農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
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zoom RSS 龍と剣と、その拳と 90

<<   作成日時 : 2016/02/02 13:00   >>

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「分かった……。俺が、シュバルツと自分の分の結界を張ろう」

「ハヤブサ!?」
「…………!」
 ハヤブサの言葉に、シュバルツとドモンは息をのむ。
「それは、ありがたい話だが――――」
 ハヤブサの申し出をすぐに受けようとするドモンに対して、シュバルツは首を横に振っていた。
「だめだ! ハヤブサ、お前は重傷を負っているんだ! 今お前が無理をしてそんなことをすれば、お前の身体が――――!」
「じゃあ、生き延びるために、お前はどう行動をとるんだ? お前がここで犠牲になろうとすれば、そこにいる弟も、必然的に巻き込まれようとするぞ」
「――――!」
 シュバルツの言葉を遮るように出てきたハヤブサの言葉に、彼は絶句してしまう。
「あ…………!」
 呆然と、弟の方に視線を走らせると、懸命に縋るようにこちらを見つめている、ドモンと視線が合った。
「そうだよ、兄さん……! 俺は、いやだ……!」
 そう言いながらドモンは、シュバルツの手をぎゅっと握ってくる。

「兄さんだけを犠牲にして助かるのは、俺はもう絶対に嫌だっ!!」

「ドモン……」
「それにシュバルツ。お前は絶対に帰らなければならない理由があるはずだ」
「理由?」
 小首をかしげるシュバルツに、ハヤブサは頷く。

「そうだ……! キョウジのために――――」

「……………!」

「キョウジが産み出したモノは、決して邪悪な物ではない、ということを証明するために」

「―――――!」

「お前は、それこそキョウジの一生涯を通して、それを彼に証明し続けていく義務があるのではないのか!? シュバルツ!!」

「あ…………!」
 このハヤブサの言葉は、本当に胸に刺さった。

 でも、そうなのだ。
 自分が生まれ落ちたのは、確かにキョウジの罪と涙の果て。
 自分を構成しているモノは、キョウジが殺してしまった人間の遺体と、暴走したDG細胞。
 だが――――そこにあったキョウジの『心』は、とても綺麗な物だったはずだ。

 そうだ。帰らなければ。
 自分の存在は『罪』だけではないと、キョウジに伝え続けるために。
 彼の元に、帰らなければ――――!

 シュバルツの瞳に、俄然強い光が宿り始める。それを見たハヤブサは、やれやれと小さく微笑んだ。
「話は決まったな……」
 そんなハヤブサに、シュバルツは申し訳なさそうな瞳を向けた。
「すまない、ハヤブサ……。私が、自分で結界を張ることさえできれば――――」
 そう。
 シュバルツは『気』を使う精神的な技の発動は、全くと言っていいほど出来なかった。この現象には、生みの親であるキョウジも首をひねるしかない。何せその技の極意を知っていたとしても、それを体現することができないのだから。
 つまるところ、機械仕掛けの身体と普通の人間の、決定的な違いがここだということなのだろうか。
 苦虫を噛み潰したような顔をするシュバルツに、ハヤブサは優しく微笑みかける。
「気にするな……。俺も、自分が生き延びる確率が高い方を、選んでいるに過ぎないのだから………」
「ハヤブサ………」
「その代わり――――」
 ハヤブサはシュバルツの肩に、ポン、と手を置く。
「俺は正直、結界を張ることでもう手一杯になる……。だからシュバルツ、お前が、俺の身体を運んでくれるか?」
「分かった。それは、任せてくれ」
 シュバルツが笑みを見せてくれたのを見て、ハヤブサもまた、安堵の息を吐く。

 そう。生き延びるのなら、皆で――――
 それは、3人の間で一致した気持ちであった。

「話が決まったのなら、行こう。早くしないと、光を見失ってしまう」
 ドモンの言葉に、皆が頷いた。

「では……やるぞ」
 ハヤブサはふーっと大きく息を吐くと、静かに印を結びだした。

「叭――――――っ!!」

 真言を唱え、『気』を入れる。シュバルツとハヤブサの周りを、ハヤブサの結界が覆った。それを確認してから、ドモンが結界を一人分の大きさにまで縮める。
「……………!」
 外の時空の嵐の衝撃が、もろにハヤブサにかかってくる。それ故に、彼の口から小さな呻き声が漏れた。

「大丈夫か?」

 シュバルツが心配そうにのぞき込んでくる。平気だ、と、頷いた。このヒトを守り通さなければならないのに、痛いとかしんどいとか、言っている場合ではないと思った。
 ただ、結界を張ることだけに集中する。
 雑念は捨てた。愛おしいヒトに、これ以上余計な心配をかけないように。
「……………」
 時空の嵐を突き破るように、ドモンが進んでいく姿が見える。その後を追うように、シュバルツが自分を抱きかかえながら進んでいた。
「―――――ッ!」
 進めば進むほどに、抵抗が激しくなってくる時空の嵐。ハヤブサはそれを、歯を食いしばりながら耐えていた。
 時折、シュバルツが自分を抱きかかえている手に力を入れているのが分かった。
 自分の身を、案じてくれているのだと悟る。……無上の幸せを感じた。
(ああ、このままここで死んでもいいな)
 ともすれば、霞みそうになる意識の中で、朦朧とそんなことを思う。だがそのたびに、ハヤブサは頭を振った。

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