農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 26

<<   作成日時 : 2017/01/28 23:12   >>

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(シュバルツ……)
 脳裏に、愛おしいヒトの、優しい笑顔が浮かぶ。
(ハヤブサ……)
 木漏れ日の中、優しく佇んでいる、大切なヒト。
 会いたい、と、願ってしまった、その刹那。
「う…………!」
 背中と腕の痛みを、身体が思い出してしまう。ハヤブサは低く呻いて、壁にもたれかかってしまった。
「ハヤブサ様……!」
 ナディール姫が、弾かれたように走り寄ってくる。
「大丈夫ですか!? 怪我を───!」
「平気だ……。すぐ、治る………」
「大丈夫なわけないじゃないですか! 血がしたたり落ちているのに!!」
「……………!」
 姫に指摘されて、ハヤブサは初めて、自分の足元に散らばっている血痕に気づく。

「傷の手当てをしましょう!」

「……あとでするよ」

 姫の提案を、ハヤブサはうっとうしそうに却下する。だが、姫も引き下がらなかった。
「だめです!! 今すぐしましょう!!」
「落ち着いたら、自分でする。大丈夫だ」
 頑なに拒絶しようとするハヤブサに、姫は大声を上げていた。

「困ります!! 貴方は私の『護衛』なんです!!」

「…………!」

「『護衛』ならば─────貴方の体調が万全じゃないと、私が困ります!! いざというとき、身体が動かなかったらどうするんですか!?」
「姫…………!」
「治療しましょう! 今すぐに!!」
「しかし………」
 なおも、怪我の治療をためらうハヤブサ。ナディール姫は、そんな彼の態度を少し不思議委に思ったが、すぐにその原因に思い当たっていた。
(きっと……この人は、周りは敵だらけだと、思っているんだわ……)

 だから、安心して、怪我の治療をすることもできない。
 だがその気持ちを、彼女は痛いほど理解していた。
 現に自分も今─────
 城の人間の誰が敵で、誰が味方か
 全然区別のできない、気の休まらない状況に、置かれているから─────

「わかりました。信頼できる『医師』が、必要なのですね……」

「えっ?」

 唐突に言われた姫の言葉を、一瞬理解できずに、ハヤブサは目をしばたたかせる。すると姫は、一人でうん、と、大きく頷いていた。
「では、ハヤブサ様! 参りましょう!」
「えっ?」
「この国で、私が一番信頼できる医師のもとへ、つれて参ります!」
「い、いや、治療は自分で───」
「行きますよ! ハヤブサ様! ついてきてください!」
「お、おい!?」
 ハヤブサが止める間もなく、ナディール姫が走り出す。ハヤブサも、あわてて後を追いかける羽目になった。

 コロッセオから出る道すがら、カライ内大臣に行きあたる。
「姫様。どちらへ?」
 渋い顔をして問いかけてくる内大臣に、ナディール姫は元気よく答えた。
「少し、街まで行ってきます!」
「そんな恰好でですか!?」
 ドレス姿の姫に、あきれたように物言いをつける。しかし。
「着替えている暇ないの!」
 ナディール姫は、格好なんか気にしてられない、と、言わんばかりに叫び返していた。
「事は緊急なの! 夕刻の執務までには帰るから───!」
「お一人で行かれるのですか? 供の者は?」

「私には、最強の護衛がついてるから、大丈夫!」

「…………!」
 あんぐりと口を開ける内大臣の横を、ハヤブサが軽く会釈をしながら通り抜けていく。それを見たカライ内大臣は、やれやれ、と、ため息を吐いた。

「決済を待つ書類がたまっておるのです。早めに戻られますように!」

 後ろから追いかけてくる、カライ内大臣の声に、ハヤブサはやれやれと、ため息を吐いていた。


 それから数刻後。
 二人は町はずれの、とある小さな診療所に来ていた。
 やはりというべきか────ドレス姿のナディール姫は、いい意味でも悪い意味でも、とても目立つ。
「刺客の心配はしていないのか?」
 問うハヤブサに、ナディール姫はにっこりと笑みを浮かべる。
「さっき、あれほど派手に襲撃してきたのです。それを全部返り討ちにしているようなものですから、すぐには襲ってきませんよ」
「……………」
 姫の言葉にあきれ返りながらも、ハヤブサはなるほどな、と、納得もしていた。
 確かに、街で襲ってきた刺客たちは、自分がことごとく退けている。それに対する対策が立たないうちは、よほどの馬鹿でない限り、こちらに近づいては来ないだろう。
 一方、診療所の人たちは、単純にナディール姫の訪問を喜んでいた。診察目的ではない近所の人々までもが顔を出し、診療所は、ちょっとした『集会所』の様相を呈してきていた。
「お姫様! 久しぶりだね〜! いつ以来だい?」
「来るってわかっていたら、もっときれいに掃除していたのに!」
「うふふ、ごめんなさいね」
 皆に囲まれて、ナディール姫も楽しそうに笑っている。
「時間がなかなか取れなくて……でも、みんなことを忘れたことはないわ」

「『来れない』ってことは、『健康だ』ってことなんだろう? いいことじゃねぇか」

 ハヤブサを治療しながら、老医師がぶっきらぼうに言葉を紡ぐ。
「『病院』なんてもんは、そんな再々、来る場所じゃない」

「もう、お前さんったら! 姫様の顔が見れてうれしいくせに!」
 その横で、彼の連れ合いである看護婦にそう指摘されて、医師はふん、と、鼻を鳴らしていた。

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