような真似など、絶対にさせてはならないと思った。

 何とかしたい。
 できうるならば、仁王も助けたい。
 だがそのために、自分が出来ることは何だ。

 その手段を考えたいのに、痛みと熱が邪魔をしてくる。
 シュバルツは内心舌打ちをしていた。
 いつもならば、頼みもしないのに勝手に治してくるくせに。
 どうしてこう肝心な時に、治ろうとしないのだろうかこの身体は―――――!

(………ルツ! ……シュバルツ……!)

 ――――キョウジ!?

 微かだが、シュバルツの耳がキョウジの声を捉えていた。こちらの身を案じるように、懸命に叫び続けるキョウジの声を――――

 そうだ。死ねない。
 死ぬわけにはいかない。
 待っていてくれる人がいる。
 帰らなければ、哀しませてしまう人がいるのだから――――

(キョウジ……! 案ずるな……。必ず帰るから――――)

 約束したのだ。
 自分は
 キョウジと

 それを、違(たが)えるわけにはいかない。

 かすかに聞こえるキョウジの声を支えとするように、シュバルツは剣を上げ続けていた。


「シュバルツ!! シュバルツ!!」
 キョウジは懸命に、シュバルツに呼びかけ続けていた。それをやめてしまったら、シュバルツに二度と会えなくなる。そんな予感が、彼を突き動かしていた。
「…………!」
 自分が呼びかけるたびに、眉をひそめて、苦しそうに呻くシュバルツ。

 きっと、聞こえている。
 私の声が、きっと彼には聞こえているんだ。
 治してあげたい。
 すぐにでも。
 しかし―――――

「……………っ!」

 キョウジは歯を食いしばりながら床に転がる工具箱を見つめる。距離にしてわずかなのに、それが、恐ろしく遠くに感じられた。

 もちろん、前面で戦っている東方不敗やアルゴやサイ・サイシーも、今の事態がわかっている。皆が皆あの工具箱を取りに行きたいと願っているが、キョウジや眠るハヤブサたちへの身体に対するモンスターたちの攻撃が凄まじく、なかなかその隙を見出すことができない。
 だが、いつまでもこのままで良いわけがないのもまた事実。少しモンスターたちの攻撃が緩んだ瞬間、サイ・サイシーは決意を固めた。

「………おいらが行くよ」

「サイ・サイシー!?」
「マスターアジア! アルゴ! おいらには構わないで! 兄ちゃんたちを守ることだけに集中してくれ!」
 そういうや否や、サイ・サイシーの小さな身体が、あっという間にモンスターの群れの中に突っ込んでいく。
「サイ・サイシー!!」
「アルゴ!! 気を抜くでない!! 横ががら空きになるぞ!!」
「――――!!」
 そう。サイ・サイシーが退いた分、二人にかかってくる守備的負担は増える。東方不敗とアルゴは、それをカバーするかのように動き回らなくてはならなくなった。
「へっ!! あ〜らよっと!!」
 モンスターたちの間に突っ込んでいったサイ・サイシーは、その小さな体を生かしながら、ちょこまかと素早く動き回り、モンスターたちの攻撃を器用に躱していく。何体かのモンスターを殴ったり蹴倒したりしながら、サイ・サイシーは工具箱のところまで、何とかたどり着いた。

「キョウジの兄(あん)ちゃん!!」

「――――!」

 振り向くキョウジの視界に、工具箱を高々と掲げるサイ・サイシーの姿が。

「受け取って!!」

 ポン、と、高々と放り投げられる工具箱。それと同時に、サイ・サイシーの小さな姿がモンスターたちの中に飲み込まれていった。
「サイ・サイシーッ!!」
「キョウジよ!! 工具箱から目を離すでない!!」
 東方不敗の怒鳴り声に、キョウジもはっと我に返る。キョウジが見上げると、星空の下、月明かりに照らされた工具箱が、放物線の最高点に達して、ゆっくりとこちらに向かって降りてきている。
 そして、それをモンスターたちが手をこまねいてみている訳はなかった。その工具箱を叩き壊そう、奪い取ろうと、ありとあらゆる攻撃を仕掛けてくる。
「ぬううううっ!!」
 それを東方不敗が白い布一本で対応し、一蹴していた。その近くで、アルゴが四方八方から襲い掛かってくるモンスターたちに、獅子奮迅、八面六臂の働きで対応している。
「――――ッ!」
 キョウジもまた、モンスターの飛び道具にかすり傷を負った。だが、工具箱に向かって手を伸ばすことを、彼は決してやめたりはしなかった。

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