農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 3

<<   作成日時 : 2017/01/06 02:54   >>

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「……と、言うわけで、リュウ。この依頼には、俺の国も一枚かませてもらう。戴冠式までナディール姫を守り通してくれたら、成功報酬に我が国の気持ちも上乗せさせてもらおう」

「………! お前が直接の依頼人ではないのか?」
 驚くハヤブサに、アーサーはにやりと笑みを浮かべた。
「正式な依頼人は、ユリノスティ王国の内大臣だ。俺は、その仲介をしているに過ぎないんだよ」
「………………!」

「………その内大臣をしている『カライ』という奴とは、古くからの知り合いでな……。その………そいつが、本当に途方に暮れていたものだから………」

「─────!」
 伏し目がちに言ったアーサーのその言葉で、ハヤブサは彼の本心を察知してしまう。
 今ここで、一番義理人情に突き動かされて行動しているのは、誰あろう、実はアーサーなのだと。

 旧友のために。
 一人で国を支えるために奮闘している姫のために。
 自国がユリノスティ王国を支援するための理由を懸命に考えて、国の連中を説得して────

 こうして今ここに、彼は立っているのだ。
 国の利益が第一だとうそぶきながら、旧友のために、自分ができる限りの手を打とうとしているのが分かった。

(くそっ!)
 ハヤブサは小さく舌打ちをする。

 やられた。
 だから嫌なんだ。
 こいつの依頼を受けるのは。

 どんな難しいミッションであろうとも
 自分は絶対に、断れなくなってしまうから────

「………分かった……」

「リュウ⁉」
 ため息交じりに返事をするハヤブサに、アーサーも顔を上げた。

「お前のその依頼、受けよう」

「そうか……!」
 ハヤブサのその言葉に、アーサーは心底ほっとしたような表情を浮かべる。ハヤブサもやれやれ、と、もう一度ため息を吐いた。
「では、カライ内大臣には、こちらから連絡を入れておこう。ユリノスティ王国への便も手配しよう。リュウ、何時が都合がいいんだ?」
 一刻も早く現地に向かってほしいのだが、と、つついてくるアーサーを、ハヤブサはまあ待て、と、制した。
「俺にも多少準備の都合がある。明後日の便を頼んでもいいか?」
「それはまあ、お安い御用だが────」
 そこまで口を開いたアーサーが、その面に少し険しい表情を浮かべた。
「だが、リュウ……気をつけろよ。あの王国に潜む『影』は、簡単ではないような気がする」
「…………?」
 怪訝な表情を浮かべるハヤブサに、アーサーは少しためらいがちに言葉をつづけた。

「実は……あの王国の内情を探るべく間諜を送り込んだのだが────誰一人として、帰ってはこなかった」

「─────!」
「単なる『内紛』というだけでは、片づけられない何某かの事情が起こっているような気がするんだ……。うまくは言えないが………」
「……………」
(そうか……。だから、俺に依頼することを思いついたんだな? この男は……)
 ハヤブサは、またやられた、と、心の中で舌打ちをした。
 やはりというべきか、アーサーはちゃんと相手の力量を見て、その仕事を振ってきている。
 そんな人間がこちらに振ってくる仕事など、どう考えたって簡単な内容で終わるはずの
ものではなかったのだ。

「それに、冗談抜きでナディール姫を狙う連中は、たくさんいるぞ」

 さらにアーサーは、ぼそっと、とんでもなく不吉なことを言ってきた。

「ナディール姫は、一国の王となるには若すぎるが、国民からは大きな信頼を寄せられている。ユリノスティ王国の内紛を願う者、そこを乗っ取ろうとたくらむ連中からしてみれば、これほど厄介で邪魔な存在もないだろうな」

「な────!」

「だから気をつけろよ、リュウ。幸運を祈る!」

 そうしてアーサーは、最敬礼をして、店から出て行った。


「……………」
 ハヤブサは回想を終え、ふっと小さくため息を吐きながら、飛行機のシートにもたれる。
 これから自分が向かうユリノスティ王国。ここが、非常に厄介な事態に巻き込まれているということだけは、はっきりとアーサーの話からは伝わってきた。
 だから自分は、「飛行機の手配は、明後日にしてくれ」とアーサーに頼んでいた。
 戦場に赴くための自身の準備の時間もほしかったし、何よりも、愛おしいヒトと触れ合うための時間も確保したかったからだ。
(シュバルツ……)
 瞳にひどく心配そうな色を浮かべながら、こちらを懸命に見つめてきた愛おしいヒト。
(ああ、十分だな)
 ハヤブサは、その時に感じた幸せな気持ちを反芻する。
 この気持ちを持ち続けている限り自分は、限りなく幸せに生きて、そして、死ぬことができる。ハヤブサは、そう確信していた。

 恐れることは何もない。
 自分はもう────一生涯分の幸せを、この手の内に持っているのだから。

(少しの間だけ、仮眠をとるか)
 ハヤブサはそう決意して、毛布を改めてかぶりなおした。
 ユリノスティ王国に入り、ナディール姫のそばについてしまえば、もう自分は、ゆっくり眠ることも、おそらくできなくなってしまうだろうから。

(シュバルツ………)

 せめて夢の中だけでも、彼のヒトに会いたい。
 ハヤブサはそう願いながら、何時しかまどろみの中に身を置いていた。

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