農家の嫁の日記

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zoom RSS 戦う君に、花束を 30

<<   作成日時 : 2017/02/01 22:54   >>

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(お腹すいたな………)
 書類にハンコを押しながら、ナディール姫のお腹は健康的に空腹を訴えてくる。
(でも、今日は少しましかな……。市場で少し、食べることができたから……)
 きゅるるるる、と、鳴るお腹を宥めながら、彼女は執務を続けていた。

(今日の夕飯は、食べられるかな………)

 大きなため息が一つ、書類の上に零れ落ちていた。


(すっかり遅くなっちゃった………。急がないと………)

 少し暗くなった城の廊下を、ナディール姫はパタパタと走る。
(お義母様とノゾムは………もう、先に夕飯済ませてくれるわよね……)
 そう考えながら走っていると、食堂からちょうど、義母とノゾムが出てくるところと鉢合わせた。
「あ……………!」
 ナディール姫は、あわてて端に寄り、頭を下げて畏まる。
「あら、ナディール、ずいぶん遅かったこと。食事は、先に済ませましたよ」
「はい」
 静かに返事をするナディール姫に向かって、義母は、ふん、と、鼻を鳴らした。
「………まったく、食事の時間も守れないのかしら………! 情けないこと……!」
「……………」
 黙って、彼女は頭を下げ続けている。そんな彼女に向かって、ノゾムが心配そうに、そっと声をかけてきた。

「お義姉様…………」

「大丈夫よ」

 ナディール姫は、ニコリと微笑みかける。
「ノゾム、行きますよ」
 大后に声をかけられて、少年は「はい」と、返事をする。去っていく親子の姿を、姫は黙って見送っていた。

 食事をする部屋に入り、席に着く。テーブルの上には、スープとサラダが置いてあった。
「本日の前菜でございます」
 給仕が、グラスに恭しく飲み物を注ぐ。姫はそれを食べようとして────

「………………!」

 唐突に、スプーンをテーブルの上に置いた。

「姫様?」
 怪訝そうな顔をする給仕に、ナディール姫はニコリと微笑んだ。
「今日の食事は、もう結構です。下げさせてください」
「え…………」
「私は明日も早いので、もう休みます。ご苦労様でした」
 そう言って、彼女はドレスを翻して、すたすたと歩いていく。後には呆然と佇む給仕と、湯気の上がったスープが、テーブルの上に残されていた。


「おい」

 これにはハヤブサもかなり驚いて、その真意を確かめるべく。前を歩く彼女に声をかけていた。すると。

「─────!」

 振り向いた瞬間、その場から距離を開けるように飛びのかれ、姫に身構えられたから、ハヤブサはさらに驚いてしまう。
「どうした?」
 多少、眉を顰めながら声をかけると、姫も、はっとなって我に返っていた。
「ご、ごめんなさい。ハヤブサ様………!」
「いや、いい。警戒することは悪いことではない。気にするな」
「は、はい………」
 そう返事したものの、下を向いてしまうナディール姫。その様子が気になったハヤブサは、再び問いかけていた。
「それにしても、どうした?」
「えっ?」
「お前は、腹が減っていたのではないのか?」

「………………!」

 何故、ハヤブサがそのことに気づいているかというと、耳のいい彼は、執務室でナディール姫の腹の虫が鳴る音を、散々聞かされていたからだ。
(腹が減っているんだな……気の毒に……)
 市場で、幸せそうにホットドックをほおばっていた、姫の顔を思い出す。
 食べることが好きなのは、いいことだとハヤブサは思っている。健康に生きている証拠なのだから。
 その姫が、一口も口をつけずに、食事を断るなど─────これは、どう考えても、おかしすぎると思ったから。

「………………」

 対して、ナディール姫は、しばらく驚いたようにハヤブサの方を見つめていたが、やがて、ふっと、その面に笑みを浮かべた。しかし、その笑みは、いつものような闊達な笑顔ではなく、どことなく、暗い影を背負ったものだった。

「毒が入ったスープを飲んで、自殺しろ、と、言うんですか?」

「な─────!」
 絶句するハヤブサに、ナディール姫はさみしげに笑いかけた。
「残念ながら、私には分かる手段があるの。目の前にある食事が、『毒入り』か、そうでないかを見分けるための手段が…………」
「………………」
「ごめんなさいね。ハヤブサ様………。驚かせてしまって……。でも私はまだ、死んであげる訳にはいかないから………」
(そうか……! そういうことか………!)
 ハヤブサはようやく得心する。
 ナディール姫が、何故『姫』という立場にありながら、空腹感に喘いでいたのか。医者に「瘦せたのか?」と、言われるほどに────

 それはそうだ。
 食事を安心して、満足に食べることもできなければ、誰だって、いやでも痩せていってしまう。

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