農家の嫁の日記

アクセスカウンタ

本の販売を始めました!
ここより本の注文画面に飛べます。
当ブログでも発表している『キョウジ兄さんに捧げる物語』を小説同人誌にしました。手作り感満載ですが、興味ある方はどうぞ〜

災害で亡くなられた方、被災された方に哀悼の意を捧げるとともに、心よりのお見舞いを申し上げます。
がんばれ日本!!

zoom RSS 戦う君に、花束を 16

<<   作成日時 : 2017/01/20 01:32   >>

面白い ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0

「ふう………」
 大后の姿が完全に見えなくなってから、ナディール姫は顔を上げる。
「姫様……!」
 その彼女に向かって、イガールが声をかけていた。
「姫様、大丈夫ですか……? ご不快な思いを………!」
「私は平気よ。大丈夫」
 それに対してナディール姫は、穏やかな笑顔を見せていた。
「それよりも……ごめんなさいね。なんだか、変なことになっちゃって……」
「いえ、私は大丈夫です。これで、大后から姫様を守れるのなら……」
(ああ、やっぱり、そういうことなのか)
 ハヤブサは、なんとなく得心しながら、目の前のお互いにいたわりあう主従を見つめていた。
「しかし、大后も言いすぎです。何もあそこまで言わなくても────」
「イガール、それ以上は言わないで」
 憤るイガールを、ナディール姫が優しくなだめる。それから彼女は、ハヤブサの方に向き直った。
「ハヤブサ様も……ごめんなさいね。変なことに巻き込んでしまって……」
「申し訳ない。大后様は、戦いの類を見るのが大変好きなお方です。姫様から気をそらすために、とっさにああ言ったのですが………」
 引き受けてくださって、ありがとうございます、と、この実直な騎士隊長は頭を下げる。
「気にするな。俺は別に構わない」
 ハヤブサは、腕を組みながら、小さくため息を吐いた。
 もとより、自分に選択権などない。
 やはりこの戦い────ある意味、とんだ茶番劇だ。

「しかし、ハヤブサ殿……あなたと剣を合わせたいと思ったのは、事実です」

 イガールが、穏やかなまなざしをまっすぐ向けてくる。
「大事な姫様の『護衛』をお任せするのです。姫様のためにも、私のためにも、ハヤブサ殿の剣の腕は、ぜひ、知っておきたかったのです」
「そうか。わかった」
 ハヤブサもまた、イガールをまっすぐ見つめ返して、頷いた。
 この戦い────確かに茶番だが、この主従のためにも、まじめに戦わねばならない、と、感じた。

「それでは姫様。私はこれで」

 実直な騎士隊長は、立ち上がって一礼をする。
「では、ハヤブサ殿────後で、『闘技場』で、お会いしましょう」
 そう言いおいて、彼は去っていった。

「イガール………」

 ナディール姫は、しばらくイガールが去っていった方を見つめ続けていたが、やがて、ふっと小さくため息を吐いた。
「ごめんなさい、ハヤブサ様……。本当に………」

「…………! なぜ謝る?」

 謝ってくるナディール姫に、ハヤブサの方がむしろびっくりして、見つめ返してしまった。
「えっ? でも………私のせいで────」

「『お前』は何も悪くないだろう?」

「──────!」

「違うのか?」

「え、えっと………」
 まさか、ハヤブサからそんなふうに言われるとは思っていなかったナディール姫は、ただひたすらに戸惑ってしまう。
「で、でも………私が、お義母様のご機嫌を損ねてしまったから────」
「『お前』が何かをして損ねているわけではないだろう。どっちかといえば、あの女が勝手に、お前に突っかかっているように見えたぞ」
「……………!」
「それに、お前はいちいち俺のことを気にしなくていい」
「えっ?」
 小首をかしげるナディール姫に、ハヤブサはぶっきらぼうに言い放った。
「俺がここにいるのは、ほかの奴らみたいに、お前や王家に対する忠誠心などではない。クライアントに頼まれているから、ここにいるんだ」
「……それは、どういう意味ですか?」
 ハヤブサの言わんとしているところが、いまいち理解できないナディール姫は、小首をかしげる。ハヤブサはそれに向かって、ぴしゃりと言った。

「簡単に言うなら、『金のため』だ」

「─────!」
「俺は、お前が思うほど善人ではないし、お前の抱えている国の事情やお前自身に興味があるわけでもない。おそらく、お前がこちらに気を配るほど、俺はお前のことを、思いやってはいない………」
「ハヤブサ様……!」
 呆然とするナディール姫に、ハヤブサは言い聞かせるように言葉をつづけた。
「だから、お前は俺に気を配る必要はない。俺は、仕事が終われば帰る。そういう存在なのだから」
「………………」
 ナディール姫は、しばしハヤブサの方を無言でじっと見つめていたが、やがて、「分かりました」と、小さく頷いた。
「では、私も着替えます……。部屋までの守護を、お願いします」
「承知した」
 歩き出すナディール姫に続いて、ハヤブサも歩き出していた。

(でもきっと、この人はそんなドライな人ではない)

 歩きながらナディール姫は、ハヤブサに対して感じたことを反芻していた。

 確かに、この人は強かった。
 その剣は苛烈で、激しかった。

 だけどこの人は、馬鹿にしなかったではないか。見下さなかったではないか。
 力は及ばないのに、懸命に私を守ろうとした、トマスとモガールのことを。
 それどころか、守ってくれていたではないか。私たち3人のことを────

 きっと、違う。
『金だけが大事だ』という人なら、おそらくこんな戦い方はしない。
 報奨を得る条件である私を守ることだけに専念して────もっと早い段階で、トマスとモガールのことは見捨てていたはずだ。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
 いつも愛読していただいてありがとうございます(^^)。
また、気持ち玉へのクリックもありがとうございます! 
ものすごくものすごく励みになります。
アンケート実施しています(*^^*)ご協力お願いいたしますm(__)m
 当方のブログの内容とあまり関係の無いTBは、削除させていただきます。
 悪しからず、ご了承ください。

アンケート実施中

戦う君に、花束を 16 農家の嫁の日記/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる