農家の嫁の日記

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当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS マリオネット狂想曲 16

<<   作成日時 : 2016/05/13 16:40   >>

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「………もう少し、殺気を隠せ。でないと、すぐに見つかるぞ」
「えっ?」
 驚いたキョウジが東方不敗の方に振り返ると同時に、黒い影が音もなく床に降り立ち、その姿を現す。
「……………」
「ハヤブサ……!」
 龍の忍者の殺気だった眼差しに、キョウジは少し息を呑んだ。
「……その殺気、まるで抜身の刀身の様じゃな……。だが惜しい。わしの不意を突くつもりならば、もう少しうまく鞘に収めねばならぬ。お主――――わしがシュバルツに手を伸ばせば、斬るつもりでおったな?」
 東方不敗の言葉に、龍の忍者はピクリと眉を動かす。それを見た東方不敗はフフフ、と笑った。
「ハヤブサ……。あの………」
 キョウジは恐る恐るハヤブサに声をかける。東方不敗にシュバルツの身体に描かれた『紋様』を見せるためには、シュバルツの肌を彼に見せねばならぬ。その許可を得るために。
 ただ、好きな人の肌を、必要以上に他人に見せるのは、恋人としては面白くないだろう。キョウジがハヤブサを呼ぶことを躊躇ったのは、その1点の理由故だった。できれば、穏便に隠密裏に、事を運びたかったのだが。
「マスターに………あの『紋様』を見せても、いいかな……?」
「……………」
 じっとキョウジを見据えていたハヤブサであるが、やがて、「チッ!」と、小さく舌打ちをした。
「………仕方あるまい。その男の情報には、俺も頼りたいところではあるし――――」
 それを聞いた東方不敗がにやりと笑う。どうやら、交渉成立の様だった。
 3人は改めて、寝台のふちに腰をかけ続けるシュバルツの前に立つ。
「シュバルツには指一本触れるなよ」
「分かっておる」
 ハヤブサの念押しに、東方不敗が答える。それを見てから、キョウジはシュバルツに声をかけた。

「シュバルツ、服を脱いで。上だけでいいから」

「……………」
 シュバルツは機械的に、シュルシュルと衣擦れの音を立てながら服を脱ぐ。やがて、3人の前に、シュバルツの白い肌と、その上に描かれた繊細だがどこか妖しく、そして美しい紋様が、その姿を現した。

「ほう…………」

 東方不敗が感心したような声を上げる。それほどまでに、この紋様は『見事』の一言に尽きたのだ。しばらくそれをじっと見つめていた東方不敗であったが、やがて一つ頷くと、その顔を上げた。

「これは……間違いない。『腐墨(ふぼく)の術』じゃな」

「『腐墨の術』……ですか?」
 問い返すキョウジに、東方不敗が頷く。
「そうじゃ………。室町時代の末期に生きた一人の絵師がその技を得たと伝えられておる。わしも実物を見るまで眉唾物であったがな……。まさか、実在して、それが現在に伝えられておったとは―――」
 ここまで話した東方不敗が、ハヤブサの方を見る。
「して、この『術』をこ奴に施した男はどうした?」
「俺が斬って捨てた」
 ぶっきらぼうに言い放つ龍の忍者に、東方不敗はからからと笑った。
「仕方がないとはいえ、少し惜しいな……。これだけの技を持つ者――――一目、会いたかったのう」
 東方不敗の言葉に、ハヤブサはフン、と、首を背ける。間に挟まれたキョウジは、苦笑するしかなかった。
「シュバルツ、もう服を着ていいよ」
「はい………」
 キョウジの言葉に機械的に答えて、シュバルツは服を着始める。とりあえず、東方不敗に危なげなく『紋様』を見せられたことに、キョウジはほっと胸を撫で下ろしていた。
「マスター」
「うん?」
「『腐墨の術』とは――――いったい、どういう物なんですか?」
 キョウジの問いかけに、東方不敗は口の端を釣り上げた笑みを見せる。
「読んで字の如く、特殊な製法で『腐らせた墨』を使って、人体に描き込み、その対象を操り人形にする技じゃな。その際に行う、操り人形にするための『催眠』のかけ方はいろいろあると伝え聞いて居るが――――」
「特殊な製法の墨、ですか……。どんな方法で作られたものなんですか?」

「聞きたいか?」

 にやりと笑う東方不敗に、ハヤブサは渋い顔をする。
「キョウジ、やめておけ。飯が食えなくなる可能性もある」
「えっ?」
 驚くキョウジを、東方不敗は愉快そうに見つめていた。
「そうじゃな……。確かに、3日3晩くらいは、飯が食えなくなる可能性は、あるな……」
「―――――!!」

「それでも、聞きたいか?」

「え、遠慮しておきます……」
 キョウジが多少引き気味に首を横に振る。それを見た東方不敗も「それがよい」と、頷いていた。
「『術者』は大概、月に一度、『対象者』に向かって術の上書をするものじゃが……亡くなっておるのならば、その心配もいらぬだろうな」
「月に一度………それは、なぜですか?」

「決まっておる。それが『墨』であるからじゃ」

 キョウジの問いに、東方不敗は明確に答える。
「どんなに濃く描き込んでいたとしても、『墨』であるならばいずれ落ちる。故に術者は必要に応じて、何度も紋様を描き込む必要があるのじゃ」
「………と、言うことは、シュバルツに施された『術』は――――」
「まあ、そのうちに消える定めじゃろうな」
 ハヤブサの問いに、東方不敗はあっさりと答える。
「良かった……!」
 ホッと胸を撫で下ろすキョウジに、東方不敗は少し釘を刺した。
「ただし、いつ消えるかは分からぬぞ? 作られた方法も『邪法』なら、『念』も相当込められておる『墨』じゃ。下手をしたら1年や2年、このままでいる可能性もある」
「え………!」
 息を呑むキョウジ。それを聞いたハヤブサは、叫んでいた。

「冗談ではない!!」


「ハヤブサ!?」
「キョウジ! シュバルツを借り受けるぞ!! シュバルツがこのままで良い筈がない!!」
 そう叫ぶや否や、ハヤブサはあっという間にシュバルツを抱え上げて、闇夜の中に消えていった。後には、東方不敗とキョウジだけが、残された。
「やれやれ……。あ奴も相当じゃな………」
 ため息とともに落とされる東方不敗の言葉に、キョウジも苦笑しながらも同意をするしかなかった。

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